第2話 アルファの恋人たち



 十和(トワ)は本業の仕事を終えると… 榛那(ハルナ)の指導報告をするために、鳥羽とば家の当主が待つ、ホテルのレストランへと向かった。


「お待たせしてすみません、トウキさん!」


「いや、忙しい時に呼び出してすまない」


 夜景を見おろすのに最適な、大きな窓の前に置かれた席に着き… 鳥羽家当主、鳥羽冬騎(トウキ)はチラリとトワを見た。


 海釣りが趣味というだけはあり、トウキの肌は健康的に焼けていて、引き締まった身体は50代前半には見えない。


「いいえ、今日はいつもよりも、ヒマな日でしたから…」

 相変わらずあなたは素敵ですね、トウキさん…! イタリア製のスーツが、本当に良く似合う。


 野性的な印象を出会った相手に与える容姿に、時とともに成熟せいじゅくしたアルファのつやが加わり… トワは目を細めてトウキに向けて、あこがれの眼差まなざしを向けた。


「それでトワ… ハルナはどうだった?」

 トワが向かい側の席につくと、当主のトウキはトワのグラスにワインを注ぎながら、先に口を開いた。


「どう… とは?」


「ハルナもお前に夢中になったか? …と聞いているんだよ」

 当主のトウキは少し不機嫌そうである。


「…ええ、まぁ…」


「ええ、まぁ…?」

 ピクンッ… と左側の眉だけを、トウキは器用にね上げる。


「ふふふっ… 最初はグズグズして、面倒だったけれど… ハルナのやつ、結局オメガの合成フェロモンは使わずに、私の腹の奥をガツガツ夢中で突いていましたよ?」


「フンッ!」


「さすがはあなたの息子さんですね… 本当に良い持っていましたし?」

 当主のトウキを揶揄からかうように、トワはニヤニヤと笑いながら… トウキが注いだワインをひとくち口にふくむ。


「まさかオレの息子たちまで、お前に食われるとはな!」


「あなたが私に、命令したのを忘れましたか?」


「確かに命令したが… お前自身が、自分の身体を使ってヤルとは、思わなかったさ!」


「あなたが私に、ヤリかたは任せると言ったからですよ…? 現に、私が教えたあなたの息子たちは、今も離婚しないで夫婦円満でやっているでしょう?」


「わかっているから、腹が立つんだよ!」

 ムッ… とねてトウキは腕組みをする。


「ふふふっ… 食事が済んだら、ホテルの部屋へ移動しますか? どうせ取ってあるのでしょう?」


「悪魔め!!」


「彼らはあなたの息子ですから… あなたの心の平穏へいおんのためにも、全員幸せになってもらわないとね?」


「トワ……」

 ムッ… としていたトウキは、急に困った顔になる。


「トウキさん、愛してます… 頑張った私に、今夜はたくさんご褒美ほうびを下さいね?」


 トワが高校生の頃、トウキが愛した本妻が、長い闘病生活の末に亡くなった。(優秀な遺伝子を残すために、トウキには他に5人のめかけがいる)


 妻を亡くした悲しみにつけこみ、トワはねばり強くトウキを口説いた。


 子どもを産むことが出来ない男性アルファのトワは、トウキの妻にも妾にもなれないが… トウキの恋人の座を勝ち取ったのだ。


「明日の朝まで、付き合ってもらうからな? 先日のように、途中で眠るなよ、トワ?!」


「ふふふっ… 楽しみ!」


 トワの持つ豊富な経験の半分は… 恋人のトウキに抱かれて、教えられた経験である。



「ああ! そうだ… 忘れるところだった… トワ…」

 トウキは向かい側から手をのばし、トワの左手を捕まえた。


「ん? トウキさん、何ですか?」


「何年も前に用意しておいたのに… お前と会うと、うっかりセックスばかりしてしまうから、いつも忘れるんだよ」


 イタリア製のスーツの上着から、白金プラチナの指輪を出して、トワの薬指にはめた。





 ― E N D ―




ここまで読んで下さりありがとうございます☆彡

また、どこかでお会い出来れば幸いです!

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アルファとアルファの結婚準備 金剛@キット @GatuGatu

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