⑨新設部隊
最近入隊した新人が憲兵4人を相手に無傷で圧勝してしまったという噂は国内の役人に一瞬で広まった。
その噂は国王の耳にも入ったため、コワビ国王は獅子尾を一目見たいと言い出した。
王への謁見は入隊してからわずか数日後の事であった。
獅子尾は謁見に際し、この国の現状や周辺国家の状況を憲兵隊長から事前に聞きとり、その内容を踏まえてコワビの防衛に必要な事項をリストアップした。
憲兵だけでは国の防衛は賄いきれないことから新しい部隊の設立を王へと具申すると、国王や大臣連中も危機感を感じたようで新設部隊の話はトントン拍子で進んでいった。
その結果、獅子尾は憲兵隊の改編と新設部隊設立のための特別顧問として国王直属の兵士として雇用されることになった。
「まさかこんな事になるとはなぁ」
王への謁見が終わったあとの獅子尾は全身から気力という気力が抜け切っていた。
手始めに獅子尾は憲兵隊の改編に着手した。
今後の憲兵隊は国内の治安維持にのみ注力してもらう。となると、現在の憲兵隊は人が多すぎるためある程度の人員は新設部隊の方へと異動してもらう。
この事を憲兵隊内にて発令すると古参兵からのバッシングが至る所で起きた。
しかしながら、着隊初日に4人の憲兵をノックアウトした事と俺が神世の祠からやってきた異国の軍人という噂が兵士の間で広まると誰も文句を言わなくなった。
こちらとしても何とか穏便に事を済ませたいし、憲兵たちに不利益がないようにしたいということを説明していくと部隊改編の波は徐々に強まり始めた。何とかお互い納得ができる落とし所を見つけるため協議に協議を重ねた結果、古参兵たちが提示した条件とこちらが出した条件の折衷を図ることで改編に賛同してもらえるようになった。
大半の兵士たちから改編への理解を得られた頃から新しい隊舎の建設を始めた。
徴兵された男たちの中には土木や建築に精通している者が数多くいたため、彼らの設計と指示の元で新設部隊の隊舎と生活隊舎を新しく建てることができた。
建物が完成する頃には新設部隊編成の目処がついた。
王国憲兵隊は王国内の治安維持という重大な役割があるため組織は解体をせずに規模を縮小し、憲兵隊がこれまで担ってきた国土防衛については新編部隊が担任する。徴兵された者と新入隊員の訓練についてもこの部隊が行う。
こうして王国憲兵隊から派生した王国守備隊が誕生し、俺の新しい職場となった。
時代遅れの鬼軍曹は転異先でも新兵をシゴいています。 @mugimugi1002
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