第60話 宮島との連絡

 テロリストの船を爆破して、大騒ぎになる。警察も駆けつけて捜査するも何が起こったのか全く分からない。


 病院送りにされたテロリストたちは、警察に尋問された。


 彼らの組織は地球的規模の団体であり、現体制を全てひっくり返すのが目的だという。その組織の実態はあまり明らかになっておらず、全体像を知る者もいないという。


 その組織の名前は「テロリズム・ハラスメント」と言われている。


 今回瀬戸内海へ、テロを行おうとしていたのはその下部組織。名を「シー・ハラスメント」という。


 それはともかく、やることをやったニャン吉たちは陸に上がった。


『よう手伝ってくれたニャン吉、枯葉』

『じゃあ、約束を守ってもらうで』

 ニャン吉は今回の作戦に加わるのを条件に、鹿三位のいる厳島へ使いを頼むというものであった。


 早速ニャン吉は伊賀へ伝言を頼んだ。只今、山口県の下ノ関市にいると。


 伊賀はニャン吉の匂いがついた頭の毛を数本むしり取ると、厳島まで飛び立った。

『……なんで俺の毛をむしったんや』

『そりゃ、本当にニャン吉君の伝言かを証明するためじゃろう』


 ニャン吉がため息を吐いて砂浜に目を遣ると、キメラのゆとりが地面になにやら円を描いていた。

『どしたんや、ゆとり。円周率の計算か?』

『違うよ、ただの錬成陣だよ』


 それから30分後。鷹の伊賀は厳島に着いていた。厳島神社の鳥居から下を見下ろすと、そこかしこに相の悪い鹿がウロウロしていた。


 伊賀はニャン吉に聞いた隠れ家まで遥か上空にいったん飛翔してから、一気に降下した。例の隠れ家の庭に備え掘られているボットン便所に危うく頭から飛び込みそうになった。


 1階の窓を鉤爪でコンコンと叩くと、ガラッと窓が開いた。中から象牙のようなまっすぐで枝分かれしていない角が出てきた。その角の持ち主の鹿が顔を出して、見慣れない鷹に怪訝な目を向ける。


『あんたが鹿三位か?』

『……お前誰じゃ』


『僕の名前は伊賀じゃ。ニャン吉から伝言を頼まれとっての』

『伝言?』


 伊賀はニャン吉の頭からむしった毛を鹿三位に見せた。それは確かにニャン吉の匂いがした。頭の毛をむしられたニャン吉を想像すると、鹿三位は思わずニヤける。


『……分かった』

『それじゃ、僕は下ノ関へ戻らせてもらいますけえ』


『待ってくれ!』

『待てと言われて待つやつはいない!』

 そうは言ったものの、笑顔でブロック塀の上に立って待つ伊賀である。


『ニャン吉に伝言を頼む』

『なんじゃあ、言うてみい』


『鹿鬼組と極楽動物同盟がって言っといてくれ。それと、明日までに錦帯橋で会おうって』

『薩長同盟とか! 大政奉還とか! 明治維新とか! 酔っぱらいには覚えられんわ!』

 それだけ言うと、伊賀は飛んでいった。


『今のヤツ、何じゃったんじゃ……』

 上目遣いで伊賀の後ろ姿を見上げる味噌汁。

『しっかりと伝えてくれるじゃろう。さて、私らも動くとしようかの』

 そして鹿三位は動き出す。


『次回「錦帯橋」』

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畜生道まっしぐら! 化け猫ニャン吉 @18315

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