第5話 親友との出会い
入学早々に声をかけてきた男がいる。隣の席の「好哉(よしや)」である。少し馴れ馴れしくはあるものの、明るくて爽やかでなかなかの好青年だ。しかし女性のあらゆる情報を収集する癖があり、学校中の女の子の名前や誕生日、電話番号なんかを知っている。ちなみにこの時代はケータイなどなく自宅へ掛けるのだ。
更に魔眼持ちらしく、見るだけでスリーサイズも分かる超能力で情報を把握している。怖い、怖すぎる、見られるだけで裸にされるようで嫌悪感を持つ。まさか男性のサイズも知っているのではないかと疑っている。
おそらくだが、一つ下に妹がいる。彼に電話をするとたまに出てくれる時がある――という気がする魂の記憶がある。
そんな彼と話すきっかけの一つになったのが、幼馴染の存在だ。同じクラスで学校一とも思われる才色兼備の彼女「伊藤(いとう)」さんである。俺が言うのもなんだが、自己紹介の時に注目を集め、他とは違う雰囲気でクラスの男子を虜にしたオーラのある女性だ。好哉に知り合いということを知られると早速チェックされてしまった。
――第一目標は彼女の攻略と言うことになる。この世界における理は彼女たちとの関りを中心に動いている。難しいことは分からないが、とりあえず仲良くなって好感度を上げ、おそらく卒業式辺りに上手くいけば告白してくるのだろう。
この学園には伝説がある。構内にある古い大きな樹の下で告白されると幸せになれるとかなんとか……。魂の記憶と内容が一致しすぎているのは以前から疑問に思っていたが、正直この世界が何なのかをまだ理解できずにいるし、細かいことは気にしていても仕方ないと半ば諦めてきている。とにかく卒業までに「彼女達」と楽しく過ごそうではないか。
パターンとしては最初に出会い、友達の好哉に連絡先を聞き、デートの約束をして、実際に会ってデートをする。この繰り返しのはずである。季節ごとの条件や彼女達にどう思われているかによって多少の違いはあるだろうが、必須という訳ではない。気楽にやるさ、何かあれば奥の手で時間を巻き戻せばいい――。
――こうして彼女達との恋愛ゲームを本格的に始めることになった。
過去改恋 KASMIN @Kasmin_Tear
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