第99話 暗殺者、王の崩御を見守る。
翌日。
俺はダークとなり、アインスや王都に残っていた全ての神風を連れて、イングラム第三王子を連れて、王城の壁を越えた。
壁を越えるだけならそう難しいことではない。だが、第一王子の息がかかった兵達が命を懸けて第三王子を暗殺しようとしている。
だがそれも全てアインスのおかげで調査済みであり、対策済みである。
「今から陛下がいる塔の無効化に入ります」
「ああ」
アインスが神風達を連れて建物の中に入る。
「さすがだな……たったこれだけの人数で、我が国の精鋭達を無効化できるというのは」
「彼らは一騎当千です。こういう少人数の戦いにこそ実力を発揮します」
「そうだったな。それはそうとダーク殿」
「はい」
「一つ疑問だったのだが……どうしてガブリエンデ家の助力を? 其方なら最初からもっと大物……それこそブラムス伯爵やシグムンド伯爵、第一王子に取り入ることも可能だったはずだ」
「…………私は平民出身です」
「なっ!?」
「王国の多くの貴族は平民を道具として使います。ですが、ガブリエンデ子爵さまだけは違いました」
「……まさかアレク殿に?」
「その通りです。私はアレクさまに救われた身です」
「では……あの事件の被害者だったか。なるほど。それなら全てが納得いった」
あの事件というのは、父と母がブラムス伯爵の力を借りることにもなった件だ。
「そうか。あの日の出来事が全てここに繋がるのだが。くくくっ。面白いな。それならガブリエンデ子爵家に執着するのもうなずける。俺が王になった暁にはガブリエンデ子爵家に最大の助力をすると約束しよう」
「ありがとうございます。そろそろ中が片付きましたので」
「うむ。では案内せよ」
「はっ」
扉を開いて中に入ると、神風達が通路に跪いて待っていた。
中を守っていた第一王子の息がかかって兵達は、全身が麻痺した状態で廊下に倒れている。
これはナンバーズ商会の神風達に持たせていた専用麻痺短剣の効果で、あのギンでさえも動けなくさせるほどの力がある。
イングラム王子と共に中を歩き、アインスが待っている扉の前にやってきた。
「ダークさま~こちらの部屋が陛下の部屋になります。中にはエンペラーナイトがいますのでご注意ください」
「うむ」
扉を開くと、中から圧倒的な殺気が伝わってきた。
エンペラーナイトのアルヴィン。
彼はじっと陛下の隣からこちらを睨んでいた。
「第三王子イングラムさまをお連れしました。ナンバーズ商会のオーナーであるダークと申します」
「其方は……あの日の糸使いの女性の上司か。良かろう。中に入るのはダークという者とイングラム様のみとする」
「はっ。イングラムさま。どうぞ」
俺とイングラム王子が中に入ると、第一王子が真っ青な顔で部屋の端からこちらを見つめていた。
イングラム王子は彼に目線一つ向けることなく、堂々と中を歩いて王の隣に立った。
「陛下。イングラムでございます」
「イングラムか……」
「っ……陛下……目が……」
「気にすることはない……国を守るために……命を懸けるのは……王族の……誇りだ…………イングラム……お前に……王になる覚悟は……あるか?」
「はい。陛下に続き、この国を正しい方向に導きましょう」
「そうか……では……任せたぞ…………アルヴィン……イングラムを……次の王として……任命する……お前の命を懸けるがいい……」
「はっ。このアルヴィン。新しい王へ忠誠を誓います」
「うむ……」
そして――――王は帰らぬ人となった。
◆
第三王子はすぐに王になると宣言し、戴冠式を行い、不安がっていた王都民を安堵させた。
さらにナンバーズ商会から瞬く間に王が変わったことを王国内に広げた。
第一王子は、前王を監禁した罪で永久幽閉されることになり、早くも現王の恐怖政治が始まることを予想させた。
そんな王国内のごたごたに乗じて、第二王子は隣国に逃げ込み、本来なら第二王子である自分の方が王になるべきと主張し、第一王子を幽閉した現王である弟に対して宣戦布告。
隣国の支持を得て、ついに隣国との大戦が幕を開けた。
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異世界に転生した元暗殺者は、回復魔法使いになっても剣を振り回す。 御峰。 @brainadvice
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