第449話
教育という考えがどのように導入されて、その国という組織に都合が良い人間を増やして統治していくのか?
それはさまざまな時代や地域で、幸せになりたいと望む者たちがいるために、いろいろな試みが今もなお挑戦が続けられているのである。
子供が親と共存して生活が一致している状況は、山の民や草原の民にしか残っていない。
スカベたちは大河を渡ってきた移民による急激な統治か、神聖教団の参入による緩やかな誘導によって指導されていく状況のどちらかになり始めている。
適材適所とか、各人の持つ特技を活かして競争させて優秀な人物を決めて、義務と責任を明確にして何かの問題に対しての解決方法を事前に対策として準備しておく。
弱い者を強い者が導いて統治するという考えや、個性をのばして競争させる考えで、少数の統治する者と大多数の支配される者がいることを理解させ、大多数の支配される者たちが納得して従わせる仕組みの一つに教育がある。
エルフェン帝国でも、農場の村の責任者である伯爵を選び出して決めておく考えがある。血統の正統性のみ最重要ではなく、子で適任者がいなければ、婚姻する相手や縁者であっても適任者に農場の村という領地の運営の責任者にするという考えがある。
起きたい時に起きて、家族全員で生きるために必要な食糧の確保や飲み水の確保や病気にならないような対策などを行い、日が暮れたら巣に戻り食事をして、娯楽を兼ねている子孫を残す営みやスキンシップ、それはのあとは疲労回復のために眠ることを、若い時から年老いてくたばるまで繰り返していく。
小規模の人の集まりで、最低人数は二人の家族という、海賊の
スカベたちは、家族や親類縁者で百人以下の集団生活を廃墟の村や街の跡地に住みつくことで、寄せ集めで生きるためにしかたなく必要な事だけをして。争いを避けていた。
人とのいざこざが、最も生きるには危険だからで、それを避けるコツだけがしつけとしてあり、教育は存在しておらず全体の統治者は
飢えや喉の渇き、健康を妨げる不衛生や体な疲労の蓄積、生きることが続く退屈さ、そして、人といざこざを避けていた。しつけというものしかなかった。
服従心と団結心を大人から子供まであたえて、いざこざを避けるためと感じて分担していたことを、移民の統治者だけは特別に他人から施されるようにする仕組みを作り上げようとした。
言いなりにならなければ、統治者以外の命が誰であっても奪われると信じ込ませた。さらに、言いなりになる下僕には特権として、たとえば糞尿捨てを免除されるという格差を教え込んだ。
大河での沐浴すら出かけることを避けたリカクやカクシィは、全身を下僕に命じて洗わせていた。
彼らは鷄の捕獲や調理もせずに、食事すら口へ運ばせて、服従させた下僕に奉仕させていた。
この服従心と団結心を徹底して調教する段階を踏まなければ、次の段階には進まない。本来は統治されずに、野生化した鷄と変わらず、のびのびと何も考えずに暮らしているからだ。
リカクやカクシィのように暴力で服従と団結心を作り上げていた統治者が、もっと暴力的で野蛮だが単純明確に弱肉強食の強者だと示すガルドやソフィアが現れて討伐したあと、次の小さな王としてスカベたちを統治せずに、放置して立ち去ってしまった。
一度、特別な統治者があらわれ、格差を教えられたスカベたちから、何らかの根拠を示すことて、統治者の特権という贅沢を望む者は、弱者を決めて下僕として快適に生きる格差のために、いさかいをするようになった。
分担で役に立たない者をじわじわと下僕にするか、見せしめとして排斥する考えが広まり、ギャング化していく。
個性と競争から、人の集まりの画一化から抜け出して、暴力なり他の個性が役立つ者を強者、役立つことがない者を弱者として分けると、強者のボスが命じなくても、弱者の虐げられる者にされないように従う者や団結心を示すエリートを自称する者たちが、集団の中でお荷物として迷惑をかける排斥対象を印象や見た目などからごじつけて決めて、虐げ始めた。
誰が集団の小さな王なのかを曖昧にして、その他の全員が下僕とされるのを避けていった。
小さな王である
鷄を必要なだけ捕まえるより、たくさん捕まえる者、他にカエルや茸で食糧不足を補って、たとえ鷄を捕まえられなくても迷惑をかけないで我慢できる者、その他の雑用を代わってなんとか少ない食事にありつける者……格差の基準が暴力に限定されないことで、より厳しいものとなり、集団で役立てないのは個人の努力が不足しているからで、みんながんばっているのだから、がんばれない者が悪いという考えで助け合っていた生活のスタイルが崩壊していった。
もう限界で、がんばったけれど、どうにもなりませんとなり、恥をしのんで、助けて欲しいと、弱者であることん認めて、勝ち負けのある競争で負けを認めてアピールすることができれば、僧侶のルードとミーアと神聖教団のサポートが受けられる可能性はある。
ただし、生活の中で幸せなのかを神聖教団の信仰にゆだねて、ただ祈るばかりで何も考えられなくなってしまえば、生活の中で周囲の者たちとかけ離れた修行の生活を選ぶことになる。
暴力による支配に服従したかわりに、神聖教団の信仰の戒律に支配され服従することを選んだだけで、格差があることや自分の立場に対して責任転嫁できるものを探してゆだねているだけである。
神聖教団からの保護を受ける代わりに対価として何かを要求され、教団への寄付として捧げることで交換する仕組みに慣れさせられていく。
緩慢に目立たないように絶対的な神の下では、人間は対等な関係性であるように思い込まされ、格差から抜け出したような気分や人間関係の悩みを忘れさせることで、信者として神聖教団を維持するための人材となるように、時間をかけて調教されていく。
スカベたちが、山の民や草原の民のように、他人と利害関係を考えずに共存していた考えを失い、調教されていく過程にあり、人は生まれてくたぱるまで、本質的には孤独という考えにとらわれていく。
孤独では生きられないという不安や恐怖から、何かしらの人間関係を求める。
命をエネルギーとして考えれぱ、孤独というものは贅沢な悩みといえる。
大いなる
孤独はさみしいのに、人と群れて同調しなければならない状況が苦手というアンバランスな心の天秤の揺れというものがある、
情緒や感情で行動するのか。
それとも、効率や損得の考えで行動するのか。
それはどちらでもあるという結果が行動なので、後から時間をかけて整理してみて、こうだったのかもしれないと考えてみることはできる。
再分配と共生の段階の仕組みのとなるまでの前段階の仕組みでは、特権階級の者が。大多数の者に羨ましがられるものを独占していた。
たとえば、ターレン国王の後宮。美しい寵愛する妃たちを所有して独占することで、特権階級の証明としてその他の大多数に誇示する。
子供のうちから。生活の一部である生きている限りがある人生の時間や行動力を、群れの統治を継続できるように使わせることに仕向けるために競争させる。
以前は独占されていたものを、少数の特権階級のエリートに対する報酬や大多数の者であれ対価を捧げることで、再分配される仕組みで、団結心を維持する。
スカベたちは、ギャングとして特権階級の集団となったあとは、絶対的な強者の支配では独占されていたものを、対価を捧げることで再分配を受けることができる者か、ただ昨週されるだけの持たざる者として最下層の下僕の立場を強いられている者かのちがいがあるだけで、以前のような絶対的な強者の独占するボスは存在しなくなった。
世襲制と圧倒的な暴力で統治されている段階。
競争から選ばれたエリート階級を選び出して統治している段階。
この仕組みから、個人や少人数の独占から条件つきで再分配される仕組みとして経済という仕組みが考えられた。
スカベたちは、その過渡期にある。
脱組織、脱家族、脱恋愛という共生しやすさを優先していけば、集団の中で、いかに生きやすく快適に関係性を作っていけるかと考えれば、支配と服従では破綻したり、矛盾を抱えることに気づき始めているのが、エルフェン帝国の人たちである。
――人のつながりや愛情で、私たちは愛と豊穣の女神ラーナの信仰で目指してきた共存共栄の生き方を選ぶことができるのか?
絶対的な存在を競争から選び出すのでは、競争の激化によって格差が広がるばかり。
競争の対象外の特別な個人で見た目からして美しいものを崇拝して、競争と自己責任という心の負荷から解放されたいと望んだ人たちは、エルフェン帝国の女王陛下にエルフ族のエルフィーヌを、そしてどの土地の風習や考えからも離れて育った聖女エリザを崇拝の対象として、新たな統治の仕組みの責任者にすることにした。
美しいものを崇拝して、責任者としてできるだけみんな平等に幸せになれるように、自発的に再分配するように導いてもらおうという考えかたから、金銭と経済に代わる宗教のように、エリザが選ばれている。
絶対的な強者として不思議な法術を使うのではなく、圧倒的な暴力を行使して支配する者は怖がられる。
家庭の親子関係や血縁関係にも縛られず、競争から逸脱している世界樹からあらわれて、怖がられながらも崇拝されてきたエルフ族からも、ただ存在するだけでいいと愛されている聖女は、あまりに逸脱しているために、人々に崇拝させることにしたのは、神聖教団の幹部アゼルローぜとアデラのアイデアの閃きなのであった。
信者を納得させ幸せだと感じさせる方法には限界があらわれ始め、信者数の少子高齢化による減少も重なった。
回復ポーションでは、人間を不老不死にすることや人間関係の苦悩の解放には無理がある。
さらに、冥界からの悪影響を予想した賢者マキシミリアンのダンジョンの仕組みの人命尊重を重視した改変まで行われた。人々を不安にする経済的な不況が重なる。
エリザはその状況の中で、人々にとって崇拝されている希望の星、絶対的に愛されている新しいタイプの統治者なのである。
その彼女は現在、ターレン王国の僻地であるストラウク伯爵領で、今後のプランをどうするべきか、女神ラーナの化身である現在のエルフ族の女王のご都合主義のような奇蹟で丸く問題を解決してもらおうというプランが、エルフ族の王国に帰還できないまま難航しているので、とても悩んでいるのを、クフサールの絶対的権力者で女王の美しい黒猫の姿のシン・リーに、とても心配されているのである。
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冒険者のみなさんに、帝国から毎月金貨30枚支給します! 平 健一郎 (たいらけんいちろう) @7070ks
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