f-2/2. 自作ココアパウダーを使ったデザート作る

 


 「ちなみにシフォンケーキのレシピはこれな」

 〝まあ普通のレシピだな〟

 〝卵、砂糖、牛乳に小麦粉。定番の材料だね〟

 〝直径15cmの焼型用か〟

 「牛乳やのうてカウミルクやけど。量は一緒やで」

 〝メレンゲ立てるの、ハンドミキサーないとつらい。つらくない?〟

 〝とてもつらい〟

 「まあ、ないとやってられへんな。時間かかるし」

 〝それ〟

 〝料理とかお菓子作りとか、ミキサーとかないと結構重労働よね〟

 〝知ってるかい?多くのパン屋さんは午前3時か4時には作業をはじめるんだ〟

 〝知ってる。150年くらい前にやってた。よほど好きでもなきゃアレはやってらんない〟

 〝探索者のほうが楽って聞いて転職するやつ多い気がする〟

 〝実際楽。早起きしないで済むぶん楽〟


 一昔前に、はやってできまくったなぁ、手作りパン屋…もうほとんど潰れたけど。

 企業製より美味くても、日持ちせんし割高になるしで、よほどの経営上手の販売上手やないと持たんかったわ。その癖酵母の面倒見たり、早起きして作業せんとやったりで、まあ相当なパン好きやなけりゃ続かんやろなぁ。

 さて、そろそろ作ろかー。


 〝なんでもかんでも機械化した時代あったけどさ、結局食い物に関しちゃ人の手で作られた物を超えられたことないのすごくない?〟

 〝わかる〟

 〝機械製造だと、室温だの湿度だの細かいことに合わせて分量調節したりしづらいかんねえ〟

 〝あと素材に合わせた分量変更がききにくい〟

 〝戦争のせいで小麦の仕入れ先変わってインスタントラーメンの味変わった話好き〟

 〝味の均一化ができてなかったやつね〟

 〝均一になってるからって特別美味しいわけでもない罠〟

 〝不味いやつはどこまでいっても不味いからな…〟

 〝味覚が合わないとかじゃなくて、余程のゲテモノ好きじゃないと美味しいと思わないアレか…〟


 シフォンケーキを加速で冷ましてー、あ、器出してへんかった。量が量やけんスコップ用の平たいやーつ。

 ボウル出してー、作ったマスカルポーネチーズをどーん。グラニュー糖さらーっと入れてー、ゴムベラでまーぜまーぜ。

 なめらかーに混ざったら別のボウルに生クリームどーん。ハンドミキサーで高速オーン。角立つまで混ぜるん早よぉなってええよな、これ。そんくらいまで混ぜたら半分取ってー、マスカルポーネチーズのクリームにまーぜまーぜしてー、馴染ませてーの、残りもどーんして混ぜーる。

 お湯も沸かして…亜空間ポーチに入れっぱのフレンチプレスでええか。サイフォンもエスプレッソメーカーもどこなおしたか忘れたし。探すんめんどい。いや、先に探しときゃよかったんやけどな。探すんめんどい。


 〝気づけば作業が淡々と進んでいた〟

 〝シフォンケーキでティラミスかー。ふわっふわのシフォンケーキの特徴消えない?〟

 〝ふんわりはなくなるだろうけど、いい感じにしっとりしそう〟

 〝それはそれでありかもしれない〟


 フレンチプレス用の容器に細かく挽いたコーヒー豆をひと匙ー、沸いた湯を注ぎましてーの、蓋して4分くらい放置ー。そしたらフィルター押し込み抽出ー。抽出終わったら砂糖を入れたカップに注ぐー。

 4分待つ間に冷めたシフォンケーキをだいたい5ミリ幅で切ってー、ガラスの器に敷いてってー。シフォンケーキに砂糖入りコーヒーを刷毛で塗り塗りー。全体がコーヒーで湿ったところでチーズクリームどーん。均し均しーのシフォンケーキ並べてー、再びコーヒー塗り塗りー。そしたらまたチーズクリームどーんして均しー。魔法で冷やしたらココアパウダー振って完成!

 残ったコーヒーは飲む!うん、砂糖多めにしたけえ甘いわ。でもこの渋味と苦味と香ばしい風味が素晴らしい…濃いめに淹れると、独特の苦味が余韻を残す。うん、後でエスプレッソで飲も。…エスプレッソメーカー探すんめんどいけど、探すかぁ。


 〝ティラミスってクリーム作る手間がかかるだけで、結構簡単に作れるよね〟

 〝電動ハンドミキサーがあれば初心者にも易しい〟

 〝スポンジは市販でもいいし、コーヒーもインスタントでいいし〟

 〝カステラで作るティラミスのレシピあるのな。今見つけたわ〟

 〝ザラメのとこ切るやつか〟

 〝そう、それ〟

 〝カステラのザラメついてるやつ、そこだけよく食べてた〟

 〝みーとぅー〟

 「ザラメないカステラあったよな、たしか」

 〝あるねぇ、紅茶カステラとか抹茶カステラとか、そういうフレーバー系がそうだね〟

 〝カステラのザラメありなしはそこそこ戦争起きてた記憶〟

 〝あー、あのジャリって感触が苦手って人いるねー〟

 〝わかるまん〟

 〝知覚過敏のときにあのザラメにやられる。やられた〟

 〝ザラメが溶けたやつおいしい〟

 〝わかる。あのしっとりあまーい感じ。いいよね〟


 ザラメついとるんはたしか防腐剤代わりなんやったっけか。ありでもなしでも美味いけど、うちの好みはないほうかなぁ。ザラメの甘さがだんだん飽きてきてまうねん…いや、1本丸っと食わんかったらええだけなんやけど。ついつい食ってまうことあるやん?


 〝それにしても、シフォンケーキの厚さとクリームの層の厚さが同じくらいだと、なんだか見栄えがいいね。垂れてくるクリームでところどころムラがあるのもまたよし〟

 〝クリーム多めでも綺麗だけどね。大事なのは白と黒のコントラスト〟

 〝ちょっと隙間あると損した気分になる。こうやってみっちり入ってるの見るとテンション上がる〟

 〝わかる〟

 「たまーに透明やない容器に入ったやつあるやん。あれ見ると買う気失せん?」

 〝わかる!ティラミスはあの層が見えるのがいいのに、見えないと詐欺られてるんじゃないかって思う〟

 〝あるなぁ、陶器に入ったやつとか。三層しかなかったときはがっかりした。一番下がクリーム?ってなった〟

 〝それは、ちょっと…え、だいたいのレシピには、底にスポンジなりビスケットなり入れるってあるよね?〟

 〝ある。というか最初にクリーム入れるレシピは見た覚えがない〟


 そういや、クリームが下に来るティラミスのレシピってうちも見たことない気ぃする。ないんかな?


 「まあええわ。いっただっきまーす」

 〝いいなー〟

 〝甘い物食べたさすぎて南部にパフェ食べに来た〟

 〝いいなー、あたしも行こー〟

 〝ギルドの食堂でショートケーキもぐもぐ中〟

 〝中央の今日のデザートはショートケーキか〟

 〝東部のギルドの食堂はどこもデザート置かないよな。なんで?〟

 〝外に食べ物屋がいっぱいあるからさ。第二の前にもカフェあるじゃん?〟

 〝なるほど?〟


 うん。ココアの風味とマスカルポーネの風味がよぉ合う。生クリームと砂糖による甘味を、マスカルポーネがさっぱりさせとる。そこにコーヒーが染みたシフォンケーキが来ると、クリームのまったり感と甘味、シフォンケーキのしっとり感と小麦の風味が合わさってたまらん。コーヒーの香ばしさと苦味もええアクセントになっとる。


 〝皿に取り分けてるとは言え、結構がっつり取ったよなぁ〟

 〝まだ8割くらい残ってるけど、さすがに残すよね?一気に食べないよね?〟

 「さすがに半分は夜食う分に取っとくで」

 〝半分は食うのか…〟

 〝まあ日持ちはそんなしないからそうなるか…〟

 〝烏さん、結構な健啖家だよなぁ…〟

 〝食べても太らないとか羨ましいんだが?〟

 「食った分を動いて消費せんけえよ」

 〝やはり筋肉。筋肉が脂肪を燃焼する〟

 〝筋肉…もっとつけるべきか…〟

 「体質的に筋肉つきにくいっちゅー場合があるみたいやけん、そうやったらウォーキングなりランニングなりしぃ。個人的なおすすめは水中ウォーキングやけど」

 〝食後じゃないならそれでもいいのか。南部が拠点だし、筋トレしても筋肉つかなかったらそれやってみる〟


 背ぇ伸びきっとるなら、筋肉つけたところで影響ないけんな。つけられるだけつけられるんはええよなぁ…

 うちはもう、うん…


 

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傭兵兼探索者のダンジョンキャンプ yu102(あんかけ) @yu102

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