第2話 ヒーリング・サイコセラピー

———カチャカチャ


レポートまとめ①


ここ何年か、女子高生失踪事件関連について

数名の女子高生が失踪するという事件が頻発に起こっている。

当日、行方不明となっている時間帯には、目撃者はおらず、まるで神隠しのような状態である。

その中でも、唯一1人だけ発見された。自体は、動くかと思われたが未だかつて未解決のままだ


「ふぅ・・手がかりなしか・・この事件の真相を聞こうと思っても被害者である彼女まで話は聞けないのよね」


 事件の真相を追っている人物の名前は

森澤梢枝もりさわこずえ〟ルポライターだ。

ここ何年か未解決の事件を追っていてこの女子高生失踪事件も追っている。


「相変わらず懲りないですね、森澤さん」

「懲りないのではないのよ。情熱があるって言ってちょうだいよ佐々木くん」


 森澤梢枝と話をしているのは後輩で同じくルポライターの佐々木佳明ささきよしあき 梢枝ほど情熱はなく、なんとなくこの仕事をしている。


「そんなに熱心になるってなんすかね」

「君は逆に熱くなりなさいよ」

「僕はこのままでいいですよ。明日は休ませてもらいますし」

「またか!?おま!この業界で休むとは何事だ!少しは働け」

「働いてますよ、あんまりギャンギャン言うとパワハラになりますよ」


 ゆとり世代なのか?のんびりしすぎてその世代ギャップに困惑する梢枝。あまりにも自分とは違う感覚に驚きを隠せない


「そう言えば、その事件で昨日何かあったみたいですよ」

「え?それ!?本当!?そんな情報ないよ」

「それがですね、何度か目撃情報が警察に寄せられていて調べたら結局何もなかったみたいらしいんですよ」

「それは匂うわね。佐々木くん!行くわよ」

「え?どこに?僕、嫌っすよ」

「この間のズル休みの件、編集長に言っても」

「行きましょう!すぐに!」


 何かきな臭いと感じる梢枝。この街で何か起きているのは間違いない。その目撃があった場所までいかなければ・・


 一方、昨日の出来事について気になる事があるのは梢枝だけではなかった。


「どうしたの?つむぎちゃん」

「あなた達は何者なの?何故、あの丘で黒のライオンと戦ってたの?」


 紬はそう話す。彼らは真っ直ぐこちらを見ている。紬は思った。


〝私は昨日の事覚えている〟


 紬の周りで何が起きているのか?頭の中で入ってくる映像・・それが鮮明になってくる。


「って何の事?昨日ってこの屋上で会った事だよね?」


 そう話すのは郁夢いくむ、彼の名前は北斗郁夢ほくといくむ小柄で目がクリクリの可愛らしい男の子だ。


「とぼけないで!私は覚えている。あの丘で起きた事・・黒のライオン・・そして、あなた達は何者なの?」


 紬がそう話すと郁夢も真剣な表情になっていく。紬が見たものは何なのか?


「こういう事だよ」

「え?」


 すると、もう一人の男。長身で切れ長の目美しい顔立ちをしている。名前は斎賀泰元さいがたいげんいきなり、目の前の光景に紬が驚く。彼の前には宙に浮かぶ石がこれはあの丘の時と同じだ。


「知りたいなら教えてやるよ」


 泰元から放たれるエネルギーが周りに振動するそのエネルギーが物体に伝わり


「嘘でしょ!?」


 紬めがけて飛んでくる。その速さにこのままで殺されてしまう・・目を瞑った瞬間


「力を出してみろよ!!」


 泰元の声に紬の周りの空気が変わる。自然に流れていた風が紬の前に壁となって泰元の攻撃を防ぐ。


「何・・これ・・」


 風が防ぐ・・自分を守ってると感じる事が出来る。


「紬ちゃん、跳ね返してごらん」

「郁夢!!お前!」


———ドンッ!!


「ぐっ!」


 風を使い見事に攻撃を跳ね返す、その勢いで泰元が吹っ飛ぶ。


「きゃあ!!」


 紬は慌てて泰元のところに駆け寄る。


「だ・・大丈夫ですか?」


 自覚がないのか?そう思う泰元。彼女を見つめる。心配そうに見ている。


「なるほど、エアロキネシスね・・だけど昨日は確かアースキネシスの力だったはず」

「え?・・」


 郁夢の言葉に戸惑う紬。それもそのはず、本人はその能力さえ気づいてない。


「フェノメナキネシス」


 泰元はゆっくり起き上がり、背中越しにそう話す。


「あんたはその能力を備えている。一つの能力だけかと思われたが」

「なるほどね・・総合体というわけだね」


 この人達は何を言っているのだろうか?紬の頭の中は混乱している。ただでさえ、昨日ありえない現象に遭遇したばかりだ。


「さっきから意味わかんないよ!私に能力って何?説明してよ!」

「無自覚が一番厄介だな」

「泰元!ごめんね、紬ちゃん。説明したいところだけどそろそろ授業も始まる。そうだな、放課後に会おう」

「郁夢、まだコントロールも出来ないコイツに教えるつもりかよ」


 紬がムカッとしていた。さっきから何よ!


「えいっ」


 思いっきり膝を蹴る


「った!!!!」


 泰元は大声を出し蹲る。


「ありゃ・・」

「てめぇ!何しやがる!」

「ふん!さっきから何!コイツと私にも名前があるんです!」


 二人睨み合う。呆れる郁夢


「納得出来ないのはあなただけではないわ!私自身もわからないの!だけと、この現状を受け止めるには説明してもらわないと困るの」


 紬の強い口調で泰元は黙り込む。


「どんな事でも覚悟するわ・・何かあるとはわかってただけどこれでわかるなら・・」

「昨日だけではないのか?」


 泰元の質問に頷く紬。この力は何なのか?何故あるのか?何の為に?そんな日々がずっと続いていた。


「まあまあ、とりあえず放課後きちんと話すよ。紬ちゃんのルーツとかさ」


 郁夢がこのくらいにしようと提案をする。自分のルーツこの力が知れるなら・・紬は郁夢達と約束をして屋上を後にする。


———バタン


「今の何だ???」


 フェノメナキネシス・・って何?きょとんとしている男が陰から見ていた。


「紬・・紬ちゃんか・・可愛い名前だな」


 紬は昨日の事もあって、少し上の空だった。自分のルーツとは?


〝北斗先輩が言ってた事が気になる〟


「もう!!紬、聞いてるの?」

「え?」

「朝から変だよ?何かあったの?」


 紬の友達、美玲みれいが心配している。

突然、朝から駆け出して戻ってきたらこんな状態なら心配するだろう。


「ごめん・・昨日、変な夢見て」

「夢?そんなに怖かったの?」


 実際に起きた事は言えない・・美玲を怖がらせてはいけない。紬にとっては大切な友達だ。


「突然いなくなるしさ」

「ごめんね・・もう大丈夫だから」


 美玲は少し心配してたけど、笑顔に戻りたわいのない話をする。この日常が平凡な毎日が続いて欲しいと紬は心から願う。


 窓から覗く、自然のエネルギーが何かを伝えようとしている。今までこんな事あっただろうか?


「え?・・」


———凌駕殿りょうがでんにて


剛健ごうけん様、昨日の女子高生失踪未遂事件ですが・・」

「やはり、スカーの仕業だね」

「はい・・」

「なるほど、絶滅はしていなかったと言うのだな。幾千年の時を得てもまた、現れる」

「それともう一つ、現れました・・フェノメナキネシスでございます」

「本当なのだな?」


 剛健は目を開いて、聞き返す。


「間違いございません。只今、調査団の方も送り込んでおります。あの場所でフェノメナキネシスの能力を使われたかと思われます。いかがなさいますか?剛健様」


 これまでとは違う何か・・この事件も未遂で終わったとなら何か変わるのかもしれない


「あるいは・・引き続き様子を見てくれ」

「承知致しました」


 剛健はゆっくり立ち上がり空を見上げて


伊織姫王いおりひめのおおきみ貴方が託した想い承りました」



———つつじが丘


「森澤さん、何もないっすよ。帰りましょうよ・・森澤さん?」

「しっ!」


 梢枝が静かにと佐々木に小声で伝える。佐々木は眉間に皺を寄せて


「何なんすか・・」


 梢枝が見てる方向を見る。そこには黒服姿の集団、いかにも怪しい。


「やっぱ、ここに何かあるのよ。あの事件と何か関わりがある・・」

 

 好奇心が湧きだってくる。梢枝のジャーナル魂が奮い立たせた。


「でも、実際は原因などわかってないですよね?ニュースにもなってない。何かあったとSNSで話題になってますけど、それが事実証明ないですよ?」

「だからこそよ!私達が見つけるのよ!」


 梢枝の勢いに戸惑う佐々木だが、一度言い出したら聞かないそれこそがめんどくさいのでタイミングを見て立ち去ろうと決めた。


 放課後、郁夢達と話をする事になっていたが、紬が少し気になった事があり再び、昨日の丘に来ていた。


「ここに確か・・」


 何故、ここに訪れたのか?それは・・


———ザッザツ


 その道を歩く音、紬は思わず隠れる。恐る恐る覗くとそこには


佐渡さわたりマリア〟


 先程、学校にて廊下の窓から覗くと佐渡マリアが門の前に立っていたのが見えた。不思議に思いしばらく見ていると彼女は消えたのだ。驚く紬、その瞬間光が現れその光がこの丘に向かって消えていった。


 多分・・知られたらきっと・・


「怒るだろうな・・何?・・」


 紬の前に立っているのは・・


「佐渡さん・・」

「動くな」

「え?」


 佐渡マリアがこちらに近づいてくる。紬は何かを感じとる。屋上で感じとった時とは違う

佐渡マリアは紬の耳元でこうささや


「わたしが行けと言ったらそのまま走れ」


 その言葉に震えが止まらなくなる。この人は何者なのだろう。そう思った瞬間、背後から負のエネルギーが押し寄せてくる。


〝行け!!〟


 佐渡マリアの合図にそのまま走る。この丘で起きた出来事。紬は走るがもし、このままなら佐渡マリアはどうなるのか?思わず立ち止まる。そして、振り返りその光景に言葉を失う


 佐渡マリアは空間から生まれた渦に飲み込まれていく。


「佐渡さん!!」


 助けないといけない!紬は引き返し佐渡マリアのところまで走る。


「来るな!!」

「何言ってるの!佐渡さん!今、助けるから」

「・・っ!?やめろ!」


 佐渡マリアはそう言うと紬を押し返しその反動で紬は跳ね除けられる。


「きゃっ」


 渦はドンドン小さくなる。紬はすぐに渦の側にいき、必死にこじ開けようとする。だが、紬の力ではどうにもならない。


「なんでよ!お願い!あの力を!」


 昨日と同じようにそして、今朝と同じように不思議な力が出るように紬は何度も何度も唱える。しかし、その力は出現はしない。


「どうしてよ!必要な時に何故出ないの?」


 渦は完全に閉じられた。佐渡マリアを助ける事が出来なかった。頬から溢れる涙・・自分が無能だとわかった瞬間。その場で崩れる紬。


 だけど、非情にも新たな敵が紬の前に現れる


「いやー何?何?泣いちゃってる?」


 黒ずくめの青年、不気味な笑みを浮かべながら紬を見ている。紬は放心状態、言葉すら発さない。


「あらら・・まあいいや!フェノメナキネシスの力見せてよ!」


 赤く広がるエネルギーが紬をめがけて向かってくる。


———ドカッーー!!


「・・現れやがったな」


〝ガルルル・・〟


 紬を攻撃したエネルギーが跳ね返された。それ跳ね返したのは・・


「・・何?」

「黒のライオン出たね」


 凄まじいオーラを纏うそこからエネルギーが漲っているのが紬にもわかった。そして、このライオンは何故、私を守ったのか?昨日はそんな感じではなくむしろ襲われるのではないかとそんな気がしたからだ。


 背中越しからもわかる。神々しさがあり黒でありながらも気づけば黄金に包まれていた。黒のライオンは目線をこちらに向ける、先程とは違う紬は安堵した。


「絶好のチャンスじゃん!伝説の黒のライオンそして、フェノメナキネシスをやっつければ」


 笑い出す青年。黒のライオンはその姿を見ていて、何やら考えている。


「あはははは!始めようか!」


 青年が放った光から昨日見た藁人形が沢山出現する。


「あれは昨日の・・」

スカー達よ、暴れろよ」



———保健室


「先生ーいませんか?」


 学校では怪我をした男子生徒が保健室を訪れていた。体育の授業を受けていたのだろう


「先生なら会議室だよ?ああ・・膝消毒しないとね。そこに座って」

「ありがとうございます・・」


 保健室にいたもう一人の青年。屋上で紬達の話を聞いていた生徒だ。何やら怪我の状態を見ていた。


〝これならなんとか治せるかな?〟


「体育の授業で派手にこけちゃって」

「そうなんだね、消毒するからそこにある消毒液とってくれる?」


 指示をして傷口を消毒する。消毒綿を使いながら彼は心の中で呟く。


〝痛みが引くぐらいで〟


 ガーゼで傷口を覆いそして・・


「傷口は少し深いけど応急処置したからしばらくは大丈夫だよ。痛みも少しだけだよ」

「あ、本当だ。あれ?血も止まってる。不思議だぞ?」

「一応、様子は見てね」


 怪我をした生徒はお礼を言って保健室を後にする。


「不思議だな・・僕の力って何だろう」


 彼は自分の手を眺める・・この力は12歳の頃に現れた。最初は彼の怪我で何気に傷口をあてたら無くなった。痛みもなくなり気のせいだったのか?と思うくらい不思議な現象だった。

 

 次にその力を試したのは怪我で蹲っていた子猫。彼は自分の手を子猫の傷口にあてる。するとドンドン傷口がふさがった。間違い彼にはみんなとは違う能力が備わっている。


 傷や痛みが消える。この力は人の役に立てるんだ。何も備わってないとこれは神様からのプレゼントだと思った。


 だが、中学生になるとこの能力は・・


『今、すぐ治すよ』


 誰かの役に立てる、そう思っていたのだ。傷口はドンドンなくなり痛みもなくなる。嬉しそうに笑う彼に相手は・・


『気持ち悪い』


 その言葉に耳を疑った。役に立てると彼は思っていたから。彼は衝撃を受けたのだ。


〝僕は気持ち悪い〟


 過去の事を思い出す。自分の手を眺めながら彼はこう呟く。


「僕の力は役に立てないのかな?」

「西ノ丸周平にしのまるしゅうへい

「え?」


 何やら声がしたのでキョロキョロする。〝ここだ〟保健室のベッドから聞こえる声。そしてカーテンが開いた。彼の事を西ノ丸周平と呼ぶ男がこちらを見ている。


「君は斎賀さいがくん・・」


 周平は驚いていた。何故なら自分を呼んでいるのは斎賀泰元さいがたいげん、学校でとても人気がある青年だからだ。それともう一つ気になった事があって自ら話そうと考えていた。そう、屋上の出来事を知りたい聞きたいと彼と接点を持つ事で自分のルーツがわかるかもしれない。それに紬の顔が浮かび彼女の事も知りたいと思った。


「お前、今何をした?その能力・・」

「その事で知りたいんだ!この能力って」


 周平は間違いないと感じた。泰元の言葉で確信をしたこの力はみんなあるわけではない。なら、何の為なのか?それを知りたいと思った。


「僕の力、知ってるみたいだね?僕も知りたいと思ってたんだ。人の役に立てる力だと思ってたのに・・」

「人は自分と違うと思えば、排除をしたがる。その意味などあってないものだ」


 冷酷だと感じる。ただの自己満足だったのかと周平はわかってしまう。じゃあ、その力は必要ではないではないかと。


———バンッ


 突如、大きな音と共に扉が開く。泰元と周平が振り返る。


郁夢いくむうるさい」


 怪訝けげんそうにする泰元だが郁夢が慌てている。


「それどころじゃない!泰元。紬ちゃんがあの丘に行ったんだ」

「あのバカ!」

「少し気になって紬ちゃんのクラスを覗いたらクラスメイトの子が早退したって言ってて」


 その言葉に郁夢は嫌な予感がした。


「佐渡マリアを追いかけたって」


 その瞬間、泰元は走り出した。周平は唖然としていたが紬に何かあったんだとはわかった


「北斗くん!僕も連れてってください」


———つつじが丘


 スカーに囲まれた紬と黒のライオン。紬はまた後悔をする。自分の行動がいかに浅はかだったと佐渡マリアも渦に取り込まれ、自分がこの場所に行かなければ・・


「アンタさ本当にフェノメナキネシスなの?」


 黒ずくめの青年が呆れ顔で紬を見ている。あの人と同じ事を言う。泰元の顔が浮かび紬は考える。フェノメナキネシスって何なの?私の能力って・・無知がいかに愚かなのか・・すると


〝守りたいか?〟


「え?」


 紬の心に語りかける・・


「誰?誰なの?」


〝今の意志は何だ?後悔か?〟


 その言葉の意味を考えるのだと語りかける


「ライオンさん?」


 黒のライオンが紬に語りかけている。今の意志は・・佐渡さん!


「もう二度と犠牲者は出さない!」


〝承知した〟


 紬の意志が黒のライオンに伝わり、黒のライオンは鋭い目でスカーを睨み



———ガルルルゴォーーーン


 その雄叫びでスカー達が吹き飛ぶ


「凄い・・」


〝お前のエネルギー、つまりここではVITA=バイタリティと呼ぶ〟


「VITA・・」


〝VITAを一点に集中させてみろ・・イメージに乗せて見るんだ〟


 黒のライオンはこれまでの彼女の力は本物だと捉えていた。だが、コントロールが出来ないそれはまだ、己のVITAを意識してないからだと感じていた。それでもあのVITAを放てる紬の力を試したい思っている。


「へぇ・・やるじゃん、黒のライオンさん」


 一点に集中させる・・紬にはわからない。昨日のように何故出て来ないのか?今朝の時のように紬は何をすれば・・


〝神経を研ぎ澄ませろ〟


「わかってるよ・・わかってるけど」


 鍵となるものがなければ覚醒はしないのかと黒のライオンは考える。VITAの流れを身体でコントロールが出来れば問題はない。


———カシャカシャ


「佐々木くん、沢山撮ってこれはまさに大スクープよ!」


 梢枝は佐々木に指示をし今までのやり取りを撮影する。


「何だ・・これ、黒のライオンって」

「私達は今世紀最大の発見をした。目の前に黒のライオンがそして、謎の怪物・・」


 レポートのまとめを必死に録音する。


———ギシャギシャ


「へっ?」


———ぎゃああああああああ


「何!?」


 誰かがいる。スカーに囲まれているのは男の人と女の人


「化け物ーー!!来ないでよー!!佐々木」

「俺?無理っすよ!森澤さんが責任取って下さいよー!」

「嫌だよ!スクープは撮れても責任は取らないわよ!」

「上手い!・・って言ってる場合か!」


 怯えながら二人がやり取りしていた。まただ、紬は思う。また、助けられなかったら・・

足が止まる。


「面倒臭いよな。せっかくさ、フェノメナキネシスを倒す事出来ると思ったけど少し遊ぼうかな」

 

〝紬よ、結果がどうあれ目の前で起きてる事をどうするのか?答えはそこからついていくのだぞ?〟


 黒のライオンの言葉に紬は助けられなかったらとかではなく助けたいのだと


「あなたの好きにさせない!」


———つつじが丘駅前


 「雲行きが怪しいな」


 先程とは違い空が暗くなっていく。どこかでゴロゴロと雷が鳴っている。


「おい、郁夢!何故こいつも連れてきた」


 泰元が周平の方を見て指を指す。彼はビクビクしていたが郁夢は微笑み


「彼がいないとヤバいかもね・・お前もわかってるだろ?まだ、半分も揃ってない」


 周平は不安そうに二人を見ている。泰元は益々不機嫌になっていく。


「まさか、アイツらも仲間にするんじゃないんだろうな?」

「気持ちは分かるけど、彼らは必要だよ。紬ちゃんの覚醒と共に敵はどんどん出現していく」

「俺は反対だ!冗談じゃない!あの紬だってまだ、自分の能力に気づいてない!」

「泰元・・」

「いい加減にしなよ!!」


 彼らの間に入ったのは周平だ。


「今、内輪揉めしてる場合じゃないだろ?紬ちゃんが危ない」


 そう言うと周平は何か考えている。


「あの丘から右だ・・血の匂いがする」

 

 そう言うと走り出す周平


「あ、おい!バカ止まれ!ちっ!郁夢後できちんと話すからな」

「はいはい・・それにしても」


 周平の言葉にこれほどまでかと感心する郁夢


「彼を連れてきて正解かもね。ヒーリング・サイコセラピー」


 郁夢が地面に触れる。脳内に入る残像が・・


「紬ちゃんを死なせはしないよ」



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