第4話 サラバ、愛なき世界!

 なんで今日も、二見さんはオレの側から離れないのだろうか? 握られた手をふり払うたび、彼は傷ついた表情をオレに見せるの、ウザくてたまんねぇわ。


「由鶴は、未来を生きたくないのか?」


 未来か? 愛されない宿命を受け入れて、長い時間をボッチで生きる強さは、あいにく持ち合わせていないかな。


「どうせ独りなら、年単位の未来はいらねぇよ」


 んん? 泣いているのか、二見さんは。

 そうか、泣けるほど、オレの死が待ち遠しいのか。


「笑ってください。二見さん」

「由鶴」

「オレ、もう少しでいなくなります!」


 昔のオレは滑稽なくらい、人から愛されたくて、いろんな努力をしていた。


 それが無意味だと理解してから。誰も愛さない方が、魂が傷つかない分、幸せになれるかなと。


「あなたの嫌いなΩが、もうすぐ、いなく……」

「よしてくれ」

「なんで、自分を偽るのですか?」


 こうして、誰も愛せなくなってからのオレは、今まで感じたことのない、幸福で満たされているのに。


 だったら、もっと早く気づいていたらよかったな。


「キミに……愛されなくて……辛いんだよ」

「あんたは、愛されないことに慣れていないだけ」

「は?」


 今日は、いつもよりしつこいな。こっちは眠いんだよ。少し、人の迷惑を考えたらいいのに。


 だって、愛していない相手に、愛されなくて辛いとか、普段から、愛されないことに慣れていないせいだって、学習能力ないのかね。二見さんって……。


 まあ、愛されて当たり前の人間が、それなりの時間、愛されていないことに、誰よりも苦痛を感じるだけだよな。


「愛されたことないから、もう、誰かを愛することなんて出来ないんすよ。過去のオレを愛することは不可能だから。アンタはオレに愛されない、永劫を甘んじて受け入れるしかない」


 そんな顔するな。せっかくイケメンが台無しにじゃないか。


「大丈夫だ。アンタは、オレではないキレイなΩに愛してもらえるんだ。オレの死に感謝しろ……」


 オレが死んだら、キレイなΩと愛しあえる幸せに、感謝だけして欲しいかな。



 愛されたことがないから、愛してやれないから、お互いが愛し合えないって、認めるって大事だよな。


 なんで、愛さなかったヤツと、愛されて当たり前のヤツらって、愛されなくて辛いとか、愚痴をこぼすのか理解出来ない。


「認めてくれよ。オレを愛していないって」

「由鶴」

「受け入れろよ。オレに愛されない永劫の未来を」

「出来ない」

「出来ないじゃなくって、出来るようになれよ。オレだって出来るようになったんだ」

「出来ない……出来ないんだ」

「アンタなら出来る。オレに愛されない永劫の未来で、幸せになれよ……」


 サラバ、愛なき世界! どうか、彼がオレのいない世界で、誰よりも幸せになれますように。



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愛されていないから、愛していないとしか言えないけど、どうしてみんなは、それを否定するの? 赤羽 倫果 @TN6751SK

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