第13話


 上市理可はしぶしぶと、


「はぁ、仕方ないですね。私たちの仮説なんですけど、まあ、そのぉ……、昨夜新宿のラブ・ホで調査していたとき、怪人たちと、盛り併せたカップルたちと話しましてね」

「「やっぱり、アンタたちか、昨夜の犯人は……。てか、盛り併せた、とは?」」


 と、碇賀と賽賀のツッコミが入りつつ、


「それで、どんな話よ?」

「そうよ、はぁくしてよ」

「はぁ、その話の中で出てきたのがですね――、もし、犯人がシン屋根裏の散歩者的なナニカだとすると、その、犯人とされる存在は、私たち人間のようなサイズで想定される者ではなくて……、もしかすると、ネズミかなんかの小動物のように、“小っちゃいナニカ”なんじゃないか、って――」

「「ち、小っちゃいナニカ――?」」


 数人の声が重なり、


「はぁん? 小っちゃいナニカ、だと……?」


 と、中年刑事が顔をしかめる。

 そこへ、今度は綾羅木定祐が入って話す。


「言葉のままだ。最初、私らは犯人を、人間の異能力者か、それともラブホの怪人のように、一定の大きさを持った怪人・怪物だと想定していたのだが……、ラブホの怪人たちが言うには、そんな怪人の見聞はないとのことだ。それから、異能力者の可能性もまだ残っているが、そのような異能力者なら、あのクソどら焼きクソダヌキの妖力で調べたときに引っかかるだろう」


「クソが、二回ついてますやん」

「てか、タヌキじゃなくて、妖狐じゃないの? どんだけ嫌いなの」


 と、碇賀と賽賀がつっこむ。

 気を取り直して、再び上市理可が喋る。


「それで、そう考えると――、犯人が“小っちゃいナニカ”と考えると、都合がいいんじゃないのかって話ですね。犯人として想定してなかったゆえに、クソダヌキの妖力を使った調査にも引っかかりませんし……、それに、小っちゃいナニカだとすると、目立つこともなく、簡単に屋根裏・天井裏に侵入することも可能じゃないんですかね」

「「は、ぁ……?」」


 半信半疑の反応がする中、


「はん! アホ、くさ……! そんな、ネコかネズミが屋根裏に侵入して、ガイシャの口のちょうど真上に穴を開け、爆弾をピンポイントで狙うっていうわけか? アイツらに、そんな器用なことできるかよ! なあ? 群麻、無二屋!」

「「は、はい……」」


 と、中年刑事に言われ、群麻と無二屋が仕方なく相槌する。


「いや、アンタたちの、詰め物に爆弾ってのも、けっこうトンデモだけどな」

「ああ”? 何だと?」

「だって、そうじゃないかね? それに、もし、その詰め物か差し歯に爆弾が入っているとしてもだ、じゃあ? 天井の“穴”は何なん――? って、話にならないか?」

「フン、うるせぇな……。そいつも、郷田を調べているうちに分かるだろうが!」

「ま、まあまあ、お二人さん」


 綾羅木定祐に中年刑事がバチろうとするのを、碇賀が間に入って止める。

 その横から、


「それに、その『シン屋根裏の散歩者は小っちゃいナニカ説』って、ネコやネズミにとらわれず、もっと違うナニカを考えると、わりと可能性としてはあるんじゃないかな? 知らないけど」

「うん! それだよ! 私らが可能性として考えているのは」


 と、賽賀の言葉に、綾羅木定祐が便乗する。


「フン。なら、お前たちで、勝手に調査しとけよ。その、小っちゃいナニカが犯人とかいう、ふざけた説を――。俺たちは、郷田が関与している方向で調べるからな、なあ? 群麻、無二屋!」

「「は、はい……!」」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シン屋根裏の散歩者 石田ヨネ @taco46

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る