青い鳥と新たな一歩【最終話】

「そういえばさ、二か月くらい前にナナが青い鳥の話してくれたんだっけ」


 12月24日午前、俺達は国鉄電車に乗り、タカセ区にある自宅へと帰宅してた。


「いまだにゼックスのこと……ツブヤイターって言っちゃうとき、あるよね」


「あ、そっちの青い鳥じゃなくて」


「……幸せはすぐそこにあった、ってやつでしょ」


「ああ、そうだな……」


 俺はナナを見つめつつ、つくづくその言葉を噛みしめる。


 『青い鳥』が物語全体で示してくれたメッセージ、今の俺は痛いほどに共感できる。


 存在しないと思っていた愛も名誉も、すぐそこに転がっていたのだ。

 

『次は、タカセ区~タカセ区~』


 アナウンスが車内に響き渡る。


「さてと、降りよっか」


「ああ、そうだな」


 やがて電車は止まり、俺達は数日ぶりにタカセ区の土を踏んだ。






 そして、年が明け、三学期になった。 


「四木村ケイスケさん、喜多村ナナさん、あなた達はハイスクールIT大賞にて、頭書とうしょの成績を収められたので、ここにしょうします」


「「ありがとうございます」」


 始業式が行われ、俺たちは校長先生によって表彰された。




「さてと……これでオッケー」


 放課後、俺はナナが図書室でとある書類を書き上げるのを見守っていた。


「IT部……イカした部活、考えるじゃん」


 近くにいた淡海先輩が、俺達が新しく設立しようとしている部活に言及する。


 俺達は、部活設立申請書を書いていた。


「まあ、実態は希望部から死の要素をのけて、代わりにITを詰め込んだような部活だけどな」


 希望部が廃部になった日以降、淡海先輩や俺たちは希望部だった人々とRINEを使ってつながり続けようとした。


 それは、急激なストレスによって部員の久しい体調の悪化を防ぐためであった。


 しかし、現段階では力及ばず、元部員の大半が廃部によって現実の学校にて居場所を失ったことで、体調を崩したり精神を病んでいる。


 だからこそ、生きづらさを抱えた彼らに対し、希望部の代わりとなる居場所を用意したかったのだ。


「要するに、IT部というのは建前で、その本質は生きづらい人々の居場所ってことだね。」


「まあ、淡海先輩の言う通りだな。顧問の先生に関しても、運動部が使っている『外部の人間でも顧問になれる』というルールを活用してどうにかできたし」


「IT部の顧問は……この学校のカウンセラーの先生で決まったよ」


「マジか。まあ、どうにかなりそうでよかったよ。キミたちなら、死ぬことよりも生きることに希望を見出してくれそうだし、一安心かな」


 そう言って、泡海先輩は自習室へと去っていった。




「んじゃあ……この書類をいっしょに職員室まで提出しに行こっか、部長さん」


 しばらくして、俺の手がナナによって握られる。


「ああ、そうだな。副部長」


 俺はナナと共に立ち、歩き始める。






 俺達の歩みは、これからも続いていく。

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ボクっ娘で引っ込み思案な幼馴染が急に積極的に近づいてきてドキドキが止まらない 四百四十五郎 @Maburu445

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