遅れて来た梅雨
閉め切った薄いレースカーテンの隙間から外を覗く。
朝から降り続いていた雨は、まだ止まない。
今年の梅雨は、随分と気分屋らしい。もうすぐ7月になろうとしているこのタイミングにようやくやって来た挙句、真夏のごとく晴れ続きだった6月の分を取り戻すかのような勢いでひたすら雨を降らせ続けているのだから。
季節も順番くらい守ってはくれないだろうか。そんな八つ当たりが、ついつい口をついて出た。
開けたレースカーテンをまた閉めて、自室を振り返る。
一人暮らし用のワンルーム。引っ越してから数年、もうすっかり見慣れたはずのこの部屋は、日中であるにも関わらずぼんやり暗かった。
室内を見回せば、散らかったローテーブルに室内に干しっぱなしの洗濯物、そろそろいっぱいになりそうなゴミの袋なんかが目に入る。
しかし、結局私がやったことといえば、すっかり自分の匂いの染みこんだ毛布に包まって静かに目を閉じること、ただそれだけ。もはや眠気なんて感じないけれど、それ以外には何もやる気が起きなかった。
遅れてやってきた梅雨は、私をこの狭い部屋へと閉じ込めた。傍から見ればただのひきこもりだろうけど、別に楽しいものでもない。
今の私にできることと言ったら、穏やかに降り注ぐ雨の音に耳をすますくらいだ。
ざあざあ、ざあざあ。
窓の外では、今も雨が降り続いている。
物語のかけらを集めて 駒野沙月 @Satsuki_Komano
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。物語のかけらを集めての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます