『靴』後日譚…『洋服』

夢美瑠瑠

第1話 その後の竹久夢美

(これは、今日の「洋服記念日」にアメブロに投稿したものです)


※ この話は「靴」という既作品のスピンオフ、後日譚です。


https://kakuyomu.jp/works/16817330663022084471/episodes/16817330663022149878


 新製品の致命的な欠陥で、商品ブランドのイメージが損なわれ、大損失を抱えたまま、『GUTTU』は倒産した。


 竹久夢美は、債鬼に追われる身となり、食い詰めてキャバクラ嬢になった。

 理子ともだんだん疎遠になり、自然絶縁状態になった。


 四畳半のアパートでやけ酒を飲みすぎたのが祟り、肝炎を患い、振顫妄想や蟻走感に襲われるようになり、アル中病棟に入院させられる羽目になってしまった。


 昔に「人間失格」という小説を読んだことがあったのを、夢美はぼんやり思い出していた。

 ちょうどそのラストは、主人公の葉蔵という人が、精神病院に入院させられるところだったっけ…

 自分が将来、精神病者のように、…或いはほら、「欲望という電車」のブランチ・デュボア?あんな風に病院に連れて行かれるなんて思いもよらなかった…


 ブランド買いに狂奔したかつてのバブル紳士やらが零落した時のような悲哀を、詐欺っぽいブランドで大もうけした夢美も、「宴のあと」しみじみと味わうのだった。


  … …


 が、元来に読書家で、様々な偉人のバイオウラフィー、往来や動静にも通暁している夢美は、「ピンチがチャンス」というのか、たとえ一度破滅しても、不屈の魂で、逆境から立ち直り、再び這い上がった、そういう人物の逸話をたくさん知識として持っていた。

 最初から順風満帆で、何の挫折も苦悩も味わったことがないという人物もまれだった。そのはずである。

 エジソンっが「99%perspiration, 1%inspiration 」と言ったのは有名だ。語呂合わせになっているが、「99%の汗、1%のヒラメキ」と訳される。

 ディズニーも貧乏な生活のおかげで、ミッキーマウスというネズミのキャラクターを産んだ。「人生に必要なのは夢と勇気とチョッピリのお金」そう言ったのにも、やはり若いころの貧乏体験は影を落している気がする…


 牢屋に入ると賢くなるとか言うが、夢美も病室で様々に思索して、大量に読書をして、一回り自分が人間的に成長したような自覚が持てるようになった。


 そうして、一つのアイディアが浮かんだ。


 この前は偽ブランドで失敗した。では今度は「無印良品」を売り物にすればどうか?

 徹底したローコスト、余計なものをすべて削ぎ落として、徹底して通常の商業ベースから逸脱して、素晴らしく高品質の服飾品を、極めて廉価で提供する!


 ユニクロというのがあるが、ああした方法論をさらにインテリジェントに、自覚的に追求するわけである。


 これが新時代の企業の在り方という、ロハスな時代の企業モデルを構築することを、企業理念として、そうした新しさの宣伝効果を狙うわけである!


 「素晴らしい!なんて先進的で斬新な発想かしら!」


 夢美は自分ながら自分が天才ではないかと思うのだった…。


<続く>


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