閑話4.むかしむかしあるところに


 むかしむかしあるところに、大金を拾った男がいました。

 男は喜び勇んで町へ向かい、たくさんのお料理やお酒を買って豪遊しました。


 男と商売をした町の人たちがお金を湯水のように使って、ほかの商人からものを買います。


 その商人もたくさんのものが売れたのでどんどんお金を使い、ものを売った商人もまた、財布いっぱいに入ったお金を使ったのです。


 町の人たちは、男の拾ってきたお金でとても贅沢ができました。


 めでたしめでたし。


 とはならなかったのです。


 ものがどんどん売れます。値段を高くしても売れます。いくらものの値札にゼロを増やしても誰かが買っていきます。


 頑張ってどれだけ食べ物を作って、いくら高くしても、やっぱり売れてしまうので、ものが少なくなり始めました。それでまた、2倍、3倍、4倍と値段が上がります。


 そうして、パンを一つ買うのにも袋いっぱいの硬貨が必要になる頃に、町の人たちはやっと気が付きました。


 町の経済が崩壊していたことに。

 お金の価値に対してものの価値が爆発的に上昇してしまう、ハイパーインフレーションが起きていたのです。


 ものが足りなくなってしまったので、町は男を捕まえて、一生ただ働きをさせました。


 めでたしめでたし。


 とはならなかったのです!


 男を捕まえても、すでに流れてしまったお金はもとに戻せません。

 市場のものは値段が高くて買えません。お金を持っていてもぜんぜん足りません。町に来た旅人もそんな大金を持っているわけがありません。


 生きるために、食べ物が買えない貧しい人が、食べ物が買える裕福な人を襲い始めました。町の経済には地殻変動のような格差が生まれ、治安には致命的なダメージが入っていたのです。


 やむなく町は、土地や貨幣などの富を回収して、再分配を進めるしかありませんでした。それが嫌な者は町を去り、合意した者も町に対して不信感がつのりました。


 むかしむかしから、変わってしまった町の輪郭りんかくが完全に直ることはありません。


 拾った大金は使わせない。

 そんな心構えが、ハイパーアキュムレーターたちの世界にできたのでした。

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ジャンク屋ちゃん! ~Scavenger Girls!~ 山田擦過傷 @BloodsuckerShow

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