どこまでも続く道は

色音

短編

どこまでもこの道は続く。

きっと終わりなどないのだろう。

【四】

突然この世界で僕の目の前に現れて何故かその道を僕は歩き始める。

今まで繋げてきた点と線。

今まで歩いてきた道を放棄して、目の前に忽然と現れた新たな道を歩き始める。

その道をどのくらい歩いたかは分からないが不思議とお腹が空く事はなく睡魔に襲われ急激に眠くなってしまうといったこともない。

僕は、黙って歩き続ける。

彼は何を考え歩いているのだろう。

どのくらい時間が経ったのか私にも分からないし勿論彼に分かることもない。

しかし、私にはこの先にあるものを知っている。いつまで歩けばいいのかは分からない。それこそ、彼自身が決めるものだろう。

彼がその道を踏み外したり飛び降りたり別の道を見つけてそちらへ行ったりすればそこでこの道は終わり私の役目も終わるだろう。

【六】

何時間何ヶ月経ったか分からないがまだ僕は歩いている。

意味も訳も何も知らず分からずただ歩いていると今まで何もなかった道に突如として高速道路の降りる道のような横に逸れた道が現れた。なにやらそちらからはお祭り騒ぎしているような音がする。

元の世界に戻れるのだろうか。

でも、なんとなく。本当になんとなく。

僕には、得体の知れないそのお祭り騒ぎは泣いているようにも聞こえた。

だからと言ってはなんだが…横に逸れずに真っ直ぐ歩いた。

またまた歩くと今度は多くの泣き声が横にそれた道から聞こえてくる。何か助けを求めているような言葉だがどれも薄っぺらい言葉のようで自分を見て何か嘆いているようなそんな言葉にも聞こえた。

だからと言ってはなんだが…僕はまたまた逸れずに真っ直ぐ歩いた。

彼は曲がりませんでした。

訳もわからない道を歩くことを選びました。

何故でしょうか。

何が彼をそこまで動かし歩き続けるのでしょうか。そして、その果てに何を求めているのでしょうか。そんなことを考えている私には彼のようにこの終わりなき道を歩く事はできません。

【時】

何かを求めている。そんな訳ではなく。

いつか誰かに話して大言壮語と言われたことをそんな事ないと否定するために歩いているのだろう。

何気にしようもない事で僕は歩いている。

でも、心の支えというものを自分の中に持っていてそれは話す事はないし墓に持っていくつもり…そもそも墓なんてないだろう。

ここには道しかないのだから。

しばらく歩いて道の傍に一本の百合の花が咲いている。あぁ僕は死んだのだろうか。一本の白百合には清潔さのような意味もある。まぁ僕には縁遠い花言葉ではあるが。

しかし、なぜだろうか。その一輪の花はとても綺麗には見えなかった。いつかまた白百合もこんな風に素朴さを感じさせる哀愁漂う花だったろうか…。

僕は、その花をただ見下ろしているだけで愛でもせず水もやらず触れずにただただ見下していて自分の体内時計が数刻刻み込み再び僕は歩き始めた。それ以降僕の前に白百合はたったの一度も現れる事はなかった。

彼には逸れた道も花も必要なかったわけではないだろう。一度立ち止まって見て聞いているのだから。では、何が彼を突き動かすのだろう。私は知りたくなった。一体何が彼を一見無意味そうに見えるただ道を歩くということを続けさせるのだろうか。それは,私には,一生涯,わかる事はないだろう。

【中】

いつまでも歩いていると不思議とお腹が空いてきて何にもないのに水が頬をつたって溢れて落ちて…道に色がついた。

いつまでも歩き続けた道を初めて振り返ると一本道だったものは細い道や太い道。少しだけ曲がりくねった道など多くの道が僕の足元まで繋がっていて、僕が一歩。そしてまた一歩と踏み出すたび後ろを向くと道は増え無数の色に光っていたり鈍ついていたり。それを見て僕は本当に訳がわからないんだけど涙が溢れて…溢れた涙を溢してお構いなしにまた力強く歩いた。

どこまで続くか分からない。

それでも彼は昔も今もこれからも永遠と歩き続けるでしょう。

【四六時中】

何が彼を支えているのか。

何が彼を突き動かしているのか。

それは私……失礼。

私たちにはわかりましません。

それでも、"彼"は歩きます。

周りを見て…またまた歩いて。

たまに下や上を見たり聞いたり。

そしてまたまた歩くのです。

どこまで行っても歩きます。

では、私もそろそろ元通り。

「おや?おかえり?久しぶりだね」

「あぁただいま」

「また、書くの?」

「なんだか描きたくなってきたんだ」

「ふーん」

そう言って彼女は後ろを振り向いた。

彼女の顔は見えないが何か笑っているような気がします。

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