鉄鋼業は辛いよ(軽微な労災が日常茶飯事)

@s1280

鉄鋼業で働く辛さ

これは私がある鉄鋼業の会社で体験した経験(約三ヶ月間)を基に書いています。

一部フィクションはありますが、ほぼ実話です。

夜勤の辛さと鉄鋼業で働く辛さを赤裸々に書いていきますのでご参考にして頂ければ幸いです。




私は鉄鋼業を生業とするY工業へ転職した。

Y工業は日本でも有名なT工業の子会社である。

業務内容は溶けた鉄を型に流し込む為の補助作業。



暑い所ではあるが体力があり稼ぎたい人はぜひ来てくださいというキャッチフレーズに私は''いいな''と思い応募しました。

4勤3交代(三班に分かれて7時〜16時、22時〜7時勤務を4日間交代して行う)で生活リズムは崩しやすいが大手グループ会社だから福利厚生は整っており給料もそこそこ良い。


何よりハラスメント対策に尽力しているという記載に惹かれた。

前職では古参の社員の嫌がらせが原因で退職をしたから輝いて見えた。



''これでようやく羽を休める''



そんな思いで入社をしたのだが、内定前の自分に言い放ちたい。



''逃げろ、ベテランでさえ次々と辞めていく過酷な環境だぞ、あとハラスメント横行してないか?''と。

その過酷な環境を3つ列記していく。



①サウナのように熱く鉄粉が舞う環境でのガテン作業

②夜勤の休憩時間で眠れない

③上下関係の厳しい肉体会系の職場の為、厳しく怒鳴ってくる



この三つの要因に耐え切れず何人も連鎖的に辞めていった。

まずは作業内容だがこれは単なる流れ作業だった。



1.溶けた鉄を鉄板の型に流し込む為に鉄板に彫られた通路に耐火レンガを手で設置していく。

2.鉄を流し終えた後のレンガ屑と鉄屑を手で撤去する。

3.鉄板の通路に再び耐火レンガを設置する。そして1へ戻る。



単純な作業の繰り返しだが、ただひたすら熱かった。

溶けた鉄を流し込んだ後の鉄板は湯気を立たせ鉄とレンガは赤くなっていた。

肌に触れただけですぐに火傷し厚い牛皮の手袋で10秒手で触れると水膨れした。

そんな場所に長時間いると服の下の肌は赤くなりヒリヒリした。



「俺のここ、酷い火傷やろ。三週間マトモに動かなかったんよ」



と休憩時間で自慢げに腕の焼き傷を誇らしげにかかげるベテラン従業員に私はゾッとした。

また体に有害な鉄粉が舞う為マスクをしなければならない。

しかし、熱い環境でマスクをしていると息苦しくなり熱にやられてしまう。

その為熱中症になる者は多発、健康な者は少なく皆やつれていた。

私も5kg以上痩せてフラフラになった。



また、③でも書いたように先輩や班長が鬼のように厳しい。

私が所属された班は''まるで軍隊だ''と他班からドン引きされていたが、私は強豪校の野球部だと思った。


ミスしたら怒鳴られるわ、仕事が遅かったら高い所で蹴られるわ。

長時間説教するわで精神的に辛かった。

ギャン泣きしている人にも集団で怒っている時はリンチだと私は恐れた。



また、班長をはじめとしたベテラン勢は仕事が出来ない人や新人にキツイ。

入社三週間の新人が休憩時間でもスマホをいじっていたら


「お前仕事もできひん癖によう遊んでられるなぁっ」


と班長が低い声で静かにキレていたしそれを口実に怒鳴ってくる事もある。


休憩時間なら何処かで休めばいいんじゃね?

と思うけど班全員が同じ詰め所で休憩をしなければならないという謎ルールがあった為厳しく嫌なベテランと一緒の部屋で過ごすから気が滅入った。


その為、新人は怒られないように休憩時間でも資格の勉強や作業手順書を見ていた。

私も汗だくでへとへとになりながらも気力を振り絞って勉強していた。


休憩時間なのに満足に休憩も出来ない為私を含んだ新人は精も根も枯れ果てていた。

中でも私が一番キツイと感じたのは②の夜勤の休憩時間で眠たいのに眠れなかったことだ。

夜勤をしていると必ずといっていいほど睡魔に襲われる。


十二分に日中で仮眠をしていても眠たくなるのだ。

趣味が筋トレと豪語している筋骨隆々な同期でもうつらうつらとしていた。


休憩時間のAM3:00になると詰め所にいた班員はベテランも新人も関係なく合図もせず一斉にウトウトとし始める。


私も電池が切れたようにガタンっと体が崩れ瞼が重く脳が鈍くなった。

この日は7時間睡眠。

眠眠打破を1本、エナジードリンク2本飲んでも眠気に勝てなかった。

自慢ではないが私は人よりも力と体力があるのだが体に力が入らず起きるのが難しくなっていた。


私も睡魔に誘われるまま眠りたかったが眠れなかった。

同じ詰め所にいる班長が「何眠っとんねん!眠る暇あるなら仕事覚えろ!!」と眠っていた同期を叩き起こしそのまま暗く寒い外に引きづり出され説教をしたのを間近で見た。


その為、新人達は各自で眠気を誤魔化す工夫を各々していた。

コーヒーを飲んだりタバコを吸ったり等。

私の誤魔化し方はトイレで顔を洗ったり、タバコを吸っていた。

中でもタバコが役に立った。

タバコの煙を吸い息を止めると煙が体の中で充満し脳へ煙が注ぎ込まれ眠気を削ぎ落とす。


これで眠気が無くなるまで何本も吸って眠らないように頑張った。

それでも眠い時はトイレの個室で座り少し目を閉じた。


そんな環境だから皆辞めたがっていたが言えば怒られるというか何をされるのか分からない為辞めるに辞められず怯えながら仕事していた。


このような生活を送っていた為私の体調は崩れに崩れた。

仕事が終わり家に帰るとひたすら眠った、休日には12時間近く眠った。

食欲も無くなり趣味のゴルフもしない、というより興味がなくなった。

''仕事に行くのが嫌''という負の感情が私を不安にさせ鬱にさせた。

そのような日々を一ヶ月続いたら様子がおかしくなった。

37℃付近の微熱が毎日続き下痢やら左側頭部に偏頭痛が続き心臓の鼓動が五月蝿い。


''あっ、これもしかして''と確信に近いものを抱き近所で有名な心療内科へ行き問診票を鬱憤を晴らすように殴り書き、いくつかの質問に涙ぐみながら答えると眼鏡をかけた白髪のお爺さんは優しく微笑んでくれた。



「うん、典型的な鬱の症状だね。診断書を渡すね」


「えっ・・・やっぱり」



と医者の言葉に少しホッとした私。

''な、なんで俺が''というショックより嬉しさが一気に沸き出た。

''これを口実に退職できる''と。



「やったぜ!ベイベー!!」



と暗闇の中で歓喜の叫びを上げ自転車を立ち漕ぎし帰宅した私はすぐさま会社の人事部に連絡。

すると、トントン拍子で退職が即日で決まった。


別れの挨拶は怖い為何も言わず、グループLINEもすぐに退会した。

怒りの電話が来ないか2、3日ビクビクしていたが今でも来ない為安堵している。

今は常勤の新しい職場で働いている。

忙しく給料も前より少ないが''Y工業よりマシ、健康第一''と自分に言い聞かせながら元気に働いています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鉄鋼業は辛いよ(軽微な労災が日常茶飯事) @s1280

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ