不細工で不出来な主人公が大活躍……と言っても、彼「床助」の場合、見た目も職業(陰間)もとても親しみがもてるものではありませんでした。しかし、床助はまさにそういった地の底を這いずり回り、何度も立ち上がり(深い意味はありません)、愛する人への想いを貫いた男のなかの男だと思わされました。
現代と過去を心のなかでサッと行き来できるスムーズな展開、床助をめぐる盛りだくさんの冒険……最後まで十二分に楽しめる小説だったと私は思います。
とにかく床助という稀代のキャラクターの図太く静かな迫力に圧倒されること間違いなし、です。