第3話 麗しの生徒会
562年3月
奈那の乱 一年前
「
「
紫電、彼は伊織姫王の側近である
国を動かすにはやはり、彼が必要不可欠。政治などを担う役人 官吏の役目だ。
「隣国であり同盟国
「そうか・・やはり、我の言葉は届かなかったのだな」
少し、寂しげに俯く伊織姫王。後らの方で黙って聞いていた頼。ふと、紫電と目が合う
「紫電、引き続き様子を見てくれぬか?」
「御意」
紫電が戻ろうとした時
「お待ち下さい、兄上」
「言葉を慎まれよ、紫電様はあなたより高位にいるお方だ」
「・・ご無礼致しました。紫電様」
「良い、下がれよ」
臣子に命令をする。彼らは頭を下げその場から立ち去る。しばらく沈黙は続くが
「頼、久しぶりだな」
深く頭を下げる頼に紫電は優しく微笑み
「二人の時は兄と弟だ。頭を上げてくれ」
「先程はすみませんでした」
実兄でもある紫電を慕っている頼。国の政治を任せてある兄は誇りでもあり超えて行きたい
存在でもあった。二人横に並び空を眺める
「
紫電は〝ふむ〟と呟き沈黙をする。政治の事はこちらが聞くべきではないと思っていたが国を動かす力をやはり羨ましいと思う。
「国はそれぞれを主張をする。我が国が一番だとこの世界を一つに出来るのだと」
伊織姫王はかつてこう言っていた。国を一つにするというのは必要であるのかと己に問うと
「伊織姫王の力は統率出来るであろう。それは現世だけではなく来世とその能力は引き継ぐのであるのだ」
「それは伊織姫王様の能力が欲しいと言うことでしょうか?あのお方の能力は不老不死ではございません」
「何故、国は争うのだと思う?頼」
紫電の問いに黙る頼に
「国は己にないものを必要とする。我々の国は水源となるものがない」
紫電はこの国の地図を取り出し頼に見せる。三つに分かれた国。伊織姫王がいる国はちょうど真ん中の位置にある。
「水源となる大きな湖が同盟国でもある
虹燕国の真ん中には大きな
「水源を頂く代わりに我々の力を貸し出すという形だ」
我々の力とは・・
「伊織姫王の能力、自然を操る力だ」
自然を操る力、虹燕国にとって大きな水甕はとても必要不可欠。だが、それだけでは国民の暮らしは難しいのだ。
「奈多国は伊織姫王様のおかげで穀物などの資源があります。しかし、これが育つのも同盟国でもある虹燕国のおかげでもありますね」
この二つの国が協力を得て成りだっている。そして、気になるもう一つの
「この国はとても豊かで安定ではないのですか?何故、このような行いをするのでしょう」
「豊かなのはその資源を手にしている者だけなのだよ。全ての者が豊かでないのだ」
伊織姫王のように平等に与える国ではない事
貧しいからこそこのように悪事をする者が現れていくと紫電が話す。
「伊織姫王様は全ての者に平等をとしている。
紫電がこう話す。あの国との会談にて自国の物資を売ると同じく国民の暮らしを与える条件伊織姫王の力を使えと要求されている。
「そのような無礼な行いを許すのですか?紫電様。国民の暮らしを取引に使うなど許されません」
「頼、立派になられたな」
「兄上?」
この時の紫電の考えがわからなかった頼。伊織姫王の力が来世と共に繋がっていく。紫電の言葉が気になるが伊織姫王の力だけ頼ってよいのか?
「くっ・・」
ここ最近、体に痛みが伴う事がある。疲れもあるのだろうと気にはしていなかったが・・
「何だこの・・白い光は」
ふと、自分の手を見ると白い光が浮かび上がる。頼は驚きを隠せない
「そのままでいてください」
「伊織姫王様」
伊織姫王は頼にそう言い放ち、左の人差し指を口にあて呪文を唱え出す。すると、先程まで光っていた光が消え、痛みもなくなった。
「これで大丈夫。頼、まだ違和感はあるか?」
「いえ・・ありがとうございます。あの」
「妾の力が朽ちる前にしておかねばならない」
「伊織姫王様?」
伊織姫王は地面に手を充てる。土は動き出しまるで生きているかのようだ。
「この力は生命をもたらす為に存在すると妾は思っておる」
〝争う為ではない〟聞こえるか聞こえないかの声で囁く。何故、彼女がこの行動しているのか頼にはまだわからなかった。
———つつじが丘
「
「大スクープよ!佐々木くん!こんな事滅多にないわ」
「・・でしょうね。この状況でよく言えますよね」
———ギシャギシャ
近づいてくる
「森澤さぁーん、ヤバっすよ。逃げましょうよ」
あたふたしている佐々木とは対照的に
———ギシャャャャ!!
「ひゃああああ」
「わあああああ!」
———バシッ
二人の前に現れたのは
「何・・黒いじゃんこのライオン」
「大丈夫ですか?」
「女の子?」
「ここは危ないです。早く逃げて下さい」
梢枝達を守る
———ギシャ!!
物凄い速さで紬の前に立ちはだかる
〝自然はお前そのものだ〟
伝わる・・このエネルギーが私だと認識する
「わあああああ」
「そこから動かないで下さい」
VITAを体の中心に集中させる。その力は地面へと伝わり土の壁となる。
「これが自然の力」
〝そうだ、紬よ。もう一度来るぞ〟
「うん!」
「このまま・・どうしよう」
鉄壁の防御も弱まりつつある。何としてもこの二人を守らないと・・
何故、私にこの力を与えたのだろう。どうして私は戦っているの?考えてしまう紬。
本当なら
「何これ?」
紬が目にした風景は今の場所ではない。一面に広がる草原。それはとても美しく紬は思わず見惚れてしまう。紬の意識は風のように空を舞っている。流れる景色、次はどこに行くのか?
〝伊織姫王様〟
そう呼ばれた人物が立っている。その人は凛としてとても美しい人だと紬は感じた。
彼女の手から光が浮かび上がり天に差し出されるその瞬間に風が流れ彼女を包み込む。すると彼女の腕の中には
———オギャオギャ
小さな赤子が抱き抱えられていた。伊織姫王は優しく微笑む。この赤子が風に包まれ守られていたからだ。紬はそれを目にした。この人が風を操っていた事を。
〝坊や!〟
母親らしき人物が急いで赤子のところにやってきた。泣きながら抱きしめ何度もお礼を言っていた。
〝ありがとうございます〟
紬は赤子が無事であった事にホッとした。
〝そなたにも救いの力があるのだ〟
「え?」
こちらを見ているのは伊織姫王。私の事に気づいてるの?不思議に思う紬。
〝さあ、お戻りなさい〟
紬の意識はまた、流れるように動き出す。再び、風が舞うようにその場所から遠ざかっていく。あの人の温かなVITAが伝わる・・紬の中で何かを感じ取っていた。
———ギシャギシャ
〝守らなきゃ〟
あの人のように、紬の中のVITAが再び芽生える。風が緩やかに彼女の周りを包み込み力がどんどんと
「シルフシールド」
襲いかかる
もう一度体の中心にVITAを集める紬。この
「ストーンブラスト」
風が渦になって舞いそれが次第に球の形になっていく。その物体が
———バシッ!バシッ!
———ギシャャャャ!
その物体はまるで石のように固く風のように物凄いスピードで
「な・・何すか!?森澤さん、俺、頭おかしくなったんすかね?」
「頭がおかしくなってもこれが見れたなら本望よ!佐々木くん」
「もう、俺すでにおかしくなってますよ。森澤さんがいると・・」
攻撃は緩めず
「何でだと思う?」
「え?・・」
いつの間にか紬の背後にいた青年。彼の中から湧き立つVITAは他の者と違う。ニヤッと不気味に笑う姿にゾッとする。
「フェノメナキネシス・・だけど、まだ使いこなせてないよね?」
そう言うと不気味な青年が放った
「プレゲトーン」
———ゴゴーゴゴー
地面から炎が湧き出てきた。見る見るうちに風の石を包み込んで破壊する
物凄い力に圧倒される紬。不気味な青年の攻撃に防御しか出来ない。
———ガォーーーンン!!
「ふん、黒のライオンか」
紬が手を出せなくなりこのまま防ぐ事が出来なくなると思った時、黒のライオンが加勢する
〝奴の属性は火の属性、今のお前とは相性が悪いようだ〟
自然を紬にとっては属性に影響が出てくると黒のライオンが話す
「どうしたらいいの?属性とか風とかまだ、よくわからないの」
〝アースキネシスの能力がまだ、不安定だ。私は土の属性だ。紬、VITAを集中させるんだ〟
「VITAを集中・・やってみる」
〝いいか、私が防御をする。お前はVITAを集中させイメージをするのだアースキネシスは大地だ。何故、するのか?考えてくれ〟
アースキネシスの力を必要にするにはやはり理由がある。ふと、あの意識が違う場所に連れていかれたことを思い出す。
あの人は守る必要性をわかっていたんだとなら、自分もどうするべきなのか?この二人を守ること。そして、罪のない人間が巻き込まれた事。それは決して許されない。
「
守れなかった命・・
〝気づいたようだな〟
「はい!」
〝来るぞ〟
黒のライオンが攻撃から紬を守る。
「わぁ・・やんなちゃうよなー。なら・・なっ!?」
不気味な青年が驚き後ろに下がる。それでもなお迫り来る攻撃は大地から攻めてくる
「ちっ!・・くっ!」
「ぐわぁ!」
何だ?と思った青年、そこには紬がアースキネシスの力を使いこなしていた。
「くそっ!あの女・・プレゲトーン!!!」
しかし、その青年の能力も凄い。紬の攻撃を避けながら、土の矢の
———ドドン!!
「ちっ!鬱陶しいな。どけよ、ライオン」
青年の攻撃も黒のライオンに防がれてしまい、苛立ちを隠せない。
紬の攻撃もどんどんと激しくなり、彼は攻撃出来ない状態になってきている。
「このままじゃ、どんどん防がれるかもしれないよ。黒のライオンさん、どうすればいい?」
黒のライオンと紬だけなら防御しながらも何とかなるかもしれないが関係のない二人がここにいては難しいであろう。
〝ライアだ〟
「え?」
〝私の名前はライアだ。ライアと呼んでくれたらいい〟
「ライア・・」
ライアという黒のライオン、不思議な存在。気になる事は沢山あった。
———カシャカシャ
「森澤さん!!」
「え!?」
紬が見たのは森澤梢枝が青年に近づいていく姿だった。
「森澤さん!戻って下さい!危ないです」
一緒にいた男性が叫ぶなか、彼女はお構いなしに青年に近づいてカメラのシャッターを切る
「危ないです!下がって下さい」
紬の言葉は届かない。
「こんな、チャンスはないわよ!フフフ」
「へぇ・・チャンスね・・」
「えっ・・」
「ないよなー」
「あ・・」
不気味に笑う青年、震える梢枝に向かって炎を繰り出す。
「森澤さーーーーん!!」
———バキッ
ポタ・・ポタ・・
流れ落ちていく血
———ガルルル・・
「ライアーー!!」
青年の攻撃を防御したライア。しかし、ダメージが強い。大量の血、紬がライアのもとに駆け寄る。
「ライア!ライア!しっかりして」
「どこ見てんだよ」
微笑む青年、紬は思う。私は誰も助けられないの?
「じゃあねー」
彼から放たれるVITAが大きくなるのがわかる。これまでかと目を瞑る紬
「どこまでも邪魔するよな?」
目を開けると目の前に
「・・あ」
「よう、サイコキネシスさんよ。久しぶりだな
あはは、最高だわ。俺に殺されて来たんだな」
「るせーよ。さっきからごちゃごちゃと御託並べるんじゃねーよ。さっさとかかってこい」
泰元のVITAが大きくなっているのがわかる。怒りが込み上げているのだろう。紬とはまた違う感じだ。
「黒のライオン・・」
「お願い!ライアを助けて」
泰元はライアの様子を見ている。これはあまりにも酷い状態だとわかる。
「いいか?ここを動くなよ?このライオンは大丈夫だ」
「え?」
「このライオンの治療してくれ」
泰元が誰かに指示をしている。その男性は驚いてしどろもどろしていけど
「大丈夫?今、このライオンを治すね」
そう言って、彼はライアの傷口に手を充てる。そこからは優しいVITAがライアを包み込む
「うそ・・傷口が小さくなっていく」
「とりあえず、止血はした。だけど、かなり深くまで傷口があるから完治までは時間はかかるけど命までは大丈夫だよ」
「よかった・・ありがとう!」
紬が安堵し彼に微笑む。その笑顔に少し赤くなる男性。
「だけど、あなたは何者なの?」
「僕は西ノ
「え?先輩なんですか!?ごめんなさい。タメ口使ってしまって・・えっと、西ノ丸先輩」
「あはは、気にしないで。あだ名は丸って言われてるから、そう呼んで」
気を使わなくていいよと紬に優しく話す周平。その優しい感じがとても有難くホッとする
「じゃあ、丸ちゃんって呼んでもいいですか?」
「丸ちゃん・・うん、可愛い」
彼の笑顔はとても癒される。そして、この能力はどんな力なのか?
「俺も一応、先輩なんだけど?何、和んでるんだよ」
少し、ムッとしている泰元。この人はいちいち突っかかるだと少し不満に思う紬。
「それはどうもすいませんでしたね!泰元
「嫌味かよ!可愛げのない後輩だな」
「自分が言ったんでしょ!」
その言葉に〝何よ〟とそっぽを向く紬に対して生意気だと思う泰元。何故かお互い火花散っている。困っているのは周平、それはそのはず
「あの二人共・・」
〝何だよ!/何よ!〟
「本当、ウザいよね」
不気味な青年の苛立ちは隠せない。その怒りは紬達全員に向けている。
「しまった!紬!伏せろ」
泰元が叫ぶ、彼から溢れ出す炎はどんどん大きくなりこの周辺だけではなくこの町が危険に晒されるほどだ。
「間に合わねぇ!」
———次の日
「ハッ」
勢いよく起き上がる紬。気づけば自分の部屋にいる。何故?ふと、分かった事は
「間違いなく覚えている」
だからこそどうなったのか?テレビをつけて何か情報がないか調べるがそんな様子も見られない。いつもと変わらぬ朝だということ
「おかしい・・佐渡さんはどうなったの?」
昨日の出来事が頭から離れない。佐渡さんそして、ライアはどうなったのか?何度も頭の中で考えていた。
「どうして、こんな力があるんだろうか」
学校に登校して靴を履き替えていると
「紬ー!」
「美玲・・」
「具合はどう?早退したからそれにメールにも出ないから心配したよ」
昨日、早退をして美玲に心配をかけてしまった事申し訳なく思ってしまう。
「ごめんね、美玲心配かけてしまって・・」
「ううん、気にするな。でも、よかったよ。今日来なかったらどうしようって思ってて」
美玲の優しさがとても有難いと感じる紬。昨日の事やっぱり、伝えないとな
「あのね美玲、昨日ねつつじが丘でその・・爆発とかあったでしょ?」
「爆発?え?何もなかったよ?」
「え?」
昨日のつつじが丘の出来事、あの時不気味な青年によって炎に包まれたはず。何もなかったかのようになっているのか
「じゃあ、佐渡さんは?その・・」
彼女は確かにあの渦の中に巻き込まれた。
「え?佐渡さん?彼女ならあそこにいるじゃん」
美玲が〝ほら〟と指を指し、向こうから歩いてくる佐渡さんを紬は見る。
「うそ・・佐渡さん!!」
紬は急いで彼女の元に走っていく。佐渡マリアは表情を変えず立ち止まる。
「何?」
「何って、大丈夫なの?昨日、つつじが丘で」
「何の事?」
昨日の事は覚えてないようだ。そして彼女はいつも通りに登校してきている。
「用がないなら行くわね」
そう言って彼女は歩いていく。一体、どういうことだろうか?紬は唖然とする。
「何?いつから佐渡さんと話すようになったの?」
「あ・・うん。話す機会があったんだけど」
「紬」
「え?」
美玲は少し微笑んで紬にこう話す。
「紬の事、少し心配だなって思う事あるんだよ。何だかほっとけないというか」
「美玲」
「アタシは待つよ。今は話せない事もあるんでしょ?」
その優しさに嬉しくなった紬。もし、本当の事言って嫌われてたらと悩んでいたからその言葉は紬にとって心強い言葉だった。
「美玲、ありがとう。私、美玲と友達でいたい。だから、話せる時が来たらきちんと話す」
涙ぐみながらそういうと〝泣かないの〟と
頭を撫でてくれる。紬にとってこの何気ない日常はとても貴重だ。これからどうなるのかわからないからこそ、その言葉は紬とって心強いのもので励みになる言葉なのだ。
「よし!泣いた後は笑うのだ!ねえ、知ってる?ここの生徒会」
「生徒会?」
「ふっふっふっ!ここの生徒会はね・・」
美玲が何か話そうとした時だ
〝きゃああああああ!〟
「え?何?」
周りから聞こえるのは黄色い声援ばかり。その声の方向に目をやると物凄い人だかりが出来ていた。そんなに人気がある生徒会なんてあるのだろうか?
〝来たわよーきゃああああ!〟
廊下を優雅に歩いている生徒会面々。紬は目が離せなくなっていた。
〝
〝
〝
「あれが生徒会三役」
「凄いね・・」
美玲が詳しく教えてくれた。
「左側を歩いてるのは
「凄い調べてるのね・・」
「続いて右側を歩いてるのは
「蛇みたいだね・・」
「そして、最後はお待ちかね!会長の
もう何も言うことはないわ!完璧よ」
「・・はは」
美玲の情報の方が完璧過ぎて何も言えないと思う紬。この学校の顔、生徒会はやはり、目立つなとずっと見ていると
「あ・・」
こちらを見て微笑む一人の男性。会長の健次郎、紬を見て優しく微笑んだのだ。あまりの美しさ、とても色白で綺麗って言った方がいいとても美しい男性だ。
「何微笑んでいるんだよ。健次郎」
「いいや、別に」
健次郎は紬をもう一度見る。一見普通の少女だと感じている。
「なるほどね」
「なぁ、健次郎。わかってるだろうな?」
穏やかでいつも笑みを浮かべている健次郎とは違い、いつも表情を変えない聡太。
「わかってるさ、そう考えるな。聡太」
彼ら達が去ってもまだ余韻が残るぐらいオーラが凄かった。何だろう紬は少し気にはなっていた。そして、教室に戻ってきて佐渡マリアの方を見る。昨日の出来事は夢だったのかな?何もなかったかのように椅子に座ってる佐渡マリア見て思う紬。
「夢じゃない・・後で聞かなきゃ」
そう決心している紬を佐渡マリアが見ていたとは気づかなかった。
つつじが丘で起きた出来事はまるでなかったかのようにいつもの日常になっていく。だが、それはまた同じような繰り返しが始まるサインであった。
「では、予算はこのぐらいにしましょう。あとは吉永くんから詳しい説明があるよ」
「ありがとうございます!よろしくお願いします」
「これはダメだわ!予算オーバーあの部活は部費を使い過ぎだぜ。健次郎、お前は甘いからな」
会計のぼやきを聞きながらゆったりしている健次郎。その横では聡太がソファで寝転がっていた。
———ドン!
乱暴に開けられたドア、そこに立っていたのは
「相変わらず乱暴だね、泰元くん」
睨みを利かす泰元が健次郎のところまで向かっていくと
———ギロッ
「どけよ」
阻止する聡太に
「お前がどけよ」
一触即発、二人共も引かない。
「はいはいはい。もう、二人共やめなよー」
「
〝僕のせい?〟驚く郁夢に隆聖がこう呟く
「お前、また書類をまとめてないよな?」
「あ、そうだ用事思い出したわ」
逃げるな生徒会書記としての役目を果たさんかいと呟く
「健次郎の力を借りなきゃ奴らを抑えられないって本当に当主か?」
「聡太」
健次郎が止めて、その言葉に郁夢は参ったなと呟く。
「てめぇ、もう一回言ってみろよ!」
「泰元!やめろ」
「すまないね、泰元くん。ここのところ
健次郎は落ち着いてる。泰元が突っかかっても大人の対応をする。
「実際は健次郎の力を借りなければ難しいところもある。悪いね」
郁夢もまた、慣れているのか騒がしくなっていても冷静だ。
「構いやしないさ・・しかし、
「今、現状では健次郎の力で一般市民の記憶などを消してるけど、お前が継承するしかねえじゃねーの?」
隆聖が郁夢に警告する。郁夢は少し黙って考えている。
「冗談じゃねえーよ。本当の当主は健次郎だ。こいつらに力を貸す必要はねーよ」
「ふざけんな。郁夢がいるからこそ最小限で済んでいるんだ」
〝あ?〟またまた喧嘩勃発する勢いだ。それぞれの苛立ちが隠せないという感じになっている。健次郎と郁夢の間で争われるものとは?
「オレはあの女も認めねーよ」
「聡太!」
そう言うと聡太は生徒会室から出ていく
「やれやれ・・すまない。郁夢」
「いや、いいよ。聡太くんが怒るのも無理はないからさ」
「それより、彼女は大丈夫かい?」
「昨日の激闘は何とか避けたけど、まだ、覚醒はしてないよ」
少し悩むような感じで話す郁夢。健次郎は黙って聞いている。
「なあ、健次郎。彼女に力を貸して貰えないだろう・・」
「悪いな、郁夢・・今はここまでしか無理なんだよ」
「だよなー。まあ、もし引き受けたら、ほら、あそこ」
泰元が物凄い形相で睨んでいた。
「こぇーわ」
「あははは、お互い大変だな。郁夢、彼女が覚醒する事にやはり、奴らは動き出す」
この状況が作られていくのは紬の存在があるからだと健次郎は警告する。
「そんなのわかってるさ、彼女には負担にならないように僕達は動いてるんだよ。なあ、健次郎お前はまだ、彼女の本質を知らないからだ」
「なるほどね・・でもね、彼女の事は興味があるんだよ」
ニコニコと微笑む健次郎を見て、泰元の片眉を吊り上がっている。
「健次郎、お前が言うとあれだぞ」
「おい!アイツをからかうのはやめろよ。特にアンタは冗談に聞こえないからな」
「はは、それが正しいって事だね。冗談じゃないからね」
「ふざけるなー」
顔を真っ赤かにして大声を出す泰元に対して余裕の健次郎。
「やれやれ」
敵の攻撃は日に日に強くなっている。果たして彼女は・・
「僕に与えられた事は彼女を・・」
放課後、紬は一人でいた。美玲が部活見学の為いないからだ。紬は泰元達を探していた。やはり、昨日の出来事が気になっていたので二人に聞こうと思っていた。キョロキョロしていると人とぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
その人は何も言わない。謝ってるのにと顔を上げると物凄い形相でこちらを見ている。紬は怯える。それでも黙って見ている。ふと、紬は気づくこの人確か生徒会の人じゃないか?確か椿聡太先輩という名前だと。
「ごめんなさい。あの、大丈夫ですか?」
「歩く時は前を向いて歩くんだな」
「ご・・ごめんなさい。人を捜していて気をつけます」
「どこの教室だ?新入生だろ?場所くらい教えれる」
「えっと・・その先輩なんですけどクラスまではわからなくて・・確か斎賀・・斎賀泰元・・
———ドン
「きゃっ」
その名前を口にした途端、紬は壁の方へ追いやれる。目の前には大きな目で睨みを聞かせている。紬は驚き怯む。
聡太の顔はどんどん紬に近づき瞬きもせず、こちらを見ている。
「オレの前でその名前を口にするな」
美玲が紬にこう話していた。高貴で艶やか
「だからでこう呼ばれてるの!」
——
フェノメナキネシス みもり @mimoriandu608
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