第13話 悪役貴族は生を実感する






 剣聖クレナと遭遇した。


 やばい。あの女と遭遇するのは絶対にやばい。


 だって俺、というかイヴは彼女を洗脳し、ベッドの上で鳴かせまくったりしてたのだ。


 うん。

 俺が女の子だったら、絶対に相手を探し出して抹殺してらあ。

 だから俺は冒険者ギルドに入ってすぐ回れ右をし、飛翔魔法で空中ダッシュした。


 ばびゅーんという音が聞こえそうな勢いで、お城に帰った。



「ご主人様、どうかなさったのですか?」


「お顔が真っ青ですよー?」


「え、あ、う、うん。ちょっとね」



 アオイとアカネが心配そうな面持ちで声をかけてくる。


 ……二人には、話しておいた方が良いかな。



「二人共、今から話すことは大事なことだから、ちゃんと聞いてね」



 俺たちは城に入り、程よい広さの部屋のソファーに腰を下ろした。


 このソファーは俺の魔法に偶然巻き込まれなかった代物だ。

 アオイとアカネが使ってたわけじゃないから、埃こそ被っていたが、そこは俺の魔法ですぐ綺麗にしてやったぜ。


 ちなみにベッドやテーブルなど、一通りの家具は至って無事だ。


 俺は二人に前世の記憶を思い出したこと、二人に会う前にやらかしたこと、取り敢えず一通りのことは全て話してみた。


 ……どういう反応が返ってくるだろうか?


 イヴとしてやらかしたことはともかく、前世の記憶云々に関しては笑われるだろうか。



「なるほど」



 アオイが小さく頷く。


 すると、俺の目を真っ直ぐに見つめながら一言。



「つまり、ご主人様を追い出したアインザッツ王国とやらを滅ぼせば良いのですね?」


「え?」


「あらあら、国落としなんて何百年ぶりかしらー? 楽しくなってきちゃったわー」


「ヘイ、ちょっとストップしようや。いや、ストップして」



 俺は二人の唐突な話についていけず、思わず変な話し方になってしまった。



「え、なんでアインザッツを滅ぼすみたいな話になってるの?」


「ご主人様が支配する一国であれば、それは繁栄が約束されていると言っても過言ではありません」


「過言だよ。過言がすぎるよ」


「その約束を自ら溝に捨てる愚かな国の愚かな人民など滅ぼして当然でしょう。そうですね、ご主人が支配するに相応しい国を私と姉様でご用意致します」


「あらー、良いわねー」


「二人の発想が怖い」



 イエスマンって怖い。


 いや、イエスウーマンか? いや、二人はドラゴンだし、イエスウードラゴンになるのか?



「それにしても、その勇者とやらは許せませんね。ご主人様を害した挙げ句、追放するとは。私であればご主人様を神と崇めた上で逆らう愚か者共を粛清しますのに」


「だから怖いって。……むしろ、俺は王国の人たちに悪いことしちゃったって思ってるんだ。だからこれ以上は酷いことしたくない」


「……であれば、私と姉様は何も言いません」



 良かった。

 過激思考のイエスマンは止めたらしっかり止まってくれるんだな。


 それにしても、勇者は今頃何をしているのだろうか。

 国を救って、シナリオ通りに魔王を倒しに行くのだろうか。


 俺には知る由も無いが、勇者が魔王を倒せるように祈っておこう。



「ご主人様」


「うふふ♪」


「ん? どうし――え? な、何? なんか二人とも、急に近くない?」



 ソファーに腰掛ける俺を、両側から挟み込むようにアオイとアカネが近づいてきた。


 二人から甘い匂いがしてドキドキする。



「ご主人様、約束をお忘れですか?」


「あ、えっと、うん、約束だね。お城を直したら、その、するって言うやつだよね?」


「あらあら、緊張なさってるんですか?」



 二人が顔を近づけてくる。


 その目はギラギラと輝いていて、さながら肉食獣のようだった。


 イヴとしては何度も経験しているが、前世の記憶を思い出したせいか、妙に緊張する。


 俺はその夜、二人と肌を重ねた。


 その快感は、自分が改めて生きていることを実感させてくれるのであった。







――――――――――――――――――――――

あとがき

第一部、完!! 第二部は未定です。


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破滅後の悪役貴族に転生した俺は正体を隠して成り上がりたい!〜美少女美女揃いの勇者パーティーが俺の正体を知らないで仲間にしようと探してますが、気にせず辺境の古城で爆乳双子メイドラゴンと幸せに暮らします〜 ナガワ ヒイロ @igana0510

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