第71話

 たった1回切られた肉球を舐めるだけで傷を癒す能力を持っているのか、それともボスの黒い狼の元から持つ治癒能力なのか分からない為、その他にも出来ている傷を確認して行けば、どうやら舐める行為を行なう事で治癒している様だ。


 ペロリと肉球を舐める行動をボスの黒い狼が行なった事で出来た一瞬の時間に、遠距離攻撃型ゴーレム部隊がボスの黒い狼に魔法や弾丸を浴びてせていく。


 遠距離攻撃を浴びて防御性能の高い毛皮を抜けた攻撃の一部が命中し、ボスの黒い狼の身体に細かい小さな傷が出来始める。


 それでも遠距離攻撃を大量に浴びせられてもボスの黒い狼は気にしたそぶりを見せずに自身の接近して来ている聖シリーズ装備のゴーレムたちの迎撃に動き出していた。


 炎の聖シリーズ、水の聖シリーズ、風の聖シリーズ、土の聖シリーズ、雷の聖シリーズのゴーレムたちが、それぞれの武器を構えてボスの黒い狼に攻撃を仕掛ける。


 次々に連携して行なわれる聖シリーズを装備したゴーレムたちの攻撃に、ボスの黒い狼も迎撃を行なうが完全には間に合わずに身体中に傷が増え始めていく。


 それでも聖シリーズを装備したゴーレムたちのボディには、かなりの負担が掛かっており、すぐには損傷しないが、このままボスの黒い狼の攻撃を数回受けるだけで修理しないといけないだろう。


 「とうとう来たな。」


 ボスの黒い狼が行なった最初の遠吠えを聞いて駆け付けただろう中級クラスの狼の魔物から最上級クラスの狼の魔物まで、ボスの黒い狼を助かる為の増援として向かって来ていた。


 それを俯瞰視点で確認しながらゴーレム部隊はどうするのかを眺めていく。


 既にゴーレム部隊は上空を飛行している飛空艇型ゴーレムたちから、狼の魔物の群れの増援が向かって来ている事を伝えている様で、地表をゴーレムたちが増援の狼の魔物の群れの迎撃の為に動き出していた。


 そして、まず増援の狼の魔物の群れに行なわれた攻撃は、上空を飛んでいる飛空艇型ゴーレムたちから放たれる砲弾の連射だった。


 距離もある為、狼の魔物の群れの中で砲弾が直撃する狼の魔物は数が少ない。


 だがそれでも、至近弾の影響でダメージを受けている狼の魔物は少なくない数がいた。


 その中で中級クラスの狼の魔物なら至近弾でも重傷から瀕死くらいのダメージを与えられており、上級クラスの狼の魔物にもそれならのダメージを、だが最上級クラスの狼の魔物となると至近弾ではそれほどダメージは与えられていない様だ。


 そうして上空から行なわれる砲撃の数々を潜り抜けた狼の魔物の群れに、ボスの黒い狼を担当しなくなった遠距離攻撃型ゴーレム部隊が狼の魔物の群れへと攻撃を開始した。


 一点に集中して放たずに確実に躱し切れない様に遠距離攻撃型ゴーレム部隊は攻撃を行なっている。


 そうする事で躱されても少なくないダメージを狼の魔物に与えられており、それだけで中級クラスの狼の魔物は殺されていく。


 中級クラスの狼の魔物が殺されれば、残る増援の狼の魔物は上級クラスの狼の魔物と最上級クラスの狼の魔物だけになる。


 しかも手傷を負っている状態の狼の魔物の群れを、遠距離攻撃型ゴーレム部隊は第二射撃を行なって攻撃を行なった。


 2回目に放たれた遠距離攻撃は1度目よりも遠距離攻撃の弾幕密度が上がっており、2回目の遠中距離攻撃で上級クラスの狼の魔物のほとんどが瀕死か死亡している。


 そして3発目を狼の魔物の群れへと放てば、遠距離攻撃が集中しやすくなるからか、最上級クラスの狼の魔物でもかなりのダメージを与えられていた。


 だが、4発目の遠距離攻撃を行なう前に最上級クラスの狼の魔物のほとんどが、遠距離攻撃型ゴーレム部隊へと接近していた。


 それを防ぐのが魔物を抑える盾型武装を装備しているゴーレムたちの役割りだ。


 ダメージを受けているせいで動きが通常よりも鈍くなっていた最上級クラスの狼の魔物たちが攻撃を盾型武装を装備しているゴーレムたちに防がれ、防いだゴーレムたちの後ろから別のゴーレム部隊が攻撃を行なっていく。


 そうして前衛のゴーレム部隊が最上級クラスの狼の魔物たちと戦闘を行なっている頃、遠距離攻撃型ゴーレム部隊はまだまだ集まって来ている狼の魔物の群れへと攻撃を行なっているのだった。


 4000機のゴーレムの内の3000機が集まって来ている狼の魔物の群れの対処を行ない、ボスの黒い狼には1000機のゴーレムが聖シリーズ装備のゴーレムたちを中心にして戦っている。


 そんな戦いを眺めながら俺はゴーレムマスターを操作して、破損したゴーレムの回収・修復・予備のゴーレムボディと武装の換装を行なっていた。


 「思った以上に持ち堪えたな。」


 そして等々、聖シリーズを装備したゴーレムの1機が破壊されてしまった。聖シリーズ自体の耐久は高いお陰でボスの黒い狼からの攻撃を何度も受けても破損してはいないが、装備していたゴーレムはすぐに修理に出さないといけない状態だった。


 俺は急いで聖シリーズを装備するゴーレムの回収を行なう様に命令を出して次元空間の出入り口を開いた。


 これがゴーレムマスターの力で製造した武装ならば、ゴーレムを回収すると同時に武装も回収する事が出来るが、今回の様な宝箱から手に入れた装備をそのまま使っていると、ゴーレムマスターの力での回収では聖シリーズ装備の回収は行えない。


 その為、3機のゴーレムが破壊された聖シリーズを装備したゴーレムを回収し、次元空間の中に入ろうとした時、ボスの黒い狼が次元空間の中に入ろうとしたゴーレムたちを襲おうとするが、ゴーレムたちは辛うじて次元空間の出入り口に滑り込んで入ることが出来た。


 そして、ゴーレムたちが次元空間の出入り口に入った事で、ボスの黒い狼の攻撃がゴーレムには当たらなかった。


 だが、ボスの黒い狼の攻撃が次元空間の出入り口の中まで届こうとしたからか、敵対者の侵入を拒もうと次元空間の防衛設備が稼働して、ボスの黒い狼の侵入しようとした腕の表面が毛を無くして黒焦げになる。


 これまでで1番のダメージを受けたボスの黒い狼は、口から炎が漏れ出しながら「ぎゃあぉおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!」と絶叫の悲鳴を上げるのだった。

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ひきこもりのゴーレムマスター 甲羅に籠る亀 @GOROHIRO

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