第10話 おまけ:私の幸せな結婚
注! アニメ化もされた某作品とは全く関係ありません。
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私たちの愛の結晶こと
はじまりは偶然でした。
高校一年から二年に上がる春休み。私はアメリカンショートヘアーのララちゃんを連れて、近所の公園にお散歩に行きました。
以前から、休みの日にはそうしていたのですが、その頃の私には悩みがありました。
私のパパとママは、コンビニエンスストアを経営しています。
元々お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがやっていて、その頃はまだ2店舗だったのを、パパとママが5店舗にまで拡大し、会社法人も立ち上げたのです。
私の自慢の両親です。
でも、一つだけ私にとってはあまり嬉しくないことがありました。
それは、店長の「
佐久間さんは二五歳。大学の頃からうちでバイトをしていて、そのまま正社員採用になった人です。
真面目な働き者で、人柄も決して悪くないことは承知しているのですが、大柄で毛深く、まさに熊そのものみたいな風貌で――私は心の中で、「
それなのに、熊五郎さんは私に好意を
佐久間さんが会社にとって大切な人物であることは承知していたので、私も出来る限り頑張って愛想よく振舞っていたのですが、それが、男性恐怖症気味な私が熊五郎さんにだけは懐いている、などという変な誤解を生んでしまったのでしょう。
このままでは、高校を卒業したら熊五郎さんと結婚させられてしまうのではないか――。
かといって、他の男の人とお付き合いするというのも、そう簡単なことではありません。
私は熊五郎さんに限らず男の人全般が苦手で、中学の時も高校に入ってからも、何人もの男の子にお付き合いを申し込まれはしたのですが、そういう押しの強い男の子に対しては、どうしても恐怖心が先に立ってしまうのです。
その日も、何か良い解決策はないだろうかと頭を悩ませながら散歩していた私は、知らない
そんな時に声をかけてくれたのが、クラスメイトの
佳宏君は、木に登ってララちゃんを助けてくれました。
彼は、クラスでも全然目立たない――はっきり言って、存在感が全然無い人で、正直私もそれまであまりよく知らなかったのですが、それは言葉を返せば、男の人の怖さをあまり感じさせないタイプだということです。
あ、この人ならいけるかも。私は直感的にそう思いました。
とは言え、私の方からお誘いするのははしたないかな、と逡巡していたら、彼は家まで送ろうと申し出てくれました。
先ほどから私の胸をちらちら見ていますし、どうやら好意を持たれているようです。
別れ際、私は勇気を振り絞って、連絡先の交換を申し出ました。
やっぱり、彼は私のことが好きみたいです。よかった。
その夜、さっそく彼に電話すると、幼馴染の女の人を他の男の人に寝取られたという話を聞かされました。
佳宏君には申し訳ないけれど、これはチャンスです。
私はさらに勇気を振り絞って、その女の人の代わりになれないかと伝えました。
佳宏君は、大喜びでお付き合いを了承してくれました。これで一安心。
佳宏君とはその後おうちデートを重ね、少しずつ恐怖心を克服していきました。
やっぱり、彼に対しても全く怖くないというわけではありませんから。
そして新学期が始まり、幸いなことに彼と同じクラスになれました。
でも、そこには佳宏君の幼馴染もいたのです。
佳宏君に近付いてきた彼女を間近で見ると、なるほど美人です。
私が学年一だなんてことを言われていることは知っていますが、そこは好みの問題なのではないでしょうか。
実際、佳宏君も彼女のことが好きだったのですし。
佳宏君は、鈴木さんを追い払ってくれました。
でも、油断はできません。佳宏君を裏切って他の男の人と寝るような女性です。もう一度その男の子を裏切って、佳宏君を誘惑して来ないと、どうして断言できるでしょう。
その日、私は佳宏君を誘惑しました。私史上勇気最大マックスです。
幸いなことに、彼は私に夢中になってくれました。
避妊のことを全く考えていないのには驚かされましたが。
この人、もしかして馬鹿なのでしょうか?
いえ、いっそその方がいいかもしれません。高校卒業までの間に、何があるかわかりませんからね。
一応安全日だったその日以降も、私たちは何度も何度も体を重ねました。
佳宏君もやっぱり男の人なのだ、ということを実感させられましたが、熊さんに蹂躙されることを思えば、十分許容範囲内です。
私に欲望をぶつけてくる彼を受けとめるのは、今にして思うと、赤ちゃんにお乳をあげている時の気持ちに近いでしょうか。
佳宏君も、私のおっぱいが大好きなようですし。
そんなある日、また鈴木さんが佳宏君に近付いてきました。
あまり上手に焼けてはいないクッキーを差し出し、佳宏君とよりを戻したいという申し出です。
冗談ではありません。
幸い、佳宏君は彼女の誘いに乗るつもりはないようです。そんな彼に勇気を貰い、私も彼女に言いました。あなたになんか用はないので向こうへ行ってくださいと。
鈴木さんは顔を真っ赤にして退散していきました。こういうのを、「ざまぁ見ろ」というのでしょうか。
次の休み時間、今度はいかにもチャラそうな見た目の男の子が近付いてきました。
毛むくじゃらではないものの、これまた私が最も苦手なタイプです。
それに、今他の男の子の接近を許し、佳宏君に疑われてはたまりません。
「は、話しかけないでください! 妊娠してしまいます!」
何だか変なことを言ってしまったような気もしますが、安心してください佳宏君。私のおなかの中にいるのは、間違いなくあなたとの愛の結晶ですよ。
幸い、それ以降私たちに近付いてくる人たちは誰もおらず、そして私はめでたく佳宏君の子を身籠りました。
パパとママに打ち明けると、ものすごく怒られました。
ごめんなさい。でも、やっぱり佐久間さんは無理なんです。それに、佳宏君が私と結婚して跡継ぎになってくれれば、最近腰が痛いとぼやいているパパの負担も減らせるでしょうし。
佳宏君のご両親も交え、何度も何度も話し合い、しまいにパパとママも折れてくれました。
佳宏君は、今日もパパのお店で元気に働いています。
「
佳音ちゃんにそう話しかけると、嬉しそうにきゃっきゃと笑ってくれました。
佳宏君、愛しています。
――Fin.
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ラブコメかと思った?
舞音ちゃんマジMINEちゃん。
佐久間は舞音に好意を抱いてはいましたが、年齢差もあることから、本気で口説こうというようなつもりはなく、舞音の両親も、二人がくっついたらいいなあと思う程度の淡い願望に過ぎませんでした。
少なくとも、高校を卒業するなりいきなり結婚させようだなんて考えは皆無です。
全ては舞音の思い込みです(笑)。
幼馴染をいかにもチャラそうな男にかっさらわれた陰キャボッチ、ひょんなことから学年一の美少女とラブラブになる。やればできるとわかって後悔してももう遅い。 平井敦史 @Hirai_Atsushi
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