この珈琲(恋愛小説)から醸されるアロマは…

タンティパパ

〜 愛の物語を珈琲の味と香りで紡ぐ 〜

※本作は、レビューエッセイですが、ネタバレは一切ありません。

安心してご試飲ください。



カクヨムの路地裏にある喫茶店『神楽耶かぐや』。

ここの常連の私はいつも新作の試飲を頼まれる。


「マスター(作者)この前はフィリピン産の珍しい夏みかんのミックスジュースだったよね、サクラの花びらが色取りを添えて可愛らしかった…(※01 本編最下リンク有り)

今度の新作は何?」


「おや?

  これブレンド珈琲だよね?」


完熟豆を濃く深く焙煎した(飛鳥:41歳)珈琲豆

若採りの青さが残る(拓海:25歳)珈琲豆

のダブルブレンド。

普通なら合わない取り合わせだ。


店の照明を映す黒鏡の水面

一見すると普通の珈琲に見える。

私は一口含んだ。


口に広がる苦味は、「辛い」じゃない…

「やるせない」ほど積極的でも無いな……

何だろう…

  そう『切ない』だ。


同棲する16歳下の恋人の拓海の将来を慮るおもんばか飛鳥

「他に好きな人ができたら、ちゃんと教えてね。私はいつでも君の事を思い出にできるから」

嘯くうそぶ言葉とは裏腹に拓海への焦げつくような執着の燻りは『切ない』苦味として舌(読者の心)を鮮烈に刺激する。

そして、舌に消えていく微かな酸味は

 『涙』…


これは…

喉を通り鼻腔にかもされるアロマ…

奥に揺蕩たゆたう雑多な香りが珈琲(物語)の輪郭と深みを形作っている。

その芯に『カルキと夜風が混ざった香り』?

これは若い豆かな?それを優しく包み込むような……そうか…

 「コレは、『愛』だねっ? マスター」

マスターは、ドリッパーにゆっくりと湯を注ぎながら微笑んだ。


ドロついた味になりがちな、この年の差がある珈琲豆を純粋な『愛』に精錬せいれんするマスターの腕に私は舌を巻く。


「でも、マスター『切ない』だけでは…」

「えっ?三杯セット?(3章構成)だからカップが小さいんだ」


「二杯目はトリプルブレンドなんだね?」

一杯目の二種の珈琲豆に最高級のブルーマウンテンSクラス(俊介:34歳)を加えたトリプルブレンドか…

果たして一杯目のように調和するのか?


二杯目を口に含む。

飛鳥に急接近する隣人の俊介。

「ごめんなさい。あなたがあまりにも悲しそうな顔をしていたから」

凍った心をとろかすどころか返って飛鳥の心を軽く抉る。

この高級豆(俊介)が苦味の『切ない』を少し中和するがその偏在に『戸惑い』の(臭み)を生んでいる。


【たくみせんぱいは私のものです】

拓海の身体に印されたメッセージの浮気相手がさらに蠢きだすとカップの底のにごりが浮かび上がり『嘘』の辛味(絡み)が…


どれも混沌としているがなぜか調和が取れて興味深い


  「マスター…これって…」


マスターは黙って三杯目のカップをテーブルに置いた。

三杯目の珈琲豆のについては教えてくれない。


三杯目を口に含む。

「んっ?!」

一杯目と二杯目で舌に残っていた苦味が全て洗い流される。

それと同時に

 『光』?

舌に鼻に光を感じるものか?


  それと同時に涙が一筋流れた。


「美味い…」

「マスター…

  全ては三杯目に繋がるんだね?

 ふふっ…泣かされたよ」


マスターは、いたずらっ子のようにおどけて笑う


マスターにまたやられたようだ、カフェイン(読後の余韻)過多で今夜は寝られそうに無い。


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この珈琲は下記リンクから飲む(読む)事ができます。


君の背中が思い出に変わるまで【完結】

 【神楽耶 夏輝 著】

https://kakuyomu.jp/works/16817330666249060348


※01 小山内さんはエロくなりたい【完結】

https://kakuyomu.jp/works/16817330655274435892

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