第3話  資本主義の脱構築

 


 「ブランド」というものを夢美は「消費社会の錯誤、迷妄」のようなもの、とずっと捉えていたのだ、そうした現代社会の仇花のようなものは早晩消え去るべきで、パロディ化していたのは?結局「ファッション」というものをより洗練したものにしたいという、潜在的には自分がそういう願望を抱えていたことにだんだん自覚的になってきた…だから無印良品、が本当はやりたい仕事だった…ご都合主義なのかもしれないがだんだんにそう思えてきた。


 ジャンジャックルソーやサルトルのようなかなり極端な左翼…彼女にはそう思えるのだが、…主義の人は、だんだんに世間から疎んじられて孤立していったような、非常に偉大だというのは認めても、「仲間」と見做しにくい異質な人物、そう誤解されて世の中の市井人たちからはそれゆえに排斥されていった?という印象がある。


 しかし付和雷同を拒む、そういう直言居士やら孤立を恐れないガリレオガリレイがいないと世の中は進歩せず、地球が宇宙の中心だという迷信が未だにまかり通っているかもしれない。


 夢美のおこした、無印良品の新会社は、すべての広告宣伝を排除して、公害や環境汚染に繋がる要素も徹底して駆逐した。

 「クリーンでミニマムな消費」というのがコンセプトで、技術革新の成果、精華はすべて応用しつつも、マスコミ的な大衆迎合は最も忌避すべきもの、そういう方針で、質実剛健な「アノニマスな」企業体というイメージを推し進め、結局それは誰のためにも都合のいい賢明なやり方であることが受け入れられていって、夢美の「社名のない会社」は大成功を収めたのだった。


… …


 夢美の方法論は、新しい社会の新しい消費者のニーズに合って、どんどん従来の会社組織をliterallyに「自然淘汰」していって、無駄なものや、SDGs等の今日的なコンセプトに背馳する旧弊な企業エゴから脱却出来ない”資本主義に巣食う癌細胞”は切除され、抹消されていった。オーウェルの「1984」にある造語でいうなら、「vaporize」されていったのだ…


 夢美のグランドデザインした、会社組織が大成功を収めていったのに伴って、だんだんに社会そのものが「第三の波」、情報革命社会の本義である「インテリジェントさ」に覚醒していき、やがて「ほんとうにすべての人が平等に幸福に自己実現できる社会」が、現実のものとなっていった。

 

 それはプラトンやソクラテスが、トマスモアが、ルソーが、マルクスが、サルトルが、大江健三郎が、…生涯に夢見ていた「理想社会」であったろう…


 <了>

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