エピローグ⑨

 その少女は生き残った。

 どうして運命が変わってしまったのだろう……。

 結末は九つの筈なのに。

 どの結末も、確実に死を迎える筈だったのに……。


 いや、そうじゃない。

 九つの運命は直ぐに九つの運命を創る。

 だから九つの運命は一秒ごとに、更に九つの運命に枝分かれしていたのだ。

 私が結末という言葉を使った事自体が、間違っていた。

 所詮人間という生命体の力量では、アカシアの記録を書き記す事は到底できない。

 私が辿り着いたこの結論さえ、既に九つの運命に分かれているのだろう。


 私、夜亡夜亡はこの沢山の華に包まれながら別世界へと向かう。それがアカシアの記録に記された運命の一つなのだから。


 生きた私達が幸福に暮らす別世界も必ず何処かに存在する事を信じて……。


〈完〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある少女の九つの結末 押見五六三 @563

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ