閑話 その2
「君には言っておきたい事と尋ねたい事がある。まず言っておきたい事を先に伝えよう」
ガーグァは階段を軽やかに降りながら言葉を連ね、くるりと振り返りこう言った。
「牧野義晴が囚われた」
「何⁉︎ 何故それを早く───」
「次に尋ねたい事だが、君を処分しようとしたのはアオと建前どちらなんだ?」
ガーグァはバーカウンターの席に飛び座り、テーブルに片翼を置いて寄りかかった。
ペンギンは些か不機嫌にガーグァを睨みつける。
「君は探偵じゃなかったのか?」
「真実を口にする者がいるなら推理するより聞いた方が早い」
「僕が真実を口にすると?」
「牧野義晴を助けたいのだろう?」
ガーグァは続ける。
「君も私もアオによって生み出されたが、君は牧野がいなければ存在しなかった。彼に対する思い入れはさぞ強い事だろう」
「……わざと捕えさせたのか?」
「君の危険性を測る方が重要だったんでね。アオが忘却に呑まれたのはわざとではないのか? 君は本当にアオが大切か?」
『アオ! しっかり! アオ!』
思い出すのは呼吸が乱れて崩れ落ちるアオと、それを支える男、知性。
その様子を遠巻きに見ていたこの身体を乱暴に掴み、忘却に投げ入れようとしたのは───。
「理性だ。処分しようとしたのはアオでも建前でもない。理性を失った理性さ」
だがその理性の腕を、力強く止めた者がいた。
理性は荒ぶっていた。
『邪魔をするな! 離せ創造性!』
『落ち着いて。間違ってるから止めてるんだよ』
『そんな事ない! 消すんだ! コイツを消さないとアオが生きられない!』
『思い出に蓋をしたってなかった事にはならない! 乗り越えるんだよ! それに、アオが理性を見ないのはこの子のせいじゃない!』
創造性の言葉に理性は硬直した。
『なん、だと』
力が抜けて理性の手から落ちた身体を、創造性は抱きしめてくれた。
『大丈夫だよ。いつか、いつかきっとさ、こうしてアオが抱きしめてくれるよ』
上がった口角は震えていた。泣きながら笑っていた。
そしてそのいつかは、つい最近訪れた。
「アオは大切だよ。大切に決まってる」
「そうか。なら問題はない。ん?」
コツコツと店の戸が小さくノックされていた。
「誰だ」
ガーグァが低い声で尋ねると、
「ニャ王様が屋敷にアオ様をお招きでございます」
と返事があった。
戸を開けると、針を剣のように携えた一匹のネズミが立っていた。
Me はま田えつ子 @kido-sei
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