第10話 2度目の対峙
今日の放課後、俺と渚は喫茶店で再び水寺さんと話す予定だ。その時に水寺さんの本心を知った後、シスコンである事を暴露するつもりでいる。
そうすれば、俺にちょっかい? をかけてこないはずだ。恥ずかしい暴露になるが渚のためだ。背に腹は代えられない…。
そして放課後になった。この間、水寺さんは俺に一言も話しかけてこず、携帯での連絡もしてこなかった。彼女は好口さんと話してるし、一緒に向かう必要はないか。
俺が昨日『渚が水寺さんとまた話したいみたいだけど、いつ空いてる?』と連絡した事で再度の話し合いが実現する訳だが、水寺さんなりに警戒した結果かもな。
俺が渚にいろいろ伝えてるのは、わかってるはずだから。
渚と待ち合わせてる校門に向かうと、彼女は既に待っていた。
「あれ? 水寺さんは一緒じゃないんだね?」
「友達と話してたからな。待つのも考えたが、なるべく早く渚のそばにいたいから置いてきた」
「前のお兄ちゃんに戻ってくれた♡」
渚は嬉しそうに俺の腕にしがみつく。
…いろんな人にジロジロ見られてるな~。彼女は何ともなさそうだし、俺も早く慣れないと。
「じゃあそろそろ、待ち合わせにしてる喫茶店に行こうよ。お兄ちゃん」
「そうだな」
俺達は手を繋ぎながら喫茶店に向かう。
目的の喫茶店に着き、ソファーで向き合える席に座る。そのほうが落ち着いて話せるだろう。
「水寺さん、いつ来るかな?」
さっきと違って、渚の表情が強張っている。緊張してるみたいだな。
「もうそろそろ約束の時間だから来ると思う。先にドリンク注文しとくか?」
「そうする。なんか飲んだほうが落ち着きそう」
渚はオレンジジュースを注文したので俺も便乗した。こういうところでも関係性をアピールできると思ったからだ。
……のんびりオレンジジュースを飲みながら待つ事、約10分。ついに水寺さんが喫茶店に現れた。
彼女は入り口でキョロキョロしていたが、俺達を見つけ次第すぐ向かって来て向かい側に座る。
「お待たせ。…2人ともオレンジジュース飲んでるんだ? 仲良いね」
「……」
渚がムッとした顔をした。
深い意味はないだろうが、挑発に聴こえなくもないか。
「渚ちゃんが私に言いたい事は大体わかるよ。『お兄ちゃんとあまり仲良くしないで』でしょ?」
「…そうです」
「そんな警戒しないでよ、昔の癖が出ちゃっただけだから…。これでも反省してるんだよ?」
「昔の癖?」
それがどう関係するんだ?
「うん。この前、妹がいる事は話したよね?」
「ああ、真由さんだろ。(5話参照)」
「私、他の人より“隣の芝が青く見える”のを気にするタイプなんだよ」
それって、渚の不安が的中したって事か。(6話参照)
「私が興味ない物でも、真由が持ってるとすぐ気になっちゃう。だからあれこれ訊きたくなるんだけど、面倒そうにされてね…」
訊く事が問題じゃなくて、訊き方に問題があるんじゃないか?
「荒波君もそれと一緒。渚ちゃんが教室に来て訊いてくるまで、荒波君は『ちょっと顔が好みのクラスメート』に過ぎなかったんだよ」
「そうなのか…」
「けど渚ちゃんがキープしたがってるのを知って“顔以外で好きになれそうな部分あるかも?”と思ったから、距離を縮めようと思ったの」
「それで、好きになれそうな部分はあったんですか?」
不安そうに訊く渚。
「それはね…」
水寺さんはどう答えるつもりなんだ? 緊張しながら次の言葉を待つ。
―――次回、最終回―――
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