ショートショート・『靴』

夢美瑠瑠

第1話 ブランド「GUTTU」の女社長

(これは、今日の「靴の日」にアメブロに投稿したものです)



 私はファッションデザイナーで、”グッツ”というブランドを立ち上げているやり手の女社長でもある。社名は”GUTTU”と綴っている。例の、人間の錯覚を利用した海賊商法?である。


 自分でも、オリジナルなブランドで一流になれるほどの実力にも才能にも自信がなくて、いまのところそういう詐欺まがいのウソブランドの不思議というか意外な流通性にすがって、口を糊している。


 消費者というのが、どういう心理でそういう胡散臭い代物を買いたくなるのかは自分でも不可解だが、だいたいがブランドというものをよく理解していなくて、例えば「鞄というものにはそういう模様をつけることになっているのだろう」とか、ブランドのロゴというものの意味を誤解している…そういう常識に疎いような人が案外多いのかもしれない。


 かくいう私もいろんな海外の有名ブランドがあって、デザイナーの名前だったりして、そういうものの本物には値打ちがある…そういうことを理解したのもだいぶ成長してからだった。


 ”バブル”という時代があって、金持ちの人が増えて、そういうブランド物を買うのが流行りになったころから、ルイヴィトンとかシャネルとかイヴサンローランとか、そういうたぐいの固有名詞?を知るようになった…が、未だになぜか「高いから値打ちがあることになっている?」というようなファッションブランドというもののからくりには疑義があり、要するに合理的な意味はないと思っている。で、せめてもそういうブランドというものの欺瞞を暴き方々、ささやかな商売に生かさせてもらっているのだ。

 そういう自己弁護をしているのだ。


 文句あっか。


 ブランドがグッツ、だから、洒落のつもりで靴とかミュール、サンダルの類の販売には力を入れている。

 最初は間違えた感じで買ってしまっても、結果的にクオリティが高ければ、「グッチならぬグッツの靴はおしゃれで気が利いていて丈夫で長持ちして非常にいい」と評判になり、ブランド名に内実が伴うようになれば今度は「グッツの靴」というように宣伝戦略にも応用できる…そういう狙いも潜在的にあったのだ。

 

 <続く> 


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