【最終回】シスコン・ブラコンの証

 「それで、好きになれそうな部分はあったんですか?」

喫茶店で向き合って座る状況で、渚は水寺さんに問う。


水寺さんは自称だが、他の人より“隣の芝が青く見える”のを気にするタイプらしい。


渚が俺をキープしようとする気持ちが、逆に水寺さんの興味を引いたようだ。しかし、興味を持つのと好意を抱くのは別問題。


なので、渚が思いきって訊いたのだ。果たして水寺さんはどう答える…?



 「別にないね~」


「えっ?」

ポカンとする渚。


俺も同じ気分だ。水寺さんは本心で話してるように感じる。


「さっき言った通り、荒波君は『ちょっと顔が好みのクラスメート』なんだけど、他に思う事はなかったよ」


意外と辛辣だな…。とはいえ、モテない事は俺が1番わかっている。


「じゃあ、今後お兄ちゃんにちょっかいを出したりしませんね?」


「しないよ。わからない事があったら訊くぐらいで、それ以上の関係は求めないから」


運良く? 俺は水寺さんのタイプではなかったようだ。これにより俺と渚を邪魔するものはなくなったが…。



 「前から気になってたんだけど…」


水寺さんは何を知りたいんだ? 彼女が聴きたい事なんてないと思うが?


「渚ちゃんが荒波君の事を好きなのは十分わかったけど、荒波君は渚ちゃんの事どう思ってるの?」


「もちろん俺も渚の事が好きだよ。兄妹の枠を超えてだが…」


これでほぼシスコンを自白したな。水寺さんはどう思うか?


「私の顔色を窺わなくても、別に誰にも言わないよ。2人が納得してて他の人に迷惑をかけてないから、とやかく言う必要ないよね?」


「そうだな…」

そのあたりはしっかりしてるようだ。


「けど、いつ私みたいな人が出るかわからないよ? 2人の関係をわかりやすく証明できたら楽だと思うけど?」


「わかりやすく…ですか?」


「そう。例えば…、荒波君と渚ちゃんがキスするとか」


俺と渚は何度もHしてるしキスも経験済みだが、他人の前でやるのは厳しいぞ。


「余程の人じゃない限り、キスする関係の2人を引き離そうとしないでしょ。…2人とも、ここでできそう?」


水寺さんは向かい合っている俺と渚の顔を観る。


「あたしはできますけど…」


「渚ちゃんが先に答えちゃったね。ここは荒波君がリードするところじゃないの?」


リードか…。俺に積極性がないから、水寺さんのタイプにならなかったんだろうな。


「…自信はないが、やってみるよ」


「そう」


隣同士で座る俺と渚は向き合い、そしてゆっくりと唇を重ねた。…数秒後にキスを止めて、再度水寺さんと向き合う。


「2人の関係はよくわかったよ。…これで私の用件は終わったから帰るね」


水寺さんは立ち上がろうとするが…。


「水寺さん。ここに呼んでおいてそのまま帰らせるのは悪いから、ドリンクを奢らせてくれないか?」


「別に良いよ、これから薫ちゃんと遊ぶから。それに、悪気はなくても渚ちゃんに迷惑かけちゃったからね。奢られる資格なんてないの」


「そうか…」

なら引き止めなくて良いや。


「荒波君、渚ちゃんを大切にしてあげてね。…バイバイ」


水寺さんは席を立ち、喫茶店を後にした。



 「水寺さんがお兄ちゃんを奪うつもりがなくて安心したよ~」


緊張の糸が解けたのか、渚はホッとした様子を見せる。


今回は結果的に良かったが、積極性のなさは今後の課題になるな。それがになったのは言うまでもない。


積極性を養うなら、普段しない事をしたほうが良いか。だったら…。


「渚。帰ったらHしないか?」

周りに聞かれないよう、小声で誘ってみる。


「え? お兄ちゃんから誘うなんて珍しいじゃん?」


「まぁな。これからは兄として、渚をリードしたいんだ。…大丈夫そうか?」


「もちろん良いよ♡ あたしもお兄ちゃんとお〇ん〇ん君に気持ち良くなってもらうために、いつも以上に頑張るね♡」


「それは楽しみだな」


オレンジジュースを飲み切って会計を済ませた後、俺と渚は喫茶店を出た。



―――

最終回まで読んで頂き、本当にありがとうございました!


“シスコン辞める”というネガティブな行動上、他作品より暗い話になってしまい申し訳ないです。


私はシリアスが苦手なタイプなので、極力明るいというかおバカな話が好きですが、題材に抗うのは難しいですね~w


以上で、ミニあとがきは終わりです。また別の作品でお会いしましょう!

―――

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【完結】シスコンを辞めたいと妹に告げたら、可愛い顔で拒否られました あかせ @red_blanc

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