第19話 混じり合う視線/蛟が仲間になりたそうに此方を見ている…

第19話


「『はぁはぁ、誰だ………?』」


視界が霞む………


朦朧とし過ぎて、目の前に居る奴がどんな姿をしているかすら理解わからん。


はは、重症だな………


「『はぁはぁ、でも、愉しめそうだな!!』」

『藍青………』


お前、何を言ってるんだ藍青!?

言葉通りの意味だが?


はぁ!?完全に意識を失う前にさっさと逃げろよ!!

────何でだ?


藍青………?


「『何で逃げる必要があるんだ?』」


こんなにも愉しいのに、何処に逃げる必要が在ると言うんだ、片車輪?


「『炎纏・爆────』」


────アレ?

全く、言わんこっちゃねぇ………


☆☆☆☆☆


???side


「咎人!?な、何でまだ此処に!!??」


運が悪かった、それに尽きる話だろう。


まさか、まだこの辺りを咎人が彷徨いているとはな………


レベル1の村人が、旅に出た瞬間魔王とエンカウントしたレベルの災難だ………


「千翼、逃げろ………」

「えっ、先輩!?で、でも………」

「良いから逃げろ!!足手まといだ!!!」

「なっ────はい。………御武運を。」


はは、祈ってくれてありがとうな。


まぁ、だろうけど………


「さぁ、来い咎人!俺が相手を────」


────「相手をしてやる」、そう言おうとした。


────でも、無理だった。


奴の顔は炎に覆われてよく見えなかったが、一瞬だけ瞳が見えた。


だ………


あの目は、あの目は間違いなく………


「愉しんでる奴の目だ………」


俺と戦える事を心の底から喜んでいる目だ。


あの目を俺はよく知っている………


何度も、何度も見続けた目だ………


「くそっ、くそっ────」


その目を、その目で俺を見るのは止めろ!!


嫌だ、巫山戯るな!!


俺から奪っていこうとしてるのかよ!!


「喰らえ!!黒極・落陰!!」


さぁ、頭を垂れた姿を晒せ、咎人が!!


『無駄だ、陰陽集。』

「なっ!?」


新たな声が聞こえてきた瞬間、咎人が姿を消した。


一体、何処に………


────ああ!!


「仲間が居たのか………」


其処には、咎人を背負った炎を身体に纏う女怪異が居た。


あの変な片輪の台車………まさか!?


「片車輪か!!何故、咎人を助ける!!咎人はお前達、怪異にとっても厄災だろうが!!」

『はっ、普通はな………』

「何!?』

『不可抗力とはいえ、俺達は縁を結んだ。その相手が咎人だったというだけだ!!理由はそれだけで充分だろう?』


んな訳ねぇだろ、意味が理解わからない!!


やはり、怪異に理解を求めるのは間違っていたか………


まぁ、咎人じゃないなら、始末するのは簡単だ。


さっさと殺して、咎人の奴を────


『という訳で俺達は帰る、じゃあな!!』

「なっ、待ちやがれ!!」


あの片車輪、速過ぎだろ!?


前に殺した片車輪はあんな速さしてなかったぞ!!??


「………ちくしょう。」


完全に振り切られた俺には、虚しさしか残らなかった。


巫山戯るな、巫山戯るなよ………!!


「はぁ、報告に行くか………」


終わったら、彼女に会いに行こう。


俺の事を歓迎してくれるかどうかは別にして、少しでも癒やされたい………


☆☆☆☆☆


???side


『ただいまだ、狐!!早く看病の用意をしてくれ!!』


うぅ、此処は………


「どうしたんですか、片車輪さん?って、お兄さん!?どうしたんですか、その様子は!?」

『怪異にやられてな、当分は休ませてやらねぇと………』


狐と………片車輪の声…………か?


なら、此処は俺の家か…………


俺は一体…………


「ああ、酷い熱!!早く熱冷まシートを取ってこないと!!後、氷枕とかも………」


うぅ、頭に声が響く………


何でこんなに響いて………


「後、後、お兄さんのベットに運んであげないと!!でも、今は竜崎さんが寝てる!!」

『外に放り投げとけば良くないか?』

「それもそうですね♪」


よ、よく理解わからないが、何か駄目な気がするぞ………


「話は聞かせて貰ったわ!!」


こ、この声は………竜崎か?


「全く、また無茶をしたのね藍青………」


う、煩い………


そんな無茶をした覚えは………


「竜崎さん、何をするつもりですか?」

「ふふ、何の役にも立てそうにない葛葉さんは退いてくれるかしら?」

『おいおい、こんな時に修羅場は困るぞ?』


な、何で喧嘩してるんだろう?


どうでも良いから、静かにしてくれ………


「ふん、まぁ見てなさい。ほら、回復ヒール。」

「────あれ?何か楽になった!?」


気怠さとか、頭の痛さとか皆無になったぞ!?


竜崎、一体何をしたんだ!?


「ふふ、どう私の力は?」

「す、凄いな。あ、ありがとう。」

「ふふ、どういたしまして。」

「────ボソッ、唯の回復術じゃないですか。誰でも使える初級中の初級と噂の。」


へぇ、そうなのか………


「残念ながら、違うのよ竜崎さん。まぁ、私が特別なだけだから、気にしなくても良いんですよ、ふふふw」

「はい?」

「あらあら?」

「「グルルルルルルルルルルルルル!!!!」」


な、何で喧嘩してるんだろう、こいつ等?


『お主のせいだな、うん。』


何で!?


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る