奇妙な果実は実らない ⑥

 起きると火車が夢魔を喰っていた。死体が吊るされている蔵の中で死体を貪っている。僕も話せる程度には回復していた。焼き切れた舌と喉が回復する。

「血がたりない」

 貧血で倒れそうだ。

「仕方ねえな」

 と、火車は首を差し出してきた。僕は宝物に触れるように首に触れ、噛みついた。

 火車の血を吸うといつもあの夜の日を思い出す。


 研究所が破壊された夜。僕と火車だけが残されたそこで語り合った。

「何でお前は逃げなかった?」

「火車が逃げないからだよ」

「気持ち悪いな」

「火車だけが僕の生きる希望だった」

「お前は何をやっても死なねえじゃん」

「散々斬られて、刺されて、潰されたからね」

「ここを出たら美味い飯でも喰いてえな」

「外には美味しい物もいっぱいあるらしいよ」

「何で知ってんだよ」

「大人がそんな話をしてたから」

「どうやって聞いたんだ?」

「霧になって」

「化け物かよ」

「化け物だよ」

「お前と2人っきりだと気が滅入る」

「ぼくは嬉しいよ」

「気持ち悪い」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

地獄めぐり あきかん @Gomibako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る