MeはDの意見を否定する。
なりた供物
第◯話(仮)
僕は今の所なにも創造できていない。想像することはできているのにそれを一種の"世界"として完成させる事ができない。
自己肯定感の無さで苦しんでいる。自らの作った宇宙ならば自分が創りたい惑星を創るべきだ。それなのに、そもそも自分に宇宙がある事を信じる事ができない。
何者にもなれなくて苦しんでいる。何者にもなれない事に理由なんてないだろう。何者にもなれてない、他人からしたら、その事実しか残らない。だって何者にもなれていないのだから。
苦しみ続けて作った惑星を、自ら破壊する生活。自分が創造した物は到底あの人が作った星に追いついていない。クオリティは勿論、オリジナリティもないし、他人の真似をする勇気もない。
そもそもここに愛なんてない。自分の作った星に愛を作ろうとしない。自分を信用しきれていないからだ。自分はもっと、最も苦しむべき存在だという謎の妄想がやけに捗る。そんな穢れた星は誰も見たくはない。美しく無い。
それなのに自分の不幸を肯定できない。自分は苦しむべきだと言い聞かせているが、自分自身はそんなことを考えてない。本心ではない。不幸自慢は大好きだが不幸収集家ではないのだ。
どうして、こんなに、不安定なのか。
どうして、こんなに、苦しみ続けるのか。
病気のせいだと、脳内喧騒だと言って仕舞えば簡単だ。自分自身は常に入れ替わり続けているし、確固たる思想なんて無いし、思想に正解なんて無いし、だけど僕はたぶん正解では無い。
Aは言う。誰も友達や仲間がいないのであれば、もうこの人生を壊すだけ壊してもいいんじゃないか。
Bは言う。そんな事をすれば、毎日狂ったように誠実に振る舞い続けたこれまでの自分が泣くと。
これらの意見を、Meは否定する。AやBは自分自身に湧いたうるささでしか無いが、MeはMeだ。
Meは言う。「とりあえず、考えるのを一旦やめておこう。」
A〜Zといった自分を構成する集合体が、Meへの反乱を始める。しかし彼らは全てちょっとずつ違う意見で、ちょっとずつ否定したくなる意見で、ちょっとずつMeの心情を考えている。
Meは意見を切り取りたいのだ。しかし、そんな能力はない。だから最終的に思考の停止に陥る。その結果が今の自分だ。何者にもなれない理由なんて無いと言ったのは"N"の意見。"Me"が考えた意見ではない。ここに"僕"なんて何処にもいない。
そこ!!!うるさいんだよ!!AかDかHかわかんないそこのお前も!!!Sか!!!Dか!!!何がなんなんだよ!!!!!!ここまで偉そうに書き綴っていた"Me"が一番わかってねぇんだよ!!
ダメだ。この人格はダメだ。この人格だけはダメだ。この人格以外もダメか?この人格は"僕"ではない。この人格は捨てよう。あの人格になりたい。あの人の人格のいい部分だけを切り取った"あの人格"になってみせる。
「えーっとね、今日から、脳内喧騒の議長が"この人格"を捨てて入れ替わった。"Me"や"僕"である事には変わらないらしいし、そもそも"Me"や"僕"の定義が何なのかよく分からな…まあいいや、名前をどうぞ。」
「"かの"人格です!!!がんばります!!!!!」
MeはDの意見を否定する。 なりた供物 @naritakumotsu
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