第5話 穴の底 side she

 確かに真下から音が聞こえた。

 15分も掘るとスコップにガツンと硬い感触がした。急いでその周辺を掘り返せば、たしかに鉄板が現れた。幅90センチ程の細長い面。タイガの言っていた箱と合致する。

 あと少しだ。

「タイガ? タイガ!?」

 喜びで名前を呼んだ。

 ……でも返事はなかった。陽が落ちてもう辺りは真っ暗闇だ。不意に襲う不安。

 声が帰ってこない。何か、おかしい。ひどく不吉な予感が浮かぶ。でも他に術がない。時間も。一縷の望みをかけて掘り進むと箱の全体が浮かぶ。まるで棺桶。それがその黒い箱のイメージ。呼びかけてもやはり返事はない。その事実に心臓が凍りつく。さっきは確かに下から音が聞こえていた。だから近づけば、音は聞こえるはずなんだ。声さえ上げられれば。なのに。おかしい。だから掘ったのに。

 思わずスマホをかける。確かにその箱からコール音が響く。けれども鳴りっぱなし。

 湧き上がる不安。ここで間違いないと祈る。他に方法はない。ドリルで棺の端に穴を開ける。手探りでバールでこじあける。そして。わずかに開いた闇をライトで照らして絶望した。

 そこには鳴り続けるiphoneと、それに接続される複雑な機器。どういうこと!?

 その瞬間、首筋に何かが刺さる感触がして意識が途切れた。


Fin

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スティル・イン・ザ・ダーク ~MOD Tempp @ぷかぷか @Tempp

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