百合の間に挟まりたいとか言っていた弟に彼女ができて俺の恋心はいったいどうなるんだって話だよ
白川津 中々
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怒りは天を突き悲しみの涙で海ができた。
目に入れても痛くない、とんでもなく可愛くてごめんな弟のハルト君に女などできやがったのだ。これが許せるか? 許せぇよなぁ! あの女を殺さなけりゃあよぉ? 気が済まねぇってもんだよなぁ!?
「カイ君今週のジャンプ見せて」
「あ、ハルト君! 部屋入る時はノックしてノック。ジャンプね! はい! あ、あと、今週トガヒミコ死ぬよ?」
「ちょえ? それガチ? 俺の好ハオが死ぬの?」
俺の好ハオは君だよハルト君。
「なんてこったい! こりゃもう推し変するしかねーな。じゃ、借りてくね」
「あ、ここで読まないのかい?」
「うん! 部屋で読むよ!」
「そっか」
どうしてお部屋に帰っちゃうんだろう。昔はいつも一緒にいたのに。もう、君と一緒に夕日を見る事はないのかい。なんて寂しい俺。この寂しさを紛らわすために、とりあえず仕掛けた盗聴器でハルト君を側に感じよ! どれどれ……
「ヒカル! ジャンプ借りてきたよ! ビデオ通話にするね!」
「一緒に漫画読むの楽しいねぇハルト君」
ハルトてめぇ! メスに見せるために俺のジャンプを!
……一旦落ち着こう。
そして考えよう。あのメスを法に引っかからずに始末する算段を。
事故死に見せかけるか? 「ハルト君の兄でーす」みたいな感じ東尋坊か華厳の滝にでも連れ出して事故死に見せかけるか……いや、リスクがデカイ。観光地で殺すとか目撃証言が出るに決まってる。家に招いて毒殺……そんな即効性のある危険物どうやって入手する気だ。ダークウェブに潜って殺し屋に……くそ、金が足りねぇ!
「駄目だぁ!」
思わずシャウト。盗聴器から俺の声が反響してきてハルト君とゲロブスがクスクスと笑っている。ハルト君はいい。だがヒカル。てめぇは駄目だクソボケェ……畜生……どうしてこうなった……ちょっと前まで「百合の間に挟まれてぇ」なんて言ってたから絶対女なんてできないと思っていたのに……もっとちゃんと管理教育しておくべきだった……うん? 百合?
天啓。閃き。インスピレーション。浮かんだ名案。迸る脳汁。気が付いた。思いついた。最高の策が、孔明もビックリの知略がひょっこり現れた! 銀行アプリを確認! 残高は三百(万円)……OK! パスポート……OK! 今日の便は……OK! 予約は……OK! Excellent! 天が俺に味方しているかの如く障害がまったくない! グリーンライトで即行即決! よし行くぞ……タイに! なんのためにって? 性転換手術に決まってんだろボケェ! 俺が超魅力的なお姉さんになってアノゲロブスメスガキを百合堕ちさせた後! こっ酷く振ってハルト君にアプローチ(性的)をかけるためだぁ! 性欲真っ盛りな年頃男子が大人のお姉さんの魅力に抗えるはずがない! なんてこった完璧すぎるぞこの作戦! 今からハネムーンが楽しみだぜぇ!
「でも、ヒカルがいてくれよかったよ。僕、ずっと悩んでたから」
おっとイヤホンから部屋の会話が聞こえてきたぞ。いてくれてよかったか……その気持ち、三か月後には真逆になっているぞぉハルト君!
「僕もだよハルト君。お互い男の子が好きなんて、周りには言えないよね」
ヒカル君! てめぇは喋るな!
……なんだって?
え? 待ってくれよ。ヒカル君って男だったの? ちょっと聞いてみよう。
「ハールートー君! ハルト君! 聞こえるかーい!」
「あ、うーん!」
「あのさー! 君ー? 彼女できたって言ってたじゃーん!」
「え、うーん……」
「それってさー? 女の子って事でいいんだよねー?」
「……」
「あ、ごめんごめーん! 変な事聞いたわー!」
「ううん、大丈夫ー……」
「それじゃあねー!」
「うーん……」
……性転換は取りやめだな。
よっし、実力でハルト君を寝取ってやろ!
百合の間に挟まりたいとか言っていた弟に彼女ができて俺の恋心はいったいどうなるんだって話だよ 白川津 中々 @taka1212384
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