第1章 ⑤激流の水槍 カワウソ

第20話 竜崎の力と次の怪異

第20話


「ふふ、どう私の術は?」

「はいはい、凄い凄い。何回目だよ、その質問は………」

「何回でも褒めて貰いたいからよ!」

「さいで………」


あの後、色々と竜崎に教えて貰った事を要約すると………


「私は無月家の分家出身なんだけど、その中でも落ちこぼれの木端。」

「唯一使えるのが、他人や自分を癒す回復術なんだけど、それも相性の良い人にしか使えない(主に家族)。」

「なので、ほぼ雑用係を押し付けられてた。最近は雑用ですらない仕事を押し付けられてうんざりしてたし………」

「でも、ある日偶然にも俺と相性が良い事が理解わかったから、治せた。」

「陰陽集に使えるのもウンザリだし、コレからは藍青の為にこの力を使うわ♪」

「だから、住まわせて♪ねっ、お願い♪」


────との事だ。


「────ボソッ、それしか出来ない癖に。」

「あら、何か言ったかしら使用人さん?」

「いえ、何も言っていませんよ?もしかして、その齢でお耳がおボケになられたのですか、居候さん?」

「「ふふふふふふふふふふふふふふふ。」」


こ、怖い………


片車輪の時は全く反対してなかったのに、何故か狐は竜崎に対して当たりが強い。


そして、竜崎の方も何故か狐に対して煽る様な事を言い始める始末だ。


一応、これから一緒に住んでいくんだから、仲良くして欲しいなぁ………


『う〜ん、良い熱だ。少し湿気てる気もするが、コレはコレで………』

「お前は何の熱を食べてるんだ、片車輪?」

『ふふ、今のお前には理解わからない物だよ。』

「何だそりゃ?」


煙に巻きやがって………


色々と不安だよ、全く………


『自業自得だ、噛みしめろ。』


藍月、お前もか!?


「まぁ、この躾がなってない駄狐系使用人は放っておくとして、藍青!」

「ん?何だ、竜崎?」

「コレだけは言っておくわね。幾らでも好きに暴れて良いわ。でも、約束して。どんな事になっても、此処にちゃんと帰って来る事!そうすれば、貴方のどんな傷も病も治してあげるから♪」

「────ああ、約束する。」


うん、良い。


それは実に良いな………


安心して好きに暴れられるのは、俺にとって最高のシチュエーションだ。


「頼りにしてるぜ、竜崎。」

「ええ、任せなさい藍青!」

「わ、私も!私も頼りにしてくださいね、お兄さん!」

「お、おお。頼りにしてるぞ狐。」


きゅ、急にどうしたんだ、狐?


そんなに勢いよく割り込んできて………


「ボソッ、戦えない癖に────」

「それは貴方もでしょう、竜崎さん?」

「少なくとも、貴方よりはマジですぅ!!」

「「はい?」」


ま、また喧嘩し始めたよ、コイツ等………


「仲良くすれば良いのにな………」

『無理だろ。』


即答しないでくれよ、片車輪………


☆☆☆☆☆


???side


「う〜ん、良い。凄く良いよ♪』


自ら雨乞いが出来るひょうすべをいとも簡単に倒してみせた手腕。


そして、偶然にも遭遇した敵から逃げ出そうともせずに立ち向かおうとした姿勢。


何より、戦っている時に見せていた全てを愉しんでいるかの様な目!!


『うんうん、流石は藍様に選ばれた器だよ。個人的にも気に入ってきちゃった♪」


なら、より力を入れて向かわせる奴を選ばないとね………


「水を使うというアプローチは正解だと思ったけど、搦手特化だったからなぁ………』


ひょうすべ君は悪くなかったけど、どうしてもパワフルさが足りなかったよね。


かと言って、速さも無いと瞬殺されちゃいそうだし………


『でも、基本的に強い奴は海に行かないと会えないんだよね………」


今の器君に、そこまでは求めていない。


というか、今のレベルじゃ即死しちゃうよ。


「河童を使おうかな?でも、少しありきたりな気もするし………』


それに、河童も河童で色々と種類があるからなぁ………


ミンツチとか、北海道からわざわざ喚ばなきゃならなくなるし………


『川猿は弱いしな………」


アレ、ほぼほぼ動物の延長線上に居る奴等だしね………


ひょうすべ君を倒した器君なら、数を揃えても瞬殺してくるだろうし………


「あ〜あ、良い奴は居ないかなぁ………』


ここら辺に居る水を使える怪異で、良さそうな怪異はっと………


『────あっ、見っけ♪」


良いのが居るじゃん!


でも、あいつ等かぁ………


言う事、簡単に聞いてくれる様な奴らじゃないよなぁ………


どうしようかなぁ………


「決めた!アイツも使おう!!」


これなら、アイツ等もちゃんと器君と戦ってくれる筈だ。


「────ふふ、愉しくなってきた♪」


────頼んだよ、川獺君♪


続く

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