第19話 三日月旅館からの脱出 〜女子視点〜
私たちが部屋を出ようとしている頃まで、時は遡る。
「よし、先生は居ないみたい。じゃあ行こっか!」
先に廊下に出た彩葉ちゃんが元気に言う。
「うん」
と、言うことで私も廊下に出る。
私たちはゆっくり階段に向かってとある部屋の前を通りかかると、
「ねえねえ、輝星くん好きってほんと??」
「う、うん…」
「「きゃー!」」
「そう言うみんなは好きな人いないの?」
「私は…」
みたいな話し声が聞こえた。
どうやら、輝星くんを好きな女子がいるようだ。
こう言うのが青春ってものなのかな…?
「楽しそうだね」
前をゆっくり歩いている彩葉ちゃんが言う。
「だね」
「私達もいつか好きな人が出来たらこんな話しようね。あ、もしかして、美優ちゃん好きな人いた?」
「居ないよ!?」
急に好きな人ーとかの話題を振らないで欲しい。
まだ恋すると言う感情に出会っていないのだから。
「そかそかー。私もいないから、一緒だね」
そんなことで一緒って言われても嬉しくないからね!?
「だね〜。でも、彩葉ちゃん、モテそうなのにー」
「全然よ? 1年の時は3回しか告白されなかったし…」
いや、それ、十分凄くない!? てか、もしかして彩葉ちゃんってリア充なのか!?
「そ、そうなんだ…。ちなみに、誰かOKしたの??」
私は恐る恐る尋ねる。
「いいや、全員振っちゃった。だって、私の直感がやめとけー!って言ってたから!」
まさかの直感頼り!?
「そうなんだ…」
そんなことを話していると、いつの間にか階段に辿り着いた。おそらく誰にも見つかっていないと思う。
そこで、
ピロリン!
と、わたしのスマホのLINEの通知が鳴り響く。
うっかり私はマナーモードにするのを忘れていたようだ。
「やばいやばい!」
彩葉ちゃんは焦っているが、私は鳴釜くんいや、蒼君からのメッセージに目を通す。
そー(蒼)「美優さんのお母さんに会って、1階のスタッフルームから外に出してくれるって。あと、玄関には先生が見張りしてるらしいから気を付けて!」
そのメッセージに思わず、
Miyu「普通に音鳴ったんだけど!? バレそうなんだけど!? それって私のせいだったわ! って、あ、お母さんに会ったの。そうよね、あの時居たから知ってるよね。分かった!玄関にも気をつけるね! ありがとう!」
前半は怒りをぶつけちゃったけど、後半はしっかりした文章を書けた気がするからいいか!
「彩葉ちゃん、私が言うのもあれだけど、落ち着いて。1回のスタッフルームに行けば外に出られるって蒼くん達から連絡があったよ」
彩葉ちゃんの焦りは一瞬にして消え、
「そ、蒼くん?? いや、今はそんなこと言っている場合じゃないか。1階のスタッフルームね?私はそのスタッフルームの場所分からないけど、美優ちゃんはどこにあるか分かるの?」
最初の疑問は私には全く意味がわからなかった。ので、一旦無視することに。
「うん。分かるよ」
「そか、じゃあ急いで行こ!」
と言うわけで私達は急ぎかつ音を立てないように階段を降りて行ったのだった。
※
そして、私達はスタッフルームの前まで来た
が、ドアに鍵が掛かっていた。
「え、鳴釜くん、私達をはめた?」
彩葉ちゃんは仲間を疑い始めていた。何も知らなかったらそうなるかもしれないけど、お母さんが居たのならきっと、
「うんん、大丈夫だよ」
そうして、私はドアを軽く叩く。すると、
ガチャリ
と、音を立ててドアが開く。
「入って」
そう言ってお母さんがドアを開けて中に入れてくれる。
「ごめん、お母さんありがとう」
「お母さん!?」
彩葉ちゃんは声をあげる。
「「しー」」
お母さんと私は揃って口の前に人差し指を立てて言う。
「ごめんなさい」
彩葉ちゃんは口を押さえて、モゴモゴ声で言う。
「鳴釜くんたちが外で待ってるわ。早く行ってあげなさい」
私は絶対質問されると思っていたが、どうやらすぐに行かしてくれるようだ。
「うん、分かった。お母さん、いろいろありがとう」
「いいのよ。あなたも行ってらっしゃい。あまり遅くならないようにね。2人とも、帰る時はこのドアに来るのよ?」
「はい」「え、はい…?」
彩葉ちゃんは腑抜けた返事をする。
何が何だか理解できていないようだ。
私はそんな彩葉ちゃんの手を引っ張ってドアを開けて外に出た。
「ごめんお待たせ」
私は座って待っていた2人に言う。
「よし、じゃあ行こうか」
鳴釜くん、遅れて輝星くんが立ち上がり、動き出した。輝星くんも彩葉ちゃんと同じような感じになっていて、少し笑ってしまったのはここだけの話だ。
これから私たちの深夜観光の始まりである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます