(追記)エピローグのようなSS
「ようこそ。待ってたわよ、和博クン」
「えっ? 和博クン?」
呼び出されたので美和の家に来てみると、親しげな歓迎を受けてビックリする。
しかも服装は、胸元が緩めのタンクトップに、下は以前拝ませてもらったデニムのミニスカート。
そんな美和が、僕のことを『和博クン』なんて呼ぶから胸が高鳴りだした。
落ち着け、僕。この自意識過剰のせいで、あんな大変な思いをしたんじゃないか。でもまぁ、毎晩思い出しては活用してるぐらい、いい思い出になったけど……。
「今さらなにを驚いてるの? とっくに名前で呼び合ってたじゃない」
「確かにそうだけど、それは文鳥の時だったから……」
「そんなことより、入って、入って。今日こそ物理のお勉強を教えてもらうために、和博クンを呼んだんだから」
僕が玄関で靴を揃え終えると、美和はスタスタと自室のある2階へ上がっていく。
慌てて美和を追いかける僕。なにしろ今日の美和は太ももも露わなミニスカート。階段を上る彼女を軽く見上げるだけで……。
――ほら、薄い水色のレースのパンティ!
僕は思わず唾をゴクリと呑み込んで、その魅惑の布切れを凝視する。
「外は暑かった? 和博クン」
「はっ、はぃっ」
「どうしたの? そんなにうわずった声を出して」
「えっ、あっ、いや……緊張しちゃって……」
本当は美和のパンティに見入ってたせいで、意表を突かれただけ。それにしても、もう少し上手い嘘をつけよ、僕……。
だけど美和があまりにも無防備で、動悸が収まらないのも事実。そういう意味じゃ緊張してるっていうのも嘘じゃない。
「そんなに緊張しなくてもいいわよ、両親なら海外旅行中でいないから」
なに、その二人きりを強調するような言葉。ひょっとして誘ってんの?
そんな言葉を告げられたら、余計に緊張感が高まって……。いやいや、だからその自意識過剰が……以下省略。
どうせ今日僕が呼ばれたのだって、最初にここへ来た時みたいに、博美との親睦を深めるための当て馬に決まってる。
「そういえば、博美はまだ来てないの?」
「どうして博美の名前が出てくるの? 呼んでないわよ、今日は」
「えっ? どうして?」
「どうしてって、私がお勉強を教わりたいのに、博美を呼ぶ必要なんてないでしょ」
「そっ、それもそうだね……」
ヤバい、心臓がバッフンバッフンと激しく暴れ出した。マンガの誇張表現みたいに今にも胸から突き抜けそう。
そしてポケットに手を突っ込んで押さえつけないと、美和に体の異変を見つかってしまいそうだ……。
「さぁ、どうぞ入って。私は紅茶を淹れてくるわね」
「い、行ってらっしゃい」
まるで、最初にここへ来た時を再現するかのようなシチュエーション。
いや、今日は博美が来ないから、あの時以上に緊張している。
興奮を落ち着かせるために室内をキョロキョロ見回してみると、僕の目に入るのは思い出の掃除機やぬいぐるみ、そして美和とキスをしたベッドなどなど。
変わらない風景にエロい思い出が呼び起こされて、僕は余計に興奮してしまう。
でもあの時とは違って、ベッドの脇にある銀の鳥かごは空っぽになっていた……。
「お待たせ。さぁ、クッキーを摘まみながら、お勉強を始めましょうか」
「はっ、はぃぃっ!」
思わず悲鳴のような返事をしたのは、美和が僕のすぐ横に座ったから。
肩が触れ合う距離感に、僕の興奮は一瞬たりとも収まらない。
ローテーブルの下には、スカートがずり上がって露わになっている太もも。
ツヤツヤの長い黒髪を美和が掻き上げると、視界に飛び込んでくる腋の下。
そして緩く開いた胸元からは、豊満な乳房の膨らみが柔らかそうに覗いている。
ああ、そんなに前傾したら、もうちょっとで色が変わる先端が見えそう……。
「そうだ、和博クン」
「はっ、はぃっ、なんでしょうか!」
美和が僕に振り返って、上目遣いで見つめながら呼びかけた。
目に力を籠めておっぱいを覗き見ていた罪悪感と、突然視界に入った美和の美しい顔に見とれて、またしても声がうわずる。
すると美和は口角を上げて笑みを浮かべながら、僕に顔を寄せて囁いた。
「ふふふっ……ひょっとしてあなた、興奮しているの?」
「いっ、いやっ、別に、そんなことは……」
大嘘だ。今の僕は、美和の着替えを覗き見た時や、一緒にお風呂に入った時よりも興奮しているかもしれない。
だって、あの時はぬいぐるみや、博美の体だったから……。
素の【久山和博】として、美和をこんなに近くに感じたのは初めてだ。
「ねぇ、和博クン。キスしましょうか」
「えっ?」
身体の入れ替わりのドタバタ劇も文鳥がいなくなって終息したのに、美和の方からキスを迫ってくるなんて……。
まさか美和って、僕を好きになったんじゃ……?
僕が調子に乗った考えを頭に浮かべた瞬間、美和がニッと笑って手を突き出した。
その手が摘まんでいたモノは……。
――真っ白な鳥の羽根。
「昨日掃除をしていたら、これを見つけたの」
「それって、まさか……文鳥の羽根?」
「ねぇ、和博クン。私と入れ換わらない? 実は男の子の体に興味が湧いちゃって、あの感覚をもう一回味わってみたくなったものだから……」
あの感覚ってまさか……。
美和がそのつもりなら、僕だって同じことをしても構わないよな?
結局僕は、女の子の快感を味わえずに終わったから、これは再び訪れたチャンス。しかもそれが、美和の体なんて願ってもない話だ。
恋愛感情のキスじゃないのは残念だけど、拒む理由がない僕はコクリとうなずく。
少しずつ迫って来る美和の唇。僕も唇を震わせながら顔を寄せて……。
するとその時、部屋の外からドスドスという力強い足音が聞こえてきた。
「和博、あんたこんなところで何やってんの!」
「な、何って……美和が勉強を教えて欲しいっていうから……」
「まったく、なんの勉強よ。保健体育なの? そんなに身体を寄せ合って!」
博美の物凄い剣幕に、美和は慌てて僕と距離を取りながら尋ねた。
「博美はどうして、ここに和博クンがいるってわかったの?」
「メッセージを送っても既読スルーだし、家に行ったらおばさんが『和博なら勉強をするって、友達の家に行ったわよ』って言うから、ここに来てみたのよ」
「だからって、どうして私の部屋まで――」
「鍵が掛かってなかったからドアを開けてみたの。そうしたら、玄関にこいつの靴があったから、悪いと思ったけど上がらせてもらったのよ」
美和の言葉を遮りながら、大きな声でまくし立てる博美。
そして次の瞬間には僕は腕を掴まれて、強引に部屋から連れ出されていく。
えっ? えっ? これって修羅場?
「ほら、和博、帰るわよ!」
「ちょ、ちょっと……」
せっかくいい雰囲気だったのに、美和の部屋を後にする羽目になった僕。
その背後からは「チッ」という、美和らしからぬ舌打ちの音が聞こえてきた。
文鳥の羽根がまだあったってことは、この先もひと波乱ありそうだ。
だけど、常に部屋を綺麗にしている美和が、昨日まで文鳥の羽根に気付かなかったなんて信じられないな……。
――チチッ、チチッ……。
帰り道の空を見上げると、見覚えのある白い鳥。
くちばしの赤いその鳥は、僕を見下ろすように上空を旋回している。
何かに憑依してたときなら言葉を理解できたかもしれないけど、今の僕にはただの鳥の鳴き声にしか聞こえない……。
『もしもこの作品を読んで楽しんでもらえたんなら、ぜひとも♡や☆をクリックして評価してやってくれねえかな? どうやらそれが、作者の悦びらしくてよ』
上空でひと鳴きすると、その鳥は空の彼方へと飛び去って行った。
『あばよ。また再会する奇跡でもあったら、そんときゃよろしくな……』
ツキまくりトライアングル ~恥ずかしいところを見ちゃってごめんなさい。今日から始まる僕の憑依生活 大井 愁📌底辺貴族の雑魚悪役 @ooisyu
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