大きな木と少年のおはなし

かごのぼっち

大きな木と少年のおはなし

少年は学校が嫌いになりました。

それはいじめられるから。

少年は友達が嫌いになりました。

それはいじめてくるから。

少年は家が嫌いになりました。

それは居場所がないから。

少年は家族が嫌いになりました。

それは自分に関心がないから。

少年は人間が嫌いになりました。

それはつまらない生き物だから。

少年は自分が嫌いになりました。

それは自分もつまらない生き物だから。

少年は人生が嫌いになりました。

それは生きていてもつまらないから。


ある日少年は家を出ました。

それは全てが嫌いになったからです。


少年は歩きました。


少年は歩きました。


少年は歩きました。


来る日も来る日も。


少年は歩きました。


どれくらい歩いたのでしょうか。

少年は疲れてしまいました。

少年は疲れて眠ってしまいました。

一本の大きな木の下で、眠ってしまいました。


少年は夢を見ました。

それは少女の夢でした。

少年は話しかけました。

けれど少女は何も話しません。

少年はまた話しかけました。

けれど少女は何も話しません。

少年は悲しくなりました。

けれど少女は立ったままでした。

少年は泣きました。

けれど少女は立ったままでした。

少年は泣き疲れて眠ってしまいました。

けれど少女は立ったままでした。

少女は立ったまま笑っていました。


少年は目を覚ましました。

そこは大きな木の下でした。

少年は大きな木を見ました。

そこにはコブがありました。

少年はコブを見ました。

そこには少女の顔がありました。

少年は不思議に思いました。

少女は笑っていました。

少年は木のコブにふれました。

少女は笑っていました。

少年はドキドキしました。

少女は笑っていました。

少年は少女に口づけました。

少女は笑っていました。

少年は少女に口づけました。

少女は笑っていました。

少年は少女に口づけました。

少女は笑ったまま少年の口づけを受け止めました。


少年は夢を見ました。

それは少女の夢でした。

少年は少女に話しかけました。

けれど少女は何も話しません。

少年は少女に話しかけました。

けれど少女は何も話しません。

少年は少女に話しかけました。

少女は何も話さず、立ったまま笑っていました。


少年はそれでも嬉しかったのでした。


来る日も来る日も。

少年は少女に口づけました。


来る日も来る日も。

少女は笑ったまま少年の口づけを受け止めました。


来る日も来る日も。

少年は少女に話しかけました。


来る日も来る日も。

少女は何も話さず、立ったまま笑っていました。


やがて少年は大人になりました。


やがて夢の中の少女は大人になりました。


やがて大きな木はコブが増えてなだらかな起伏がありました。


大人になっても

少年は少女に口づけをしました。


大人になっても

少女は笑ったまま少年の口づけを受け止めました。


大人になっても

少年は少女に話しかけました。


大人になっても

少女は何も話さず、立ったまま笑っていました。


やがて大きな木の幹に花が咲きました。

花は良い香りがして蜜を含んでいました。


少年は花に触れました。

少女は少し恥ずかしそうに笑っていました。

少年はドキドキしました。

少女は少し恥ずかしそうに笑っていました。

少年は少女に口づけをしました。

少女は少し恥ずかしそうに笑っていました。

少年は花にも口づけをしました。

少女は少し恥ずかしそうに笑っていました。

少年は少女に夢中になりました。

少女は少し恥ずかしそうに笑って少年を受け止めました。


やがて少年は疲れて眠りました。

一本のおおきな木の下で、眠ってしまいました。


少年はもう夢を見ませんでした。

けれど大きな木は何も話さず、笑って立っていました。


やがて大きな木に大きなコブが出来ました。

けれど少年は眠ったまま起きませんでした。

少女は少し悲しそうな顔をしました。

けれど少年は笑ったまま起きませんでした。


やがて大きな木な木の下に一人の少女が立ってました。

少女は眠った少年の身体を揺らしました。

けれど少年は眠ったまま起きませんでした。

少女は少し笑って少年に口づけをしました。

けれど少年は眠ったまま起きませんでした。


少年は笑ったまま起きませんでした。


少女はひとこと言いました。


「おやすみなさいお父さん」



おしまい

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