古くから「道」というものは、人々の生き方や世界観を形作るものでありました。
この「道説く」という話は、そうした多様な「道」が、結局は一つの大きな流れに集約されるという、驚くべき洞察を与えてくれます。
文章は、静かでありながらも力強く、読者の心の奥底に響くものがあり、敏感な感性が、各々の「道」がいかにして心の濁りを洗い流し、最終的には真理へと導くかを、見事に描き出しています。
また、「自在」という概念を通して、創作の本質に迫る試みは、独創的でありながらも、深い共感を呼び起こします。
書くことの自由と、それに伴う責任が増すという事実を、巧妙に読者に理解させるだけではなく、人生と創造性についての深いメッセージを含んでいると感じました。
人生は道に例えられるが、実際のところ「結局はどういうこと?」と言われると、返答に詰まるような気はしないだろうか。
どこを目指せばよいのか、どうすると歩いたことになるのか、そもそも自分はどこにいるのか……と道に関する謎は多いのである。
この作品は「自在」を始めとするキーワードを分かりやすく解説した、道を説くエッセイである。
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この作品は技術論ではなく、武道や華道、仏道にある「道」に関する論となっています。
謂わば人生そのものを以て歩み続けるような領域であり、なかなかに荘厳なのですが、作者様の「説く」言い回しにより馴染みやすい。
レビューとしては上記だけでも十分と思われますが、
「自在」の説明を見た上で、以下のようなことをぼんやりと考えていました。
シトーウィック「共感覚者の驚くべき日常」で筆者はこんなことを書いています。
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客観性は、基盤となる先行の主観的経験なしには不可能である。どんなものでも、ある経験の主観的性質が一つの見地からしか理解できないのなら、客観性への移行は――すなわちあなたに特有の見地から離れることは――あなたをその経験の質から遠ざけるだけだ。
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私達は客観という言葉を聞くと納得し、逆に主観と聞くとワガママ、属人的というイメージを持っています。「あくまで私の主観ですが」という表現に客観 > 主観の図式が薄っすらと見えるように。
ですが「みんながこう思っている」の前には必ず「私はこう思っている」の段階があるはずで、私抜きでみんなを語るなんてことは出来ないはずなんですよね。
悟りを開いただとか、道を究めたような方は、一見、無我の境地に至り、何に対しても客観的に振る舞っているように見えますが、
おそらくその為に、人よりもずっと多くの我を、意識的に開拓してきたのではないか?
我を捨てる為には、自分の持つ我を丹念に見つめる必要があると思うのです。
だからこそ、修行のために各地へ旅をして様々な主観を拾い集めるし、だからこそ仙人は何者にでも化けられる……
そういった試みは勿論すぐに終わるわけではありません。ローマは一日にして成らずの通りです。
とはいえ、「主観をかき集める」という方法は、素質を問わず誰もが目指せる方法に感じられました。
「自在」は烏滸がましいかもしれませんが、ちょっとずつ進んでいきたいものです。