第十九話 挑戦の迷宮①

「はぁ…」


現在僕達は迷宮の中にいる。それも14階層という深さまで来ているのだが…


「はぁ…」

『ほらため息をつかない!』

「いや…だってさあ」


耳元には迷宮内でも状況がわかるように小型の通信機が取り付けられていて、渚の声や豪傑の声などが聞こえてくる。そんで前の方では…


「ハーハッハッハッ!!」

『グギャアッ!!』

「いちいちうるせえんだよ、お前は!!笑わずにはいられねえのか。」


元気すぎだろ。Aランク冒険者の皆さん…ついていけてないって…


ちなみに会議にはいなかったがAランクの冒険者も数名参加をしている。理由は遅刻したかららしい。まじか…


そして…僕の横、Sランク冒険者のクロと名乗ったこの少女は何をするでもなく黒い影を全身にまとわせた状態でただ歩いている。


そう…ただ歩いているだけなのだ。常に臨戦態勢かのような雰囲気を醸し出しているくせに歩いているだけなのだ。


まあそんなこんなで最初からずっとこの調子で進んでいる僕達だが…正直言って暇だ。今回僕の役目はあくまでも迷宮攻略の手助け…余裕で進めている現状、僕の出番が全く無い。…まあ出番がないに越したことはないけど。


「おい!何体かそっちに行ったぞ!!」

「……」


…フラグ回収の早さよ。


さて、どうしたものか…そろそろここからの僕の身の振り方を考えたほうがいいよな。向かって来てるモンスターは…シルバーウルフか。


とりあえず…何回か噛まれておこう。能力で僕の体の性質を変化させてっと…これでよし。さあどこからでも来なさい!!


そうして両手を広げ今まさにモンスターの攻撃を嬉々として喰らおうとしていた。


だが


「…じゃま…」


瞬間…隣にいたクロが目の前に現れ、向かってくるシルバーウルフ達を短刀で一網打尽にしていた。


「……」


まじで今回僕いる?


・・・・


「少しここで休憩を取るか。」


僕達が迷宮へと足を踏み入れてからすでに数十時間と経過していた。ここまで連戦続きではあったがまだまだみんな元気ではある。


「次で20階層目だお前ら気合い入れろよ。」

「「はい!」」

「――そこで僕が聖剣で切り刻んでやったのさ。」

「「「す、すごいですー」」」


今回Aクラス冒険者は5人ほど参加していて、そのうちの2人が真咲の言葉に反応した人たち、もう3人があっちで白馬の自分語りを聞いている3人組だ。


「なんだあいつの話が気になるのか?」

「いいや、全く。」


真咲がこっちに近づきながらそう話しかけてきた。


「彼、どうするんですか。嘘ばら撒きまくってますよ。」

「あー?ほっとけ、いつか飽きるだろ。」


呆れ顔でだるそうに言葉を吐き捨てる真咲。


「それよりもだ。私がまだ聞いてなかったなと思って聞きに来た事があるんだ。」

「なんですか?」

「お前のは何だ?」


先程の呆れ顔から一変、真剣な顔つきになり今僕が一番されたくない質問が飛んできた。


「…あー言ってなかったですっけ?僕のランクこの中で一番低いんですよね。」

「…!」

「Cランクなんですけど…」

「―そうか…もういい。よくわかった。…

…チッ」


そう言って真咲は僕に背を向け離れていった。


…なんだったんだいったい。


それからしばらくして休憩も終わり、僕達は20階層のボスへと挑もうとしていた。そのボスは真咲の説明いわく、目からビームが出るとのことらしい。絵も描いてくれたのだが…


「……」

「「「「「「「……」」」」」」」


取り敢えず絵と説明が下手ということだけは分かった。そして当然白馬もその絵を見たが…


「ぶぁッハハハハハハハハハハ!!wwwww

猫ちゃん、猫ちゃんだwwwww随分と可愛いね…ハハハハハハハッwwwww」

「……」

「となると…この可愛い猫ちゃんからビームが出てくるのかい?それはなんとも可愛いね…ああ違う違う怖いね…ブハッwwwwww『バゴン!!』グハッ!!」

「…遺言はそれだけかぁ?」

「も、もうそのくらいで!!死んじゃいますって!!」


この時心なしか顔が見えないはずのクロの表情が呆れ顔に見えたのは気の所為ではないだろう。


『バゴッゴキッバゴンッ』

「まだまだぁ!!」

「翡翠さん!?」


この日ダンジョン中で謎の男の悲鳴が響き渡ったという。



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ななしの災害 〜主人公より主人公をしている主人公が多すぎる件について〜 花見 晴天 @kotatu123

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