第5話 振り返り……そしてイケメンに絡まれちゃった




 イカれ女教師に洗脳され、戦闘狂陽キャ女子に追われ、眠っていたコミュ力を引っ張り出され、卑屈になりつつもライバル兼友達ができましたとさ。


 夜11時、ベッドで1日を振り返る。うん、ちょっと狂ってる。でも同時に嬉しい。それに目標もできた。


『困っている人がいたら、その人のために何かをする』


 明日が来るのが楽しみ。そろそろ寝ないと……。


 枕元のスマホが震える。鈴音からメールだ。私はリュックの猫チャームをちらりと見て、内容を確認した。


【鈴音:土曜日の午後、遊びに行こうよ!】





*********




 

 土曜日は午前中しか授業がない。なので遊びに行くにはうってつけだ。


 談話室で鈴音を待つ。私服は大丈夫かな。水色のトップスにネイビーのスカートって普通だよね? と思っていたら。


「あ? 池亀何してんだ? デートか?」


 低い声に飛び上がりそうになる。男子寮からガニ股でやってきた男子が、私になんの躊躇もなく話しかけてきた!


 しかも鈴音とよく話してるイケメン! 頭が真っ白!


「レナお待たせ〜! あれ、加賀かがもいるの? 一緒に行く?」


 鈴音が来てくれた! 白ワンピが似合う!


「誰が行くか。いってら」


 よかった、危機は脱出。歩きながら鈴音が囁く。


「レナ、加賀嫌い?」


 加賀……加賀正志かがまさしか。クラスでも目立ってる男子。私は慌てて弁解した。


「いや男子苦手で……リリベルってカフェ行かない?」







 おしゃれカフェにて私はハンバーグ、鈴音はパスタを注文。


「給料入ったし、たくさん食べちゃお!」


 そう、異能バトル科は月10万円もらえるのだ。早速雑談が始まる。


「近接格闘術どう? 昨日負けちゃった」


「私は今のところ全勝! 楽しいよね!」


 戦闘狂は言うことが違う。と思ったら。


「レナって加賀のこと好きなの?」


 突然の恋バナだ。


「そもそも脈ないでしょ。鈴音はどうなの?」


「あたしは彼氏いらないな〜。でもレナの恋愛事情は気になる!」


 語れる思い出がない。ああ、モテないって惨めだな……話を変えちゃおう。


「このカフェ、トレジャーランドとコラボやってんだね。知ってる?」


 壁のポスターを指差した。今1番人気の少年漫画だ。通称トレラン。私もめちゃくちゃハマっている。


「名前はわかるよ! 松岡と国木田!」


 この様子だとあまり知らない様子。他に話題ってあるかな……。


「そうだ、私も必殺技考えたよ。蝶の羽生やして飛ぶんだけど……」


 やっぱりこの話題が一番いいな。私たちはひたすら必殺技の話で盛り上がった。


 これ、成功体験にカウントしてもいいよね?





********





 寮に戻ると、談話室でノイズ先生が他の生徒と談笑していた。私たちに気づいて手を振る。


「2人ともお出かけか?」


「レナ美味しい店知ってるんです!」


「そうか。針ヶ谷ちょっといいか? 池亀は後で来てくれ」


 鈴音と先生は寮の外に出て、5分ほどで鈴音が戻ってきた。


「先生が呼んでるよ。異能訓練場の自習室1だって」


 なるほど、反省会か。私はいつもの部屋へ。先生はホワイトボードを用意して待っていた。


「どうだった?」


「楽しかったです!」


 素直な感想が出てきた。


「では振り返りをしようか。自信を取り戻すという目標だったが、実は私は裏の課題も出していた。当ててみろ」


「スクールカースト上位に入れ、ですか?」


「全然違うな。スクールカーストに囚われない、これが裏の課題だ」


「そっか。カーストを気にしなくなったから、鈴音と仲良くなれたんですよね」


 先生は拍手。


「おめでとう。貴様は本来の姿を取り戻せたな!」





********





 朝は鈴音と一緒に登校し、お昼を食べて……やっと午後のバトル学。 


 異能訓練場、1ーRの大部屋。ノイズ先生は異能師の卵を見回す。


「お疲れ諸君! 月曜日は辛いだろうから気合いを入れるぞ! 1年龍組異能バトルトーナメントだ!」


 先生は教師用のタブレットを操作し、壁にトーナメント表を映し出した。鈴音と私はだいぶ離れている。どちらも順当に勝ち上がらないと戦えない。


 鈴音はピンクのボブヘアを揺らし、星空みたいな笑顔でどついてくる。


「決勝戦で待ってるからね!」


「うん!」


 よし。対戦相手の男子が拳を鳴らしている。絶対に勝つぞ!


 







 結果、私は1回戦で敗退した。


 白い天井、視界がグルグル、手足はダルダル、敗北感。


 毒にやられて動けない。すると天井のライトがピンク色に変わり、だんだん体が楽になる。


 これは回復ライト。光属性の異能を応用したテクノロジー。ペンライト型のもあって、異能師は全員必携が義務付けられてる。異能テックの力ってすげー!


 回復した私は隅っこへ。1人落ち込んでいたら、次の対戦が始まった。鈴音と加賀正志かがまさし


 一昨日遊びに行った時、話しかけてきたあのイケメン。鈴音と並ぶとお似合い。


 私はこの加賀に負けた。ヤツは指先から毒牙を発射できる。撃たれた私はそのままゲームオーバー。


 そんな加賀も、鈴音相手には何もできず敗退。そしてなんと私のところへ来た。


「ちっ、負けたわ。クソが」


「……お、お疲れ」


 緊張と恐怖で気絶しそう。ていうかなんで私のところに? 加賀は鈴音の次のバトルを観賞。炎属性の男子と対決している。


「お前よくアレとやり合えてんな。異能コピーできんだっけ」


「そ、そうだね……」


 緊張して言葉が出てこない。鈴音はもちろん勝利。負けた男子もこっちに来た。


「お疲れ加賀。それと池亀も」


穂村ほむらも負けたか。あいつバケモンだろ」


 ちなみに穂村と呼ばれたこの男子もイケメン。2人の圧倒的華やかさに、私は存在を消すことに努めた。


 そして予想するまでもなく、鈴音が優勝した。




*********


 

 

 今日は月曜、レッスンの日だ。


「失礼します」


 自習室1のドアを開けると、先生がニコニコ待っていた。


「今日は大変だったな」


「……面目ないです」


 期待してくれてるのに。いやどっちかっていうと生贄だけど。


「敗因は思春期らしい可愛い理由だな?」


 この人に隠し事は無理だ。私が頷くと、先生はホワイトボードをひっくり返した。



 【池亀レナの異能研究

 最終目標:クラス全員の異能をコピーする

 中間目標:クラスの半分(8人)と友達になる

 第1目標:自信を取り戻す→クリア!

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 第2目標:異性への苦手意識を克服する

 やること:男子1人に話しかける】



「そしてターゲットは……加賀正志かがまさしだ」








次回予告!


 イカれ女教師と戦闘狂美少女に目をつけられてしまった、哀れなぼっち少女レナ! 


 なんやかんやで自信取り戻したかに思えたが、今度は男子の前で緊張しまくってしまう。


 しかも先生が指定したのは、クラス1のイケメン陽キャ加賀正志だった! 当然嫌がるレナだったが、爆発セミ女に勝てるはずもなく……。

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友達の異能をコピーする  タマイジュン @TamaiJun

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