エピローグ
十二月に入った。
あれから何度か麗華が俺の前に現れてはきたが、生産的な会話は出来ていない。俺に謝ろうとしているのは立ち振る舞いから感じ取れたけれど、プライドの高い麗華にはその一歩が重たいように見えた。
もっとも、俺こそ麗華には謝らないといけないことがある。
面と向かって話し合う機会があれば思いっきり頬でもビンタしてもらうとしよう。それで許されることではないと思うけど……。
風の噂で聞いたが、天草先輩は麗華から拒絶されたそうだ。それ以降、麗華には近づいていない。良い人ではなかったが、俺との約束は守ってくれたらしい。
たまに全校集会とかで見かける天草先輩は、優等生でみんなに好かれる理想の生徒会長そのものだ。隠れてまた誰かを狙っているかもしれないが、それは俺の知る由ではない。
そして山野はといえば……。
「塩見くん。私たちの関係ってなんなんですか?」
ベッドで一緒に横になりながら、山野が不意に訊ねてきた。
「なにって……ただならぬ関係?」
「そういうことを訊いているわけじゃないです。そろそろハッキリしてくれてもいいんじゃないでしょうか」
ジトッと半開きの目で俺を見つめる山野。
俺と山野の関係はあれからも続いていた。
俺の脅しが効いたのか、天草先輩は山野から手を引いているし。俺と麗華の恋人関係は実質的に破綻している。
この現状を浮気と片付けるには、いささか強引だ。
「でもまだ、麗華と正しく別れてないし、この状態だと二股になるんじゃ……」
「今更何を言ってるんですか塩見くんは」
「浮気はダメだけど二股はもっとダメだと思うんだ。二股のがクズな感じがする」
「どっちもクズですよ。誤差だと思います」
確かに、どっちもクズなのは間違いないな……。
「もういいです。変なこと聞いてすみませんでした」
「ちょ、おい山野。機嫌崩すなって」
布団を目深に被り、不貞腐れたように鼻息を鳴らす山野。
俺は困ったように頬を掻いた。
あと何週間かすればクリスマス。
どうせなら、その日に合わせて気持ちは伝えようと思っている。
それにやっぱり、麗華との状態はハッキリさせた方がいいしな。
近いうちに彼女とは決着をつけようと思っている。だからまぁ、そうだな。
……もう少しはクズなまま、山野との関係を続けていこうと思う。
【完】
カノジョに愛想を尽かしたので、クラスで目立たない地味な女子と浮気始めました ヨルノソラ/朝陽千早 @jagyj
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます