宇宙一の望遠鏡
高黄森哉
望遠鏡
「とてつもない望遠鏡を発明した。とてつもなく、遠くまで見ることが出来る望遠鏡だね。星の裏側や、星の向こう側まで見ることも可能だ。恒星なら、どれだけ離れていても、見つけることが出来る」
「本当ですか。それは見てみたい」
助手は喜んだ。彼は、地球から遠く離れた星について、興味があったのだ。今までの望遠鏡では、限界があったのだ。
「しかし、博士、どういう仕組みですか。光は物を貫通することは出来ないはずです」
「最近、発見された物質はあらゆる物体を貫通することもできるという。そして、その物質は、恒星からしか照射されない。物質というよりかは重力などに近いかもしれないな。とにかく、これを応用したのだよ。恒星の位置を特定することへ」
「すぐに行きます」
助手は、博士の部屋に到着した。部屋は五角形で、天井はドーム状になっている。そのドームには星座や星の位置が記されている。それは美しい水晶で出来た天窓だ。ガラスのドームにはさらに窓があり、ここを開けて望遠鏡の覗き穴とする。ガラスが観測の邪魔をするから。全方角を観察できるよう、そのドームは、机のレバーで、回転するようになっていた。
「これが、望遠鏡だ」
「こんなに小さいんですか。僕が生まれて初めて買ってもらった望遠鏡によく似ています」
彼は懐かしく思った。毎晩、夜遅くまで新しい星を探すために熱中した青春時代。やがて、市販のそれでは不可能なことを悟り、大学に入学、研究に没頭する毎日。だんだんと本来の意味は薄れ、漠然と作業を繰り返すようになった。
「博士は、論文を作成されるんですか。これならば、新しい星を見つけるのは、さぞかし容易でしょう。幾億の論文が書けますね」
「世の中、そううまくいかないものだ。覗いてごらん」
博士に促されるままに、望遠鏡をのぞいた。そこには、真っ白な世界が広がっていた。どこを覗いても、真っ白に強く輝いている。これは、星の輝きだ。
「この世には数えきれない星がある。一度にすべてを覗こうとすると、塗りつぶされてしまうくらいに。これでは、星を判別することは出来ないな。君、研究とは地味なものだよ。簡単にしようとすると、なにか落とし穴がある。うまくできているものだ。そこをどうにかしようと試行錯誤するのが面白いのだがね」
宇宙一の望遠鏡 高黄森哉 @kamikawa2001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます