第21話 ニホンカワウソ、現代に蘇る!?

第21話


「藍月、ここら辺か?」


ひょうすべと戦った日から2日経ったとある日、俺と片車輪は山の中へと怪異を探しに来ていた。


そして、藍月が示す場所まで辿り着くと、其処には綺麗な川が流れていた。


────マジで綺麗だな、都会の川とは大違いだ。


『そうだな、ここら辺だ………』

『川辺か、またひょうすべか?』


ひょうすべって、こんな所にも居るのか?


戦えるのは嬉しいが、正直もうあの病魔水はちょっと浴びたくねぇなぁ………


いや、好き勝手にして良いんだから、別に気にしなくても良いのか。


浴びても、竜崎に治して貰えば良いし………


『お前が件の咎人か………』

「成る程、お前が此処に居る怪異か!!」


其処には、光沢感のある茶毛のイタチみたいな奴が立っていた。


いや、コレはイタチというより………


「カワウソか!?いや、マジでカワウソ!!??まだ存在したのか………」

『川獺、か………確かに藍青の言う通りだな。』

『何?どういう事だ、藍青?」


カワウソ………ニホンカワウソは既に絶滅してるんだよ。


────主に、人間の手によって。


『それは………』


本当にびっくりしたわ………


まぁ、驚いただけで別に戦えるなら気にしなくて良いか。


『えぇ………』

「ん?どうした、藍月?」

『いや、何でもない………』


何だよ、その反応………


『そうだな、普通の動物である我が同族は死滅した。残っているのは、我等の様な怪異としての川獺だけだ。』


へぇ、そうなのか………


なら、ツツガムシも虫と怪異の両方が居る感じになってるのかな?


『虫のツツガムシも居るのか?』


らしいぞ、藍月。


今は怪異のツツガムシが引き起こしてたとされてる物は、全部虫のツツガムシのせいだとされてるんだと。


『思う所が無い訳ではないが、基本的に文句は言わん。弱き同族が負けただけの話だ。敗者に口無しと言うだろう?それに、お前等は同族の怨念を一生背負う羽目になったのだ。それだけで我等は満足よ。』


へぇ、そんな物なんだな………


怖い考え方も見え隠れする辺り、恨み自体は少し有りそうだが、良い考え方だと思う。


色々と面倒じゃないからな………


『────御託は此処までにしよう。構えるんだ、咎人。此処から先は、唯の殺し合いが始まるぞ。』

「ああ、そうだな………妖着!!」


片車輪を纏い、カワウソと向かい合う。


マジマジと見ていると、カワウソの強さがヒシヒシと伝わってくる。


間違いない、コイツは前に戦ったひょうすべよりも強い!!


ああ、愉しくなってきた────


『行くぞ、咎人!』

「『来い、カワウソ!!』」


☆☆☆☆☆


『水刃招来‼』

「『炎陣八つ裂き大車輪‼』」


水の刃と、炎の鋸がぶつかり合う。


その度に蒸気が発生し、周囲は湿気で満ちてきて不快感が最高潮だ。


「『くそっ、蒸し暑いな………』」

「そうか?俺には暑い以外は快適だ。」

「『水棲生物だもんな、お前は!!』」


コイツ、遠近両方に隙がねぇな!!

速さは俺の方が上だが、力や硬さはアイツの方が上だな………


実際、俺の攻撃は遠近両方とも奴に当たっている。


だが、あの艶が凄い毛皮が全てをいなし、受け流していく。


少しは痛がるフリでもしてくれよ………


『ふむ、その速さを何とかしないと、此方の攻撃は当たらないな………』

「『当たっても無意味なお前に言われても皮肉にしか聞こえねぇぞ!!』」

『そう怒るな、この毛皮による護りも絶対ではない。そもそも、効いてない様に見せてるだけで、全ての衝撃を受け流し切れている訳でもないしな………』


はっ、本当なら凄いポーカーフェイスだな!

まぁ、流石に川獺がそんな強い能力を持っている訳が無いからな………


『故に、その速さを封じさせて貰うぞ。喰らえ、水檻!!』

「『なっ、一瞬で水の檻を────』」


このままじゃ囚われちまう!?

どうする、藍青?


はっ、答えなんて決まってるだろ‼

ふっ、愚問だったな………


「『炎纏・爆爪輪!!』」


一点突破でぶち破る‼

一点突破でぶち破る‼


『なっ、簡単に我が檻を破るか!?』

「『これならどうだ、カワウソ!!』」

『がはっ────』


炎の爪がカワウソの胴に直撃し、奴は派手に吹っ飛んでいく。


くそっ、貫けなかった………

厄介だな、あの毛皮………


でも、焼く事は出来たな。

だな、今までの中で1番ダメージを与える事が出来た様だぞ?


『ぐっ、コレが炎に焼かれる感覚か。勉強になったぞ、咎人………』


焼かれた部分を押さえながら、カワウソは立ち上がる。


まだまだ倒れそうにねぇな………

成る程、面倒だ………


でも、そうじゃなきゃ、愉しくないよな!!

はは、藍青の言う通りだな!!


『このままじゃ、負けるのは俺か………』


────笑った?何でだ??

藍青、気を付けろ!!何かする気だ!!!


『片車輪の言う通りだ、別の奴が居る!!』


藍月の言葉が響いた瞬間、俺の両腕が急に動かなくなった。


「『なっ、コレは!?』」


よく見ると、俺の両腕には糸で縛られていた。


くっ、全然千切れねぇ!!

ちっ、隠れてる奴はカワウソじゃないみたいだな!!


『だから、俺の土俵に引きずり込む。すまないな、咎人。』


続く


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傷付いた狐娘を助けたら、化け物になってしまった件〜気が付いたら第3勢力扱いされていました〜 クロスディアⅡ @crossdia

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