そして、美しい気持ちになるような・・・
謎めいた物語です。「月姫」という――見え隠れする「竹取物語」とのリンク、されどわれわれの知る「なよ竹のかぐや姫」が出て来るのかというと、そうとは限らないところがスリリングでミステリアスです。「月姫」とは何なのか。それがうつくしい文章でつづられていれば、なおのこと――よりうつくしく輝きます、あの夜空の月のように。ぜひ、ご一読を。
詩的な文章で、うつくしく古典的な雰囲気の漂う物語が紡がれています。不思議な世界にするりと入り込み、気づけばそこで息をしているかのようなそんな気持ちになります。結音さんのリズムのあるきらきらした文章で静かに白く光る世界が描かれて、うっとりとしてしまいます。
中秋の名月。満月と重なるとき、月から迎えがやってくる。月の姫が月へ帰った日、これを迎えるかのように物語が優しい文体として紡がれる。池は、鏡のように月を映して、静謐な時を迎える。今宵、月からの迎えがやってきて……感慨深く奥ゆかしい筆致が、どこまでも心地よい作品です。