第20話 深夜観光はノープラン

〜颯太視点〜


 正直意味がわからなかった。

 考えることが多過ぎて頭がぱんくしそうである。なんでなるっちは三日月さんのお母さんを知っているのか、そして何故立場が習ったのほうが上なのか。本当に謎でしかなった。


 ふと、自分1人の世界に入り込んでいることな気付き、隣に気配を感じたので見てみると、うーん?と唸っている人がいた。そう、桜田さんである。


「桜田さん、どうかしたの?」


「いや、いろいろあってね…」


 まさか桜田さんの方でも何かあったのか!?


「そういう輝星くんも考え事してたじゃない…」


 しっかり見られてて恥ずかしい気もするが、


「こっちも色々あったのさ…」


 桜田さんはうんうん、と頷き


「あとで情報交換の必要がありそうね?」


 俺は露骨に微笑み、


「そうだな。とりあえずせっかく外に来たんだし、その件は忘れて過ごそうぜ」


「そうしましょ。とにかくいまはかんがえないようしよっと…」


 そう呟き前を歩いている2人のところへ行ってしまった。

 俺も遅れないようにあとに続いた。



〜蒼視点〜


 色々あったがみんなが集まったので、観光へ出ることに。約2名は後ろの方を唸りながら着いてきている。


「じゃあ行こうか」


「うん!」


 まるでこの場に僕と美優さんしかいないようになってしまっている。

 その場を利用して少し話すことに。


「そっちはどうなったの?」


「どうって?」


 三日月さんが普通に話してくれることに安堵しつつ、


「いや、ここまで来る道中だよ」


「あー!」


 あー!ってそのこと以外ないでしょ!?

 なんて内心でツッコミつつ、


「彩葉ちゃんに色々バレたね」


「やっぱりそうだよね」


 まぁ、バレてない訳ないよね。


「鳴釜くんの方も?」


「うん、颯太にバレたね」


「そっか…」


 そんなことを言っていると、2人がこちらに近寄ってきたので、


「まあまたこのことはまた話そ!」


「だね」


 と言うわけで、何事もなかったかのように深夜観光が始まる。


「それでどこ行くのさ?」


 後ろから近づいてきた颯太と桜田さんに問い掛ける。


「え? 行き当たりばったり」


 まさかのノープランだった。


「あ、そう…」


 これには僕も言葉を失う他なかった。

 

「じゃあ、おみあげでも買いにいくかー」


「そうだな」


「うん、わかったー」


「レッツゴー!」


 全員の賛同により、適当なおみあげ屋さんを探すことに。


 それから数十分、やっぱりと言ってはなんだが、夜が遅いので空いている店が全くなかった。結局、仲良く夜の街を歩き回ることに。深夜という一味違う時間を過ごすことが出来た。

 さらに数十分後、


「あ、ここ空いてるよ!」


 僕たちの見つけたお店は、24時間営業のお店だった。コンビニでもあるまいし、凄いと思う。


「やっとだね…」


 美優さんもポツリと呟く。


「さぁ、行くぞー!」


 颯太は先行してお店の中に。


「いらっしゃいませ〜」


 と言う店員の声が聞こえる。


「美優ちゃんと鳴釜くんも早く行こー!」


「「うん」」


 そう言って、僕達はお店に入る。


「いらっしゃいませ〜」


 しっかりと店員さんは挨拶していた。

 こんな夜遅くなのにしっかりしていると思う。眠くないのだろうか?


「私これ買おっかな?」


 そう言って桜田さんが手に取ったのは、この温泉地の名産物のお煎餅だ。


「いいじゃん! 俺はこれにしよー」


 そう言って颯太が手に取ったのは、どこのお店でも売っている、とあるチューイングガムだった。確か、ハアチュウだったかな?


「いや、それどこでも買えるやん!」


 僕は思わず口から出てしまう。

 折角だから桜田さんが買ったような名産物を買うべきだろう。

 そう言うと、


「何言ってるんだよ、これもしっかり限定だぞ?」


 そう言ってパッケージを見せてくる。


「どれどれ?」


 3人揃って顔を寄せる。そこにはしっかりと関西限定!と書かれていたのだが、


「いや、僕たちが住んでるのも関西じゃん!? 実際近くのお店でそれ見たことあるし!」


「え、うそぉ? どこのお店?」


 颯太は僕を深く疑っているようだ。


「どこって言われると…、忘れたな。まぁ、また一緒に行こうぜ」


「そうだな。せっかくだからこの班のメンバーで行くか?」


 颯太は軽々しく提案する。

 僕が女子を誘うのなんて、1日かかってもできないだろう。本当に颯太のコミュ力を尊敬する。

 正直このハアチュウのたまにみんなが集まるとは思えなかったが、


「おー、いいね! 行こ行こ! 美優ちゃんはどうする?」


 意外に桜田さんは乗り気だった。


「うん!もちろん行くよ!」


「「やったー!」」


 桜田さんバンザイして喜ぶ隣で僕も声を出してしまう。


「「え?」」


 三日月さんと桜田さんはこちらを見る。

 颯太はと言うと笑いを堪えている様子である。

 僕は脳をフル回転させ、必死に言い訳を考える。


「いやー、この班が楽し過ぎて僕もこのメンバーなら気軽に喋れるようになったしね? 嬉しかったんだよね?」


 まぁ、嘘はついていない。

 おそらくこのメンバーにならコミュ障が出ることは無いだろう。

 

「それは良かったぜ」


 そう言って肩を組んできたのは颯太である。

 桜田さんと三日月さんはこれ以上の追求はせず、微笑んでいるだけだった。


 それから適当にお土産を買った後、僕らは先生たちにバレることなく、自分の部屋に帰宅したのであった。

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旅館でぶつかった美少女を好きになってしまいました ともとも @tomotomo1021

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