最終話「犠牲の増加と裏切り者」

あれから何時間経っただろうか。僕とナナミは

たまたま開いていた部屋に逃げ込み、震えながらも恐怖を凌いでいた。

ふとスマホを見ると、時刻はもう16:00を指している。

一応電波は届くみたいだが、外部と繋がれないから助けを呼んでも意味が無い。


ソラ「一体どうすれば......」

ふと呟いた時だった。


【♪〜♪〜♪〜♪〜】

スマホの着信音が部屋に響く、発信先はカナタ

だった。


ソラ「カナタ!?」

カナタ「ソラか!怪我はないか!?他の皆はいるか?!」

ソラ「落ち着いて。僕とナナミは無事だよ。でも...ユイが......」


僕はナナミとユイが謎の黒い化け物に襲われたこと、ユイがそいつに殺されたことを話した。


カナタ「マジかよ...。っと、あんまデカい声出してる場合じゃねぇな...」

ナナミ「どういうこと?」

カナタ「ナナミか。なぁ、お前らの見た黒い化け物って他にどんな見た目してたか覚えてるか?」

ナナミ「分からないよ!私もユイも逃げるのに必死だったからあまりハッキリ見れてないし...でも、とにかく真っ黒だったんだって」

カナタ「なるほどな...」

ソラ「それがどうかしたの?」

カナタ「いや...今ちっと面倒な事になっててな......。今俺のいる部屋の外にがいるっぽいんだ」


ソラ&ナナミ「!?」

カナタ「ぐじゅぐじゅと気持ちわりぃ音を立てながら廊下をウロウロしてる。こうやって電話できる以上、聴力は悪ぃようだが、どうも目が良いみたいでな...見えないような廊下のうんと向こうにいても気づかれた」

ソラ「そっか...」

カナタ「お、いなくなった...か??」

ソラ「カナタ、そっちに向かおうと思うんだけど、いけそう?」

カナタ「多分」

ソラ「分かった。じゃ今からそっち向かう。GPSは確か付いてたよね?」

カナタ「ああ、大丈夫だ」

ソラ「おっけ。それじゃまた後で」

カナタ「気をつけろよ」


そうして僕は電話を切るとナナミに声をかけた。

ソラ「ナナミ、カナタと合流しよう。この先何が起こるか分からない」

ナナミ「わ...分かった」


僕とナナミはスマホのGPS機能でカナタと合流する事にした。待ち合わせ用に使っているアプリが、こんな所で役に立つとは思いもしなかったけど、緊急時である以上仕方がない。


発信されたGPSを辿っていくと、パッと見周囲と変わらないようなデザインの部屋のドアの前に辿り着いた。


トントントン


ソラ「カナタ!いる?」


僕はドアをノックして声をかけた。でも、返事も何も無い。


ナナミ「ねぇ、ホントにここなの?」

ソラ「GPSはここを示しているし、さっき電話してた時も同じ場所だった。だから多分疲れて寝てるんじゃないかな」


根拠があるかどうかも分からない話だが、とりあえず中に入ることにした。どうやら鍵はかかってないみたいだ。


ソラ「カナタ!大丈夫?怪我とかしてな...!!」


そこにはカナタらしいカナタの姿はなく、ユイの時と同じズタズタに斬り裂かれて血まみれのカナタの死体があった。


ナナミ「そんな...さっきまで普通に電話してたのに...もう嫌...!」


ついに耐えきれなくなったのか、ナナミが泣きだした。


ソラ「ナナミ、落ち着いて。とりあえず脱出方法を探そう。どこかに何かヒントがあるかもしれな"っーー」


突然胸の辺りで刺されたかのような激痛が走った。ふと視点を変えると、僕の胸には鋭い刃物が刺さり、僕の前で泣いていたナナミは不敵な笑みを浮かべていた。


ソラ「な...んで...?」

ナナミ「...どいつもこいつも私達家族の生活に土足で踏み込みやがって......憎い...憎い...!」

ソラ「家族...一体...どういう...」

ナナミ「あーあ、アンタってホント鈍感ね。冥土の土産に教えてあげるからよく聞きなさい。」


そう言うとナナミは口を開きはじめた。


ナナミ「屋敷の外にあったあの青い桜。あれは

私の『母』なの。100年くらい前に当時の街の人々が母を生贄にして、あの桜の人柱にした。私は母を生贄にしようとする人々が許せなかったから必死で抵抗したけど、その時に殴りに殴られて私も死んじゃって。幽体になっても成仏できないのは、ここでの暮らしを離れたくないから...」


だんだんと意識が遠のく中で、ナナミは淡々と自分の身の回りの事を話す。まさかナナミがとっくに死んでいたなんて......。


ナナミ「でも人は本当にしつこくて、憎たらしくて、敷地に馬鹿みたいに踏み込んでくる...。だからそんな人々を次々と閉じ込めて...殺したわ」


(そんなことがあったなんて......駄目だ...もう意識が.........。)


ナナミの話を聞いている間にも出血はどんどん増えて、僕はもう限界を迎えようとしていた。

そしてとうとう意識が飛び、死んだーーー。



あれから帰ってこない僕達を心配した家族が警察に行方不明届を出し、捜索をすることになったが、一向に見つからず打ち切りとなってしまった。




青桜の話には触れてはならない。

触れればたちまち、それに宿る御霊の怒りを買ってしまうからーーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青桜(せいおう) 〜その桜に触れてはならない〜 白玉 @Siratama85

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ