第10話


 その家屋から出てきた審問官は、もう一人の人間──仮面で顔を隠し、黒い外套で身を包んだ人間──を抱えていた。

 彼は治安兵に対して、対象はすでに無力化されているが、まだ瘴気が残留していると伝えた。瘴気が晴れるまでの数刻の間、誰も家屋に近づけてはならず、それが終わってから突入して対象を捕えよ、と命じると、その審問官はそのまま街の中へと消えていった。

 そしてそれが、審問官ブレイクスリーの最期の目撃情報となった。

 数刻を待ってから家屋に踏み入った治安兵たちが見つけたのは、仮面と外套を剥ぎとられて、床の上で眠りこける審問官ロスの姿であり、その他には誰もいなかった。

 後日、下水道に打ち捨てられた二つの金糸細工の仮面が偶然的に発見された。しかしそれ以外の痕跡はどこにもなく、仮面を外した二人の行方はようとして知れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

審問官ブレイクスリーに逃げ場はない。 プロ♡パラ @pro_para

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ