巨根と謁見

ワイバーンさんが去って落ち着きを取り戻した夜の街はその後、お店に戻る雰囲気にもならなかったようで冒険者の皆もそのまま宿へ帰っていってしまった。


気づけば周囲は俺とエリスちゃんのみである。


エリスちゃんは俺の方を見ながら

「今夜は色々と変な出来事が多すぎたわ。私はこれから一応城に戻って国王たちに先ほどの件を報告しなきゃだわ。」

とかなんとか言ってお城の方に向かって歩き出してしまった。


「あぁ、そうだ。」


かと思いきやすぐに俺の方に振り返って付け加えるように述べた。


「貴方、しばらくはこの街から出ないほうがいいと思うわ。その体質、見る人によっては即不審者というか、危険人物として処理しかねないわ。先ほどのお店での騒動を見てる冒険者たちが貴方の事を証言してくれるだろうけど、一応私も外部から貴方の事が話題に上がったらかばってあげるわ。」


「え?いいんですか?」

意外なフォローが来て結構驚いた。

さっきまで俺の事をあれだけ睨んで切りかかった狂人の言葉とはとても思えない。


「私もちょっと申し訳なく思ってるのよ。貴方の事をゴブリン扱いしちゃったことも貴方に切りかかっちゃったこともね。」


申し訳なさそうな表情で笑いながらそう言うエリスちゃんはきっと心の底からいい子なんだと思う。


「そういう事であれば、はい、しばらくはこの街にいさせてもらおうかと思います。」

「そう、ちなみにどの宿に泊まってるの?」

「あ、レストランのすぐ隣に宿をとってます。」

「あぁ、あそこね。分かったわ。」

自分が泊ってる宿を異性に聞かれるとか期待しちゃうわぁ。

もしかして今夜、お城への報告が終わったら俺の部屋に突撃してくれるんじゃなかろうか。

いや、むしろそれ以外に泊まってる宿を聞く理由なんて無いはずだ。


そう考えたらこれはすごい事じゃないだろうか。

昨夜はエメリアちゃんとのセックスチャンス、今夜はエリスちゃんとのセックスチャンス。

しかも今夜は膜付きチャンスである。

エリスちゃんが今まで王族と膜を守り抜いてきた理由を知った。今日の為だったんだな。


「それじゃおやすみなさい。」


エリスちゃんはお城の方に歩きながらそう呟いて行ってしまった。


酔いも完全に覚めてしまい飲み直したい気持ちが無いわけでもないが今夜、エリスちゃんが部屋に来た時に酔って記憶を失くしたまま童貞喪失とかどれだけお酒を恨んでも恨み切れないわ。


こうなったらシャワーを浴びて準備万端にして待っておくのが紳士としてのたしなみだろう。昨日はシャワーを浴びてる最中にエメリアちゃんが寝ちゃって童貞を喪失しそこなったんだ。童貞は同じ轍は踏まない。


急ぎ足で宿に戻りそのまま部屋に入ると真っ先にシャワーを浴びた。エリスちゃんと切った張ったのひと悶着やワイバーンさんのブレスを間接的に受けそこそこの汗をかいている。エリスちゃんは処女だからそういう男くさい臭いには抵抗があるだろう。ちなみに初めての本番で緊張してマイサンが暴発しないように三発ほど抜いておいた。


うん、なんとか落ち着きを取り戻してきた。

いわゆる賢者タイムである。


今か今かとエリスちゃんを待つこと約二時間程、全然来る気配がない。

もしかしたらエリスちゃんの報告を受けてお城の中では緊急会議みたいなことになってるのかな。


う~ん。


もう少し待ってみるかな。


更に待つこと約三時間程だろうか、空が明るんできたまである。

白と水色の間、それでも窓から見える遠くの山の奥まで見るとまだまだ暗く見えるような気がしないでもない。


なんでエリスちゃんが俺の部屋に来てくれるって思っちゃったんだろう。

来るメリット無いじゃん。

別にエリスちゃんに好かれるようなことなんて一ミリもしてないわ。

もしかしたら俺の泊ってる宿には近づかないように確認するために聞いたんじゃなかろうか。

うん、そうだよね。

そりゃそうだ。

普通に考えてそうじゃん。

以前の世界でも性犯罪の前科を持ってる人にはGPSを付けてるって国があったもん。誰が性犯罪者だ。

性犯罪を我慢して我慢しての挙句の童貞だってのに。


なんかついさっきまでの自分のポジティブ思考が馬鹿馬鹿しく思えてきたと同時にようやく思い出したかのように眠気が襲ってきた。


「寝るか。」


そうしていつもと変わらずいつも通り、一人寂しくベッドに横たわって眠りに落ちていった。



ドタドタドタドタっ!!!


バンッ!!!


宿の中を大人数の大きな足音で目が覚めたと思ったら今度は部屋の出入り口のドアが勢いよく外側から開けられた。


「冒険者スズキ!貴様には王からの召集がかかっている!直ちに準備し我々についてくるように!!!」


聞き覚えのある声、それもそのはず多くの騎士たちを従えて、先頭に立つのは昨夜今か今かと待ち構えていた女の子、エリスちゃんがそこにいた。


エリスちゃん、俺の宿に来ちゃったよ。


想像の斜め上を行く形でご訪問くださったエリスちゃんからはセックスのお誘いの雰囲気は一切感じられなかった。昨日と打って変わって近衛騎士たる装備である。この地に降り立って最初に見たときと同じ装備で再び俺の前に現れた。


「エリスさん、これは一体何でしょうか。結局私は討伐対象になったとか?」


ゴブリン討伐を取り消してもらえなかったのかな。賞金首になっちゃったのであればもうどう逃げようか考えるしか方法ないじゃん。


「貴様に質問する権限も、私に回答する義務もない。私の仕事は貴様を王の前まで連れて行くことで貴様の仕事は王への謁見となる。」


淡々と用意されていたかのように答えていくエリスちゃんの表情には何も感じられない。完全にお仕事モードである。


はぁ、毎日毎日この世界は何かしらイベントが起きるから飽きないわ・・・。

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転生したらブサメンのまま巨根にさせられた話 マダガスカルゆみこ @hatabow0721

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