いじめ-弐

伝承、ですか。お兄さん、そういうのを集める仕事してるんです?

ええ、ありますよ。この村に伝わる伝説が、一つだけ。


宴会でこの村の料理を召し上がったでしょう? そこで出された料理、やけに野菜が大きいと思いませんか?

ええ、そうなんです。この村では普通の野菜よりもひとまわりもふたまわりも大きいものが取れるんです。

それもこれも全部ジキト様のおかげなんです。ジキト様は飢えて死んでしまわれた人間なんですけど、もう飢えることがないようにこうして豊穣をもたらしてくれるのです。


良い方でしょう? でも、私思うのです。

自分は飢えて死んだのに、自分以外の知らない人らがお腹いっぱい食べて飲んで笑って、そんなの許せますか。

ジキト様は子供のまま死んだ方なので、時々癇癪を起こすんですよ。そうなったら我々村民はジキト様とお気持ちを一緒にするために、三日三晩飲まず食わずで在らなければいけないんです。それが、今日からの催しです。


ええ、そうですね。みんな食事を口にしています。そりゃそうでしょう。三日三晩の飢えなんて、そんな苦しいこと誰もしたくないですから。


代わりに村の人間一人に、償わさせるのです。何も飲ませず何も食わせず、村民と同じ数の針を飲ませる。

最低でも百を超える数の針です。そんなものを飲んで飢えを知れば、きっとそのものは死んでしまうでしょうね。

たった三日の苦しみと、村民一人の命。それを天秤に掛けて、保身に走るようなそんな村なんです。ここは。


……ねえ、お兄さん。

お兄さんはきっと誰かから話を聞くために宴会を抜け出してきたのでしょう。なら私は、どうしてこんな離れでお兄さんにこんな話をしていると思いますか。


ええ、その通りです。そんな顔しないでくださいよ。優しい方なんですね。

良く考えてみてください。死ぬとわかっているのに、何もしないわけがないでしょう。


一つだけ確認させてください。

あの料理、美味しかったですか?

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上位存在に囚われる 鷹E3 @takaE3

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