跋文 供花

今考えれば、君のことなんてほとんど知らなかったと思います。

誕生日、好きなもの、住んでる家、一番仲がいいのは誰だとか、サッカーを始めたのはいつだとか。

早すぎる、としか言えませんでした。

僕は君がいなくなってからずっと、君の死が僕にどんな影響を与えるか、なんて適当なことを考えていました。達観したふりで、悲しいふりも悲しくないふりもしました。最低だ、って思いました。

僕はたしかに君のことが好きでした。ちょっとワルくてハッピーな生き方が似合う君が羨ましかった。でも、もっと仲良くなろうと欲を出すと躱されてしまいそうな気がしていました。

本当はもっと近い関係になりたかった。君は友達がいっぱいいたから、「きっと僕なんていなくても」と言いながら、君が手を引いてくれるのを待っていました。もう遅いよね。すごく後悔しています。


君の死に、意味なんて持たせないからね。君がいない事実に価値なんて必要ないよ。

でもやっぱり君のニュースを見てから、僕は時折生死について考えるようになりました。寝る前にふと死の淵に転がっているような、そんな感覚になることが増えました。大丈夫、大丈夫と言い聞かせながら、いつか足を踏み外す日が来るのを待ってしまっている自分がいます。

君のせいじゃなくて、僕の薄志弱行なのが悪いんです。

君には会いたいけど、まだここにいられるよう踏ん張ってみます。

僕はそれなりに人に囲まれて、それなりの日々を過ごせています。高校には受かったので安心してほしい。でもやっぱり内申はそこまで良くなかったらしい、って聞いてちょっとだけ笑いました。


そっちは親父さんに会えましたか。

君が亡くなったことを聞かれるたびに、ごめん、と思っています。書いたって昇華するわけじゃないのに書きなぐっています。

自分を客観視できているみたいな顔をして、こんなようじゃ君をネタにしているのと同義です。

君との思い出を忘れたくなくて、君がいる世界に戻りたくて、自分の中に君が生きていることにしました。

落ち込んで落ち込んで、結局救われるところは自分で作ってしまいました。落としどころを自分で決めてしまいました。ごめんね。自分でも笑っちゃうくらい哀れでダサいと思います。

バカじゃん、って笑ってくれるかな。

ゆるしてくれるかな。

怖かったよね。

痛かったよね。

お葬式、いけなくてごめんね。

僕がいないことなんて気にも留めなかっただろうけど、僕は最後に君の顔を見たかった。

まだ、受け止めきれていないのが現状です。

脚色ばっかりで笑えるかもしれないけど、「僕」が「蓮人」に救われていたのが事実だったんだ、とわかってくれたら嬉しいです。

この先も多分、僕は君が亡くなったことを思い出しては、どうにか糧にしようともがくと思います。

見ててとは言いません。守ってくれとも、もう一度会えたらとも望みません。

勝手な僕をどうか許してほしいです。


長々とごめんね。

君は綺麗な気持ちに囲まれて往生するべき人だったと、心から思います。

君の人生に指の先ほどでも触れられたこと、誇りに思うよ。

出会ってくれてありがとう。

勝手な思い出を抱えて生きていくこと、許してね。

君のことが大好きでした。本当に憧れでした。

ゆっくり休んで、またあの顔で笑ってください。


ありがとう。

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君に手向けるぼくらの 浪来 ソウ @sou-namikiorz

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